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    自分自身?

「何よ、アイツって・・・」


 シャリーナが俺に尋ねたが、俺は黙って歩き出した。

雷も疲れたので、近くにあったトロッコを破壊して、炎の魔法で火をつける。

これを戦闘中に使っても良かったのだが、闇魔法に比べると、炎属性は

得意ではないため魔力の消費が数倍に跳ね上がるから、実戦ではあまり使いたくないのだ。

 俺らは外に出ると、とりあえず傷の手当てを始める。


「なぁ・・・誰からここのことを聞いた?」


 俺はシャリーナに自分の限界値に近い、真剣な顔で尋ねた。シャリーナは少し考えて何か

言おうとしたが、俺は一言、ダウトとだけ言う。嘘をつくなら、考える仕草を失くせ。

 すると、諦めたかのようにため息をつく。


「アンタのおじさんよ、内緒にしてくれってことだったけど・・・」


 親父が帰ってきてるのか? 正直初耳だぞ、多分俺の親父と最後に

あったのは、去年の盆くらいだ。


「手紙で届いたのよ、日時と場所まで正確に書かれてたわ」


 シャリーナはその手紙を俺に手渡した。空も真っ暗になっており、

バイクのライトをつけて、その光で手紙を見る。

 家族の俺から見れば、一目瞭然だった。これは、親父の字じゃない、

というか、親父がこんな丸字で書いてたら気持ち悪いわ・・・。


「私もね、女の人の字に見えたんだけど・・・。差出人が、おじさんに

なってたし・・・。悠夜のことも詳しく書いてたから」


 俺は自分の名前が出ている部分に目を通す。


『最初はかなり渋るかもしれないけど、ゲームを切り出してみると

いいかもしれない。そういうの好きだから。何度か挑戦してたら、

シャリーナちゃん可愛いから、すぐ折れると思う』


 親父がこんな丁寧言葉な手紙を書くのも、末恐ろしい気もするが、

俺の行動をここまで言い当てる他人も怖いな・・・。ていうか、なんかむかつく。

 いや、他人とも言い切れないかもしれないな・・・。


「アンタって、親戚とかいるの? もしかしたら、その人が代筆したのかも・・・」


 親戚か・・・。まぁ、いるといったらいるな。正確には陽河家分家ともいうべき

ものなのだが、仲がいい人は少ないし、俺の行動を言い当てるほどの奴なんて

陽河家では光喜だけだ。まぁ、光喜の言動も結構あてにならんが・・・。


「一度帰ろう・・・この話は光喜たちにもしておきたい・・・」


 俺はそういうと、シャリーナを後部座席に乗せてバイクを走らせた。

かなり暗い山道だが、夜目は利くほうだ、さっきみたいな全く光のない

空間というわけでもないので、すいすいと走らせることが出来る。

 そして、その町のワープ施設に着く・・・。


「こりゃ、なんの冗談だ・・・」


 ワープ施設は真っ暗だった。ゴーストタウンなのだが、来たときはワープ施設

だけはしっかりと稼動していたんだがな。


「この辺ってね、夜は電力削減のために、公共施設であろうとも、

稼動しないんだって・・・」


 つまりだ・・・、これは・・・。


「野宿にはならないんじゃない・・・ゴーストタウンなんだから、その辺の

ハイビルにでも入って・・・」


 野宿と大差ないと思うがね・・・。あ〜あ・・・コイツと一緒だとろくなことにならないな。

俺たちは、シャリーナの言うとおりその辺のハイビルに入っていった。来るときに

言っていた添い寝はなかったが、シャリーナの寝顔は見れたよ。黙ってれば、

可愛いところの一つや二つあるのにな・・・。

 シャリーナがスヤスヤと寝息を立てている間、俺は寝付くことが出来なかった。

別に近くに女の子がいるから、というピュアな少年みたいな理由じゃない・・・。

ただ、今から相手する奴の事を考えたら、不安だったというのが本音だ。


「情けねぇな・・・何ビビッてんだよ・・・」


 ともかく、一度話をつけておかないとな・・・。この前の魔女狩りの手前、

勝手な行動は光喜たちが許してくれないだろうし、この問題は光喜も知っておく必要がある。

 俺は1人、窓の外に移る大きな月を眺めた。月はやがて雲に隠れ、町は暗闇に支配される。

大丈夫・・・闇は俺のテリトリーだ・・・希望の光が見えなくても、俺は俺なんだから。


 結局、一睡もしなかった・・・。朝日がやたらとまぶしい。

 簡易式の防寒具に身を包んで寝ていたシャリーナは、朝日によって目覚め。目覚めた瞬間に

俺がいるという状況に寝ぼけ眼で驚きつつ、昨日何があったかをぼんやりと思い出していた。


「さっさと行くぞ・・・」


 俺はそれだけ言うと、廃ビルから出て行く。俺がバイクにまたがったとき、異変に気付いた。

燃料がゼロになってる。

 待て、来るときは十分すぎるほどに燃料はあったはずだ!!

 俺はあわてて燃料タンクを見るが、燃料漏れをしているわけではない。かといって、昨日は

一晩中おきてて、燃料を誰かに抜かれたら気付いたはずだ・・・。


「畜生!! シャリーナ、走るぞ!!」


 俺はシャリーナに怒鳴りつけるに言うと、さっさと走り出した。やばい胸騒ぎがしやがる・・・。

いや、もうバイクという足を潰された地点で、ヤバイに決まってる!!

 俺たちは急いでワープ施設に向かった。ワープ施設が破壊されている可能性などを

頭の隅で考えていたが、ワープ施設は無事だった。俺たちをこの町に閉じ込めるつもりはなさそうだ。

ならば、何が目的だ?

 数秒と立たずに、短絡的ながら一番考えたくない推論に至った。


「あの野郎、ぜってぇーぶっ殺す!!」


 何で俺はこんな簡単なことに昨日気付かなかったんだ。最初に会った女は、

俺と光喜に用があるといった。昨日の男は、暗闇でじわじわと時間をかけて戦っていた、

そして、一発の反撃をうけただけでさっさと逃げた。

 この2つの状況を汲み取れば、狙いは俺じゃなかったことに気付けたはずだ。

クソッ!! あいつら、光喜を狙ってやがったのか!!


「きっと大丈夫よ!! 光喜だってバカじゃない・・・トリプルビートを使えば、

 どんなに強い相手からでも、逃げることはできるし・・・」


 そう、普通ならそうなんだよ。エルルの知力とトリッキーな戦略、光喜の相手をよせつけないスピード、

運がよければ、バカだが攻防ともカバーできる能力を持つタケシに、リスクは高いが最終兵器のメアがいる。

 メアがいればまだ希望があるかもしれない・・・。味方もヤバイが、圧倒的破壊力が有るからな・・・。

だが、もしも、光喜だけ・・・それか、光喜とエルルだけなら状況は最悪だ。


「なんでよ!?」

「光喜の能力じゃ、奴に勝てないんだよ!!」


 俺が走りながら叫ぶと、少し後ろからメアも叫ぶ。


「さっきから、奴、奴って一体誰のことなのよ!!」


 考えたくない、考えたくないさ・・・あいつが俺たちを狙ってるなんてな。


「・・・俺だ」


 一言そういうと、後ろから聞こえる、俺の言動をバカにするようなセリフを無視する。

間違いねぇよ、あの魔力の波長・・・そして、あの世界から消えた力。


 俺たちが家に着いたのは、その日の夕方だった。合計約4時間のフルマラソン、盗品のバイク1時間、

公共交通機関30分、タクシー1時間半。

 それでも、弱音を上げずに着いてきたシャリーナを褒めるべきなのだが、今はそれどころではない。

 俺は家の扉を力強く開け放つ。


「光喜!! いるか!!」


 俺はシンとした家内を見渡す。靴も脱がずにリビングへと向かう。リビングのドアを開けた瞬間、

夕陽でオレンジ色に染まった部屋の中に、4人分の人影を見つけた。1人は窓際に立ち、

後の3人は床にぐったりと横たわっている。


「光喜、エルル、タケシ!!」


 床に倒れている3人を呼ぶ。俺が3人に近づこうとしたとき、3人を取り囲むように魔法陣が出現した。


「どうする? 100%罠だぜ?」


 窓際にいた1人の男が俺に尋ねてくる。その声は俺とほとんどかわらず、身長も体格も、髪も目の色も同じ。

違うところといえば、長髪ではなく光喜と同じで乱した髪型だということぐらい。服装も白いシャツの上から、

オレンジ色のジャケットを羽織っていて、黒い長ズボンを履いている。

 そいつは俺の事を見て、ニヤリとした笑みを浮かべた。


「よう、俺・・・というか、俺の一部か?」

陽河ひかわ リョウ


 奴は自分の名前を呼ばれ、クスッと笑いながら首を傾げる。シャリーナの俺の後ろで、状況がつかめない様子で

部屋の中を見つめている。俺は3人のもとに歩き出すと、3人を治療するためのアイテムを出す。


「その魔方陣、罠だぜ?」

「知るか・・・」


 俺が魔方陣に入ると、魔方陣は輝き始め、シャリーナも急いで俺の元に駆け寄った。

そして、俺たちは光に包まれていった。

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