15.chapter
「上の空ね、泉」
授業中、ぼーっとしていると隣の席の女子が声を掛けてきた。
綺麗な金髪に碧の双眸。生粋の白人の血を引くその少女は正真正銘――モブキャラである。
確か名前はクリスティナ=アヴァロン。父親は大使館の人間らしく、一目でわかるほどお嬢様。ちょっと高慢なところもあるが――というか、ここまで綺麗にできているのに何故モブキャラ? ライバルキャラじゃないの? というような少女である。ちなみに高慢なところがある割に、とてもいい子だ。
「昼休みが心配なのかしら?」
「心配、ではないなぁ。どちらかっていうと憂鬱」
「まぁ。ヒロインは大変よね、やっぱり……。イベントが終わったら屋上でお茶会でもしましょうか?」
気晴らしくらいにはなりますわよ、とクリス――クリスティナの愛称。クラスメイトは大体彼女の事をクリスと呼ぶ――は上品に微笑んだ。
「私さ、絶対ヒロインはクリスの方が合うと思うんだ」
「あら。それはわたくしに死ねということですの?」
「ヒロイン=deathなんだ。じゃあヒロインの私は死ぬの決定?」
「違うわ。わたくし、殿方に興味がございませんの」
「……………えっ」
私が青ざめると、クリスはずいっと顔を寄せてきた。
「殿方なんて不潔で嫌ですわ。可憐な女性や凛然とした女性の方が好みですの」
「いや待って下さい私はあなたが不潔だと言いきった男性を攻略しなければいけないんですがそこんとこ配慮お願いします」
顔を引き攣らせて私は両手を出し、「No thank you」の姿勢を見せたが、クリスはお構いなしである。
「不潔な殿方と恋愛だなんてごめんでしょう? わたくしなんていかがかしら」
いやいやいやいやいやいやいやいや!!
えっ、ちょっ、どうしよう。
うろたえているとクリスは、私の椅子の背もたれと机に手をついて覆いかぶさるような姿勢をとってきた。あの誰か、あのあの、えっ、ちょっ、女性に襲われる趣味はございませんよ私!!
とか揉めているうちに、私たちは仲良く床に倒れ、教師に怒られました。
……………………理不尽。




