36.chapter ◆
「まいしの……いちょうさん、ですか?」
「そう。テレビとかで見たことくらいはあるでしょ? それなりに名前とかは通ってるつもりなんだけど」
ありません。
設定でも知らないことになっているが、私自身彼をイベント以外で見る気がさらさらないのでテレビなど見ない。そんな暇があれば寝る。毎日が戦いですから。ヒロインは疲れてるんです。
だから確かにあなたの存在は知っていますけど、興味はない。っていうか個人的にはあなたのバッドエンドは一番迎えたくない。えげつないんだもの。
「知らないです、すみません」
「え、知らない?」
唯蝶は心底驚いたらしく目を見開いた。
まぁあなたは超人気アイドルの設定ですからね。知らない方が珍しいんでしょう。
良かったね、美味しい役もらえて。
と心の中で皮肉っていると、唯蝶は艶やかに微笑んだ。
……この後の展開何だっけ。イベントは何度もやっているけどいつも忘れるから困るな。私もしかしてボケてる?
「君、俺が人気なの判ってもあんまり態度変えないんだね?」
「全く興味がな――テレビで見たことがないから、あんまりその、有名人って言われてもピンとこなくて。すみません」
シナリオどおりに私が頭を下げると、唯蝶は首を振った。
「ううん。謝ることなんかないよ。俺的にはどちらかって言うと……そっちの方が嬉しいから」
唯蝶は本当に穏やかな笑みを浮かべていた。もう、女子なら誰でも恋に落とされてきゃっ♪てなりそうな感じの笑顔。
……。あ、思い出したこの後の展開。
……………、修羅場だった気がする。




