表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/48

    僻地?

「それで・・・どこまで行くんだ?」


 シャリーナをバイクの後ろに乗せて、エンジンをふかす。

燃料は十分あるし、補給する必要はないだろうな。


「アレスタル山脈の廃坑よ」


 また、マイナーな場所だな・・・。アレスタル山脈といえば、

数百年前までは魔石がよく採掘されていて、都市部にも負けないほどの

規模の町になりつつあったが、ある頃からパッタリ魔石が取れなくなり、

今は町の名前さえ地図に残っていない。


「少し遠いな・・・ワープゲートは繋がってるか?」

「繋がってるわよ、B地区に白くてでっかい施設があるでしょ」


 まぁ、あるっちゃあるな・・・。こじんまりとした老人ホームと間違えそうな

地味で、古い公共施設が・・・。


「そこの8番ゲートからレイタムの町に行って、レイタムのA地区の施設から・・・」

「ちょっと待て、アレスタル山脈に直行できないのかよ?」


 しかも、レイタムって言ったらゴーストタウンじゃねぇか!? ワープ施設は生きてる

かもしれないが、そんな場所のワープ施設を使わなくちゃいけないのか?


「他の施設からだと、ワープゲートが撤去されてるのよ!!」


 そりゃ、誰もあんなへんぴな鉱山に行きたいなんて思わんだろ。


「で、レイタムから、ネラサに飛んで―ー」


 俺はバイクを走らせながら、シャリーナの長い長い道案内を聞いた。どうやら、

ワープ施設を5回以上乗り換えないていけないらしい・・・。どれだけへんぴな場所

なんだよ・・・。今いち実感がわかないかもしれないが・・・そうだな、電車を5回

乗り換えたらようやく着ける駅に行こうとしているわけだ、いや、バスを5回か・・・。

どっちでもいい、それぐらいややこしい場所にある。


「日帰りできるのか?」

「大丈夫よ、無理ならそのへんで野宿すればいいじゃない」


 年頃の女性の発言とは思えませんね〜、というか、できなければ野宿ってことは

手ごろな場所には宿屋がないってことだな・・・。

 まったく、迷惑このうえない話だな。


「何よ文句ばっかし、もし野宿にでもなったらお詫びに添い寝してあげるわよ」

「いらん、迷惑だ」


 さっさとお目当てのアイテムを見つけて帰るしかないな・・・。すると、後ろから

やかましく、聞き覚えのある甲高い音が聞こえてきた。ミラーを見ると、黒と白の

二色の車体に、赤いサイレンをつけた車が追ってくる。


「ポリかよ・・・」

「止まらないつもり?」


 もち、止まってたまるかよ。ノーヘルで二人乗りだぜ? 下手すりゃ補導もんだ、

それに・・・


「それに?」

「無免許運転だ」

「え!? あんた、免許持ってんじゃなかったの!!」


 いつ、誰が、どこで、なんのためにそんなこと言ったんだ?

 俺がマジメに教習所に通ってると思ったら大間違いだぞ。

 俺は赤信号を無視し、一通の道をフルスピードで突っ走る。しかも、このバイクは

タケシが作った特注品だ、普通のバイクとはエンジンの質が段違いで、

通常の倍近くのスピードが出てる。


「今対向車が来たら・・・死ぬな」

「あんたそれマジメに言ってんの!!」


 マジメもマジメ。狭い一通の道を爆走してんだ、対向車が来たら避けることは不可能、

このスピードで急停車は出来ない。

 それに動かない壁とは違い、向こうもこっちに向かってくるんだから相乗効果で、

ものすごいスピードと勢いで突っ込むことになるぞ。

 おっと・・・そんなこと言ってる間に、車来た。


「軽くしろ!!」

「へ!?」


 シャリーナはとっさに俺たちと、バイクを軽くする。俺はハンドルを引き上げ、

バイクの前輪が浮かせると、後輪の少し前にダークを放つ。軽くなったバイクは

宙に浮かび、対向車であった白いスポーツカーの上を飛び越えた。

 車は驚きのあまりに止まり、ポリは対向車のせいで追ってこれない。


「あんたねぇ・・・」


 シャリーナは何か言いかけたが、続きの言葉はため息に変わり、言葉が続くことは

なかった。もういい、疲れた、みたいなオーラを背中に感じつつ、俺はバイクを走らせる。

 そして、3時間後。俺たちは廃坑前まで来ていた。長かった・・・ホントにつまらないこと

この上なし、途中で昼飯を買って行こうかと思っていたのだが、コンビニすらない。

 廃坑の前には、看板だったものの残骸が残っており、文字の判別は不可能となっていた。

足元には昔使われていたと思われる、トロッコの線路が赤いサビを纏いながらも、二本が

平行を保ちながら永遠と伸びている。


「くそ・・・真っ暗じゃねぇか・・・」


 俺はポケットからオレンジ色の石を取り出す。


「『灯石』持ってたんだ」


 シャリーナが俺の手元を覗き込みながら言った。普通はお前が持っておくものだと

思うのだがな、人を誘っておきながら適当な奴だ。そのオレンジ色の石を軽く磨いてやると

直視できなくなるほどの強い光を放ちだした。まぁ、簡易版懐中電灯だ。

 廃坑に来るということで、家から持ってきておいたのだ。


「それで、目当てのアイテムはどんな奴なんだ?」

瑪瑙めのうの宝玉よ」


 なんかそれらしい名前を出されるが、はっきり言って聞いたことがない。というか、こんな

整理のいきわたっていない廃坑にそんなものがあるのか?


「あ、あるわよ!! 高いお金出して買った情報なんだから!!」


 騙されてるんじゃないのか? というか、高い金を出して情報を買うほど、貴重なアイテムなのか?


「それに思いを込めて他人に渡すと、その人とのパーティーポイントが高くなって、

 生涯パーティーを組み続けられるんだって・・・」


 なんだよその、ミサンガと風水を組み合わせたようないかがわしさは・・・。というか、お前は

なんでそんなものが欲しいんだ?


「エルルに渡すために決まってるでしょ!!」


 じゃあ、エルルと取りに来いよ。


「エルルには渡すまで秘密!! あと、私は恥ずかしいから、渡すのはあんたよ!!」


 それって、全然意味なくないか? 本人が渡さなくても、そのいかがわしいおまじないは利くのか?

いくら神秘的な力でも、第三者が手渡したら神様だって混乱するだろ。


「別にいいのよ、そのときはそのときで、私があんたに付きまとうから・・・そうすれば、必然的に

 エルルとはずっとパーティーを組めるでしょ」


 こいつはバカか? もう呆れて次の言葉が出てこないよ、それに、こんなところで時間を浪費して

野宿するのはイヤだしな・・・。俺は、じゃあ最初からエルルに付きまとえばいいだろ、という言葉を

押し殺してさっさと廃坑へと入っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ