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44.chapter
「……?」
寮に入ろうとしたところで背後から声をかけられ、私は不用心にもそのまま振り返ってしまった。
(……!)
そうして、一人の男性を認める。
それはこの学園の保健師。言わずもがな、攻略対象である。
「なっ……」
いや待て落ちつけ私。ここで動揺して何になる。相手に私を印象付けてしまうだけじゃないか。
声をかけたことに深い意味などないかもしれない。ただ服にゴミがついてるとか、そんな軽い気持ちからかもしれない。
だから慎重に、普通に、ありふれた少女を装え。
「何で、しょうか?」
「君、何か、ついてる」
何だろ。多分服か髪にだよね? 糸くずとかその辺りかな?
「すみません、どこについてるか教えて頂けますか?」
すると保健師は首を傾げた。
「とる………つもり?」
「え? あ、はい………?」
思わず疑問形になったけど、仕方ないよね? こんな質問、予想外だもの。ゴミ付いてれば取るでしょう、普通。
「あのー?」
「後悔、しない?」
「……………は?」
私はつい、間抜けな声を出してしまった。




