ご乱心?
その場にいた剣士の話など、馬耳東風といった感じで2人を探しにいった。
まったく・・・。あのバカどもは、いったいドコにいったんだろうね・・・。
2・3部屋をまわったとき、身長3メートルはありそうな、鬼のようなモンスターが現れた。
「我は漆黒の魔の番人、アグラス!! これ以上の進入は我が――」
そいつの偉そうなセリフの途中で、顔面にダークをぶつける。結果は1撃KOで、モンスターは
消えていった。うざいよ、無に帰れ。
「光喜ー、メアー」
俺は2人の名前を呼びながら前進していく。3分おきぐらいにモンスターが出てくるのが腹が立つな。
俺が廊下を歩いていると、壁の一箇所に小さめに書かれていた文字を見つける。
文字は物で書かれたものではなく、魔力によって浮かび上がった文字だ。魔術に使う文字列の1つ
なのだが、これ一文字だと何の意味かまったく分からない。
「なんかあるのか?」
俺は隠し部屋でもあるのかと思い、壁を蹴り破る。結果的には、何の変哲もない廊下に繋がっていた。
「なんだよ、思わせぶりなもん作りやがって・・・」
俺がその廊下を見渡すと、1つの宝箱を発見する。空っぽの確立が高かったが、一応あけてみようと近づくと、
その宝箱が勝手に開いた。その箱口は牙の付いた口になっていて、大きな舌をだらしなく出している。
ミミックと呼ばれるモンスターだな。蹴り一撃でミミックを壁にたたきつけると、ミミックはおとなしくなった。
ミミックが俺についてきたそうにしている・・・ような気がする。
「うぜぇ」
無抵抗なミミックに横蹴りをかまし、再び壁に叩きつける。まだ死んでいないようだ。
どうせだからこのままにしておいてやろう、誰かバカな冒険者が餌食になるかもしれん。
不謹慎な理由でミミックをスルーして歩いていく。
ゾンビソルジャーが現れた。
「じゃま」
頭を蹴り飛ばし撃退。
フライングキラーが現れた。
「うぜぇ」
拳一撃で撃退。
ワーウルフが現れた。
「めんどくせぇ」
幻術をかけて放置。
陽河 光喜が現れた。
「ゴルァ!!」
膝蹴りを鳩尾に当てた。
悪い、ノリで蹴った。
「ぐ・・・ゆ・・悠夜〜」
光喜が苦しそうながらも、立ち上がった。その後、剣を構えて俺にかかってくる。
鳩尾に入った蹴りがきつかったのか、フラフラした足取りで回避はとても楽にできた。
「悪いって言ってんだろ・・・」
別に怒って剣を持ってるわけじゃないと思うが、なんとなく言ってみる。さてと、光喜は
そんなに俺を恨んでたのか? カッコイイお兄様に嫉妬でもしていたのかな?
「悠夜ゴメン・・・愛のために死んで!!」
「死ねるか!!」
アゴを蹴り上げてやると、光喜はキレイに宙を舞った。その後、床に激突して気絶。
目を分かりやすいくらいに回しながら、きゅ〜と情けない声を上げている。
コイツ、魅了してやがる。
「お〜い、起きろ」
回復魔法をかけながらも、光喜を蹴り起こす。光喜がふぬけた顔で起き上がる。
「魅了なんて初歩的な状態異常に引っかかりやがって・・・」
「だ・・・だって〜、アレは抵抗できないよ〜」
お前はどんなモンスターに会ったんだ? このガキみたいな奴が完全に魅了されるモンスターか・・・
会って見たくないことはないな・・・まぁ、それもメアを見つけてからの話なのだが・・・。
そんなことを考えていると、その本人がフラフラと前から歩いてくる。俺は声をかけようとするが、すぐに
異変に気が付く。
服は乱れ、顔はうっすらと朱色に染まり、足取りは文字通りふらふらしている。コイツも魅了か・・・。
むしろ、この姿に魅了されそうな感じもするが・・・。
メアのあられもない姿に目を奪われていたが、すぐに現状のまずさに気が付く・・・。
メアが魅了!! ちょっと待て、このダンジョンが消し飛ぶぞ!!
「光喜!! メアを止めるぞ!!」
光喜に目線をやると、真っ赤な顔をしながらメアから顔を逸らしている。
照れてる場合か!! 死にてぇのか!!
「まずは・・・幻術で動きを止めて!!」
俺が幻術をメアにかけようとしたとき、メアは剣を投げ捨て、壁に話しかけだした。呂律が回っていないため、
何を言っているのかは不明だ。
「ふぁふぁひゃぁふぁひぃ・・・・へふぁぇほ」
「おい・・・メア?」
危険そうに見えなかったため、メアに話しかけてみる。メアは焦点の定まっていない目で俺を見ると、しばらく
沈黙を続けていた。だが、やがてぱぁと明るい笑顔を浮かべると、いきなり抱きついてきた。
「ミケ〜」
「誰がミケだ!!」
ミケってあの時に黒猫じゃなかったか!! というか、こいつは魅了じゃなくて、混乱だ!!
メアほどの能力者なら、混乱ぐらいどうにかできると思うんだがな・・・。
「・・・・だ〜いすき」
メアの言葉に一瞬ドキッとしたが、前言にミケがあったことを思い出す。俺じゃないんだよな・・・。というか、
混乱状態で言ってる言葉を真に受けるなよ、冷静になれ俺・・・。
抱きついて離れないメアを片手間に、俺は万能薬を使用してメアの状態異常を解除した。
「・・・・・・?」
メアはしばらくの間、周囲を眺めて状況を確かめようとしていた。その後、俺に抱きついていた事実に気づき、
あわてて一歩俺から離れる。ついでに自分の乱れた服を眺めた。メアの顔がみるみる赤くなっていく・・・。
あ・・・これ、ヤバイ・・・
「キャーーーーーーーーーーーー!!」
メアが悲鳴を上げた瞬間、俺の視界は真っ赤に染まった。