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18.chapter ◆
来ました。
ついに来ました、死刑の時間。
……じゃなくてイベント。
私のイベント時間になったため、皆機械のように与えられたセリフを言わなければならない。そのためか、モブキャラたちも面倒そうな雰囲気になっていた。安心してみんな! Me tooだよ! 最高に面倒だよ私は!!
なんて考えて先ほどから溜め息が出そうで出せない私に、侑香も与えられたセリフを喋り始める。さも新しい情報のようにして。
「でね、あの女優、そこでこけちゃってー」
と、そこで。
「月華院 泉という子はいますか?」
心地の良いテノールが耳朶を打った。耳慣れた声だ。
それに合わせてクラス全体が声のする方――扉に注目する。それもシナリオどおり。
「……私、ですが?」
決められたセリフをそのまま言い、私はおずおずと扉の方に視線を向けた。
そうして認める。
私とよく似た黒髪。よく似た顔立ち。そして異常なほど整った容姿を誇る――
私の、実兄を。




