11.chapter
「はー、はー、はー……」
意味もわからずとにかく逃げて飛び込んだのは女子トイレでした。
まぁ定番?ですよね、うん。
「とりあえず……何で逃げさせたのか聞いてもいいですか……」
荒い息を整えながら問うと、彼は物凄く苦い顔をした。
お説教ですか、まさかの。
(とりあえず君さ)
あ、はい。
(危機感持とうか)
危機感?
(後先考えずに行動して攻略対象と接触。顔も確認されて、逃げたと思ったら今度は不審者に絡まれてさ)
うっ。
っていうか一つ聞きたいんですけど、あの人は何ですか?
ただの不審者?
(そんなわけないでしょ。バグに決まってるじゃない。あれが今までのルートで出没したことあった?)
ありませんでした。
(あんなのが普通に出てくるわけないじゃない。っていうかほんとに何なのあの不審者。あれだけは勘弁してよね、見るに耐えない)
彼はぼそぼそと独り言を言った後、私を見て厳しい表情を見せた。
(鐘が鳴るまでここにいて。ここから出たりなんかしたらくびり殺すから)
怖っ。
でもちゃっかり片手にペロペロキャンディを持ってる所は可愛ら、
(死にたいの?)
すみません調子に乗りました。
頭を下げる私を呆れたように見やり、彼はペロペロキャンディを舐めながらふっと掻き消えた。




