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この乙女ゲームは死亡フラグが多過ぎます。  作者: 天音 神珀
episode.1    この乙女ゲームは死亡フラグが多過ぎます。
56/167

55.chapter ◆

「え……」

「怪我、した?」


 ちなみにここは正門前。こう、ドジっ娘なのでころんじゃった☆みたいな展開な訳ですが。


 個人的にはね。


 とても嫌な予感が、するわけですよ。


 考えてもみてください。っていうか思い出してみてください。


 昨日、アイドル――えーと唯蝶と会いましたよね。その時に、もう物凄い勢いでバグったの、皆さんも記憶に新しいですよね? え、覚えてない? 全力で思い出してください。


 つまるところ何が言いたいかというと。


 昨日会ってるし、バグが起きるんじゃ?っていうことです。


 唯蝶の時ほどおかしな言動はしていないし、大丈夫じゃないかとは思うんですが。


 とはいえ悪戯(イタズラ)に時間を費やしても何にもなりません。仕方ない、イベントを進めよう。


「あ、ありがとうございます……怪我はしてないです」

「………膝」

「え?」


 こんなに膝が痛むのに怪我してない訳がないのだけれども。でもここはいい女の子っぽく「してないわ♡」とアピールする、と。あざといヒロインだ、ほんとに。しかも膝とか、ものっそい目につくところだし、保健師が気付かない訳がない、とね。計算され尽くした言動だ。私でも感嘆する。単純に拍手を送りたい。


 これが自分の行動じゃなければな!


「………膝、怪我してる」

「あ、これくらいは大丈夫ですよ。水で洗います」


 保健師の手を取って立ち、私は微笑む。それから、ありがとうございました、と頭を下げて手を放そうとした途端、きゅっとさらに強く手を握られた。


「待って。ちゃんと消毒、しないと、菌が入る、よ?」

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