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    花見?

 俺が頭を抱えていると、そんなことはお構いなしと言わんばかりにに光喜と

メアは前進していく。いいから、もう迷子にだけはならないでくれよ・・・。

あと変なものを見つけたら、まず俺に報告、お前らだけなら全てのトラップを

喜んで発動させて進みそうだからな。


「これなんだろ?」


 光喜が壁に描かれた文字を見つける、俺がさっき壊したのと同じタイプの奴だな。


「むやみに触るな・・・」


 俺は破壊したがな。特に意味もなさそうだし、操作するだけ無駄だ。俺の忠告に

耳を傾けていたが、うぅ〜うぅ〜と、少し考えてから光喜は剣を突きたてた。

 貴様は何を聞いていたのかな? 別に何が起きるわけじゃないが、むやみやたらに

物に触るな。


「何にも起きないね・・・」

「ほら、さっさと行くぞ」


 壁の前で首を傾げる光喜に言うと、どうみても色の違うタイルを踏もうとしている

メアを引っ張って歩き出す。メアは一瞬寂しそうな声を上げたが、心を鬼にして突き進もう、

でないとこっちの身が持たん。

 とりあえず、最上階を目指しながら歩き続けているのだが、いつまでたっても階段が

見つからない。もうかれこれ、30分は歩いただろうか・・・。それにしても、これは異常だろ。

 外から見た塔の直径は2km程度、30分間歩いて、曲がり角1つない・・・。モンスターも

一匹も出てこないし、気配もしない・・・。物理的にこれはありえない。


「光喜・・・ビー玉貸せ」

「ふぇ? 悠夜、遊びたいの?」


 お前と同じにするな、俺はビー玉程度の遊びで満足できる小さな人間じゃないんだ、

いいからつべこべ言わずに貸せ。

 俺は光喜からビー玉を受け取ると、そのビー玉に魔力を込め、指で前方へと弾く。

すると、ビー玉はまるで弾丸かなにかのようにまっすぐと飛んでいく、数秒後、後方から

コロコロと何かが転がってくる音が聞こえてきた。


「アレ? なんで、前に投げたのに?」


 光喜が不思議そうに、その小さなビー玉を手に取った。やられたな、空間制御の罠だ。


「どうやら、俺たちは同じとこをグルグル回ってたみたいだな・・・」


 いつの間にか、魔力で作られた亜空間に迷い込んでいたようだ・・・。だが、

そんな高等技術を誰が仕掛けたんだ?


「・・・・・・どうするの?」


 メアがあまり困っていないように俺に尋ねてくる。頼りにされていると思ってもいいのだろうか。

俺は壁に手を当てて、魔力の流れを探ってみる。

 あまり広範囲にわたっているわけではないようだ、この程度なら、俺の魔力ですぐに

脱出できそうだな・・・。

 俺は一呼吸をおき、魔力を高めてる。それを拳に込め、壁を殴りつけた。壁が崩れた瞬間、

青白い光が周囲を照らし、嫌な感じの魔力が一気に晴れた。


「このまま、壁の穴を抜けていくぞ・・・」


 俺がそういって、壁の穴をくぐろうとしたとき、花びらが数枚舞い込んできた。薄桃色の

ハート型の花びらは、この世界では見られないものだ。


「桜?」


 俺が足元にひらりひらりと落ちた花びらから、前方に目線を戻したとき、まるで濁流のように

流れ込んでくる桜の花びらが見えた。

 瞬時に身の危険を感じた俺は、ダークバスターでその花びらの流れを散らす。地上から

数十メートルの高さにある、その階の廊下には鮮やかな花びらが散乱した。

俺の後ろにいた光喜とメアは、何が起こったか分からずにあたふたしている。

 俺は完全に壁の穴をくぐり、残りの2人もくぐってくると、そこは少し広めに作られた廊下だった。

俺があけた穴がある側の壁には、騎士の鎧や剣などが飾られ、反対側には格子付きの窓が

等間隔で設置されていた。

 その窓側の壁の近くには、1人の女の子が立っていた。

 先ほどの桜の花びらと同じ、薄紅色の長髪をサイドポニーテールにした女の子で、身長は

150後半だろう。青く澄み透った目は、俺たちをじっと見ていた。

 服装は軽装でも、鎧でも、ローブでもなく、ミニスカートと青いリボンが胸元につけられた

どこかの制服に見える。


「はじめましてでいいんだよな? 俺には、君みたいな娘から攻撃される覚えがないんだけど?」


 俺は尋ねながらも、腕に魔力を集中させていく。いつでもダークを連発できる状態だ。

彼女はゆっくりと右手を上げる、天井を向けて立てていた人差し指の先端に、桜色の魔力が

集まっていく。俺のドス黒い魔力とは違って、キレイな色をしている。


「陽河悠夜に光喜・・・相手をしてもらうわよ」


 メアは無関係なわけだ、俺と光喜ということは、陽河家に恨みでもあるのかもしれないな。

陽河家は呪術師の家系だから、何かと人の恨みを買ったりもしている。

 少女の指先に集まっていた魔力は、やがて桜の花びらへと変わり、宙を舞い踊る。

すると、先ほどまではただの飾りだった騎士の鎧たちが、次々と動き出したのだ。


「モンスター!? それとも、物を操る能力!?」


 光喜があわてながら剣を抜く、メアも剣を構えて臨戦態勢に入っている。意気込みはいいが、

頼むから歌ったり、叫んだりしないでくれよ・・・。

 俺は魔力を一気に放出すると、宙に舞っていた花びらたちが、次々と黒ずんでいき、やがて

消えていった。すると、先ほどまで動いていた鎧騎士が消え、元の定位置に戻っていた。


「幻術か・・・それも、かなりの腕だな」


 光喜とメアは完全に騙されていたが、幻術で俺に勝とうなんて100万年早いんじゃないのか。


霞桜カスミザクラ!!」


 少女が叫ぶと同時に、まるで霧のように桜の花びらが乱舞し、少女の姿が見えなくなった。

俺はダークを一撃放ち、その爆風で花びらの霧を晴らす。だが、少女の姿はすでになく、

気配もかなり薄れている。

 俺は目を閉じて、心を落ち着けると虚空に向かってダークを放つ。


突羽根ツクバネ!!」


 すると、そのダークを切り裂くように、花びらが集まってできた鷲ぐらいの大きさの鳥が

虚空から現れた。二発目のダークでその花びらの鳥を相殺させると、鳥が現れたあたりまで

一気に踏み込み回し蹴りを入れる。

 すると、何もなかった場所から先ほどの少女が現れる。少女のか細い両手は、自らに

向けられた蹴りをけなげにも防いでいた。


「幻術を使っての、隠密攻撃か・・・悪くはないな」


 ただ、相手が悪かったな。俺はガードしている腕ごと、少女を蹴り飛ばす。

幻術の腕は悪くないが、体術のセンスは全く感じられない。このまま間合いを詰めて戦えば、

幻術を打たせる間もなく終わらせることできるだろう。


「くっ!! 寒桜カンザクラ!!」


 俺が間合いを詰めようとしたとき、俺と少女の間に桜の花びらで作られた壁が出現した。

突破を試みて腕を振りかざしてみるが、見た目以上に頑丈なその壁は、コンクリートの壁なんかより

ずっと強いものだった。

 俺が壁にひるんだ瞬間、壁のサイドから少女が現れ両手をかざす。


「これで終り!!」


 少女が決め技を撃とうとする、だがな・・・なんか忘れてないか?

少女が技を放つその刹那、少女の横にはトリプルビートで自分のスピードを3倍まで引き上げた

光喜が回りこんできた。

 そして、光の魔力の弾丸を少女にぶつける。


「きゃああ!!」


 少女の軽そうな体は吹き飛ばされ、花びらの壁はバラバラに散っていった。


「悪かったな・・・俺らは正義の味方じゃないんだ、必要ならば2対1なんて平気でやるぜ」

「俺はしたくないんだけどね〜」


 光喜が憎まれ口を叩きながらも、ニコニコとした顔で俺を見る。

少女はたいしたダメージもなさそうに立ち上がる、光喜の攻撃が直撃した右腕からは、花びらが散っていた。


寒緋桜カンヒザクラ・・・纏っておいて正解だった・・・」


 どうやら、自分の体全体に桜の花びらを纏っていたようだ、それを幻術で隠していたというわけか・・・。

花びらなんか使っているから、弱そうに見えるが、見た目異常の防御力だな。

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