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99.chapter ◆
「まさか二股どころか三股でもするつもり?」
「男を弄ぶ典型的な悪女ね」
少女たちがとげとげしい視線と共に見に覚えのない罵声を浴びせてくる。
格好は皆同じ。私と同じ学園の制服。つまり彼女たちは私と同じくあの学校へ通っている子たちなのだろう。
そうして……真ん中に立つ少女には見覚えがある。
「……まさか、祈の……親衛隊の?」
そう。私たちの学園――あ、名前の紹介忘れてた――私立黒司守学園には親衛隊なんていう乙女ゲームならではの恐ろしいものが存在する。つまり、「私たちはあの人のファンなのよ! だからあの人が誰かに酷い事とかされないよう、私たちで全力でお守りしましょう!」って奴です。
本人たちにとっても迷惑な集団じゃないかなと思う。うん。攻略対象ってことは当然男だろうし、大抵の災難は自分で振り払えるでしょ。
まぁそれは置いておくとして――
つまり彼女は――文芸部部長、兼生徒会監査である祈の、親衛隊隊長、だった。




