56.chapter ◆
「だ、大丈夫ですよこれくらい」
「だめ」
保健師は私の手をやや強引に引いて保健室まで歩いていく。
あの、皆様、私はささやかな質問をしたいのですが、よろしいでしょうか。ダメとか冷たいことは言わないで下さい。泣いちゃいます。
えー。あのですね。本当にくだらない質問なんですが、皆様の学校――小学校でも中学校でも高校でもいいんですが、保健師の方ってこんなに強引なものでした? もっと適当じゃありませんでした? っていうか私ならこんなのは放っておくんですが、皆様だったらいかがでしょう。自分で平気って言ってるし、連れてかなくてもいいじゃん? とか、思いません? なんでこんなにも積極的なんでしょうかね。乙女ゲームは奥が深いです。
保健室に入ると保健師は私の傷を水ですすいだ後、椅子へ座るように促す。それに従うと、保健師は綿をピンセットに挟んで消毒液と共に持ってきた。
これ沁みるので、ほんと嫌です。イベントとはいえわざわざ自分から転ぶのって躊躇いがありますよやっぱり。
「沁みる、よ」
知ってます。焦らす必要ないので早く終わらせ――ッッたぁあああああああ!!
「っ……」
いやコレ顔顰める程度で済むような酷さじゃないからね! ほんとに沁みる!
「大丈、夫?」
この顔見て大丈夫だと思うならそのまま眼科に行ってください!
とは言えないのでイベント通りに……っ
「大丈夫、ですっ」
もう帰りたいー!




