4.chapter
とてとてとて。
やる気なさの半端ない、覇気のない顔をしながら廊下を適当に歩いている時――というか隠れられそうな場所を探していた時、それは起こった。
「あれ。君、ここの学生だよね?」
「‼」
背後からチャラそうな、チャラそうな(大事なので2回言いました)声が掛けられました。
でねー、私ねー。この声にすっっっごい聞き覚えがあるんですよねー。
さてどうしよう。これはいわゆる、
「……………死亡フラグ」
「え? あの、もし良ければ校内案内してもらえないかな、と……っていうかそれ以前に、できればこっちを向いてくれると嬉しいかなぁ、なんて俺は思うんだけど」
駄目かな? という声は色艶があり、普通の女子なら目を輝かせて頬を赤らめて可愛らしく頷くだろうと容易にわかる。しかし私には、それが死亡フラグの死刑宣告めいて聞こえた。
「………あのー………………聞こえてる、よね?」
「私は耳が悪く大変申し訳ないのですが何も聞こえません。プラス、名前も名乗ろうとしない不審人物に校内案内をする義理はないかと」
「あ、良かった、聞こえてた。あ、名前? 名前が知りたいの?」
今の私の発言が名前を聞く口実だったと解釈できちゃう人、手上げて。
どう考えても嫌がってるとわからないのでしょうか‼
(顔見せないでよ。顔覚えられてバグが起きたらたまんない)
さて、もうおわかりでしょうか、皆様。
こいつ、攻略キャラクターなんです‼
説明しよう‼
こいつはこの学園出身のアイドル様。今大人気の歌手で、えー………………詳しくは、WEBで。
(どうせ名前も覚えてないんでしょ? まったく、バカ言ってないでよ。どうすんのこれ。だから馬鹿は嫌なんだよ。後先考えずに行動するしさ)
返す言葉もございません…………
さて? この場をどうやって切り抜けましょうか…………………
私は後ろを振り返らずに状況の打開法を練った。