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    新たな家族?

 親戚内での集まりをサボろうとした悠夜が使い魔を作ろうとしたとき、光喜のせいで儀式が失敗してしまう。

 使い魔ができるはずが、黒い長髪の少女ができてしまい、光喜の猛烈な反対もあり、消さずに家までつれて返ることになってしまっていた。

 そして、しばらくは、そりゃあ語りきれないほどの論争が繰り広げられた。その間に、少女を

無に帰そうとした俺を光喜が止めたい回数は片手では収まらなくなっていた。


「では、マスターでよろしいですね」


 事務的な笑みを浮かべると少女は俺の顔を覗き込むようにしてみた。前後の会話で分かった

ことは、コイツは俺の事を名前で呼ぶということは思いつかないらしい。


「もう、それでいいよ・・・」


 俺が疲れたように言うと、光喜がテーブルに身を乗り出した。


「じゃあ、今度は君の名前だね♪」


 ルンルン気分でいうのはいいが、名前をつけて愛着ついちまうと消すときに不便だぞ。という

か、この失敗作はいつまでここにおいて置くんだ?


「う〜ん・・・花子、良子、妙子・・・」


 光喜がブツブツとなんか言ってる・・・上記のほかにもいくつか聞こえたが、すべて○子といっ

た感じだ。なるほど、お前の頭の中では女性の名前は子がつかなきゃいけないんだな。


「決めた!! ベカ――」

「ミヤにしよう」


 光喜が何か言おうとしたのを瞬時にさえぎる。個人的にはベカのあとに何が続くのかも気にな

るところだが、聞くとこのバカを殴りたくなるに違いないので止めておこう。


「夜に魅入られた者で、魅夜(ミヤ)


 ウイスキーを喉を鳴らしながら飲んでいると――マネするなよ――、不服そうな光喜の目が向

けられてくる。


「え〜!? そんな変な名前〜」


 お前にだけはネーミングセンスをけなされたくないな。お前に比べたら、俺程度のネーミングセ

ンスでも流行語対象が取れそうだぜ。光喜が俺に講義を続けようとすると、ミヤ――未定――が

制止した。


「いいんです、マスターがつけてくださった名前ですから」


 ミヤ――決定――がそういうと、光喜は本人がそう言ったので渋々納得したようだ。そうだよな、

ミヤだって、ベカ○○子みたいな名前はいやだよな。さてと、名前をつけたはいいがコイツをこれ

からどうするかだな・・・。

 俺が眉間にしわを寄せながらミヤを見つめて考えていると、ミヤは大会社の受付嬢のような社交

的な笑みを向けた。幽霊を使い魔として召喚した場合、生前の記憶が消されていることはよくある

ことだが、なんにしても、こいつが何者なのかハッキリしてないんだよな。自分の名前も分からない

と本人は言ってるし、コイツが幽霊かどうかさえ怪しい。

 精霊・悪魔・天使みたいな高レベルな存在とは思わないが、そもそも、コイツが世界に存在してい

たのかどうかも怪しいものだ・・・。おっと、こういう言い回しをすると混乱するか・・・要するにあの儀

式が失敗した瞬間に生まれたという可能性もあるということだ。

 

「――じゃあ、今は使ってないお父さんの部屋使ってよ」

「ハイ」


 ちょっと待て、俺が考え事している間にどこまで話が進んだんだ。まさか、チャンネル争いがどうこ

うのレベルまで話が進んでないだろうな。畜生、いい具合にアルコールが頭に回ってきて話の途中

段階を思い出せない。


「では、マスター失礼します」


 ミヤはそういうと立ち上がってリビングから出て行こうとする。


「お前、睡眠とかとるのか?」


 魂が入っている入っていないに関わらず、元が土だからな。睡眠が必要とは思わないが・・・。ミヤに

尋ねた俺に、ミヤに代わって隣に座っていた光喜が言う。


「悠夜〜、話し聞いてた〜?」


 光喜が間の抜けたような声で言う。その間にもミヤはスタスタと俺の前から姿を消した。


「シャワー貸してあげるって話だったじゃない」


 だったじゃない、といわれてもな。そもそも、俺を話に混ぜてくれなかったのはお前だろうが。兄とし

て結構寂しかったぞ。まぁ、その寂しさもコップ一杯の酒でどうでもよくなるのだが・・・。ん?シャワー?


「溶けるぞ」

「ふぇ?」


 間の抜けた声を出して目を丸くしている光喜をジト目で見つめる。人間が溶けるわけ無いじゃん、と

でも言いたげな瞳は俺を哀れんでいるかのようにも見えた。


「悠夜〜、飲みすぎ〜」


 まだ、2瓶目だよ。酔っ払ってるわけじゃねぇ。思い出してみろ、アイツの体の原材料は土100%だ

ぞ、水にぬれたら泥になって体が崩れ落ちるに決まっているだろうが・・・。


「・・・アーー!!」


 ようやく理解したかのように驚愕の声を上げて光喜は急いで立ち上がった。そしてドタドタと光喜は

走っていく。光喜〜、ドコにいくつもりなんだ〜? もしかしてとは思うが・・・


「キャーーーーー!!」


 光喜がリビングから走り去って数秒後にミヤの悲鳴が聞こえてくる。光喜、お前はバカだよ・・・。

 それからというと、光喜と一緒に炭酸飲料を飲もうとして顔が溶けかけたり、光喜と一緒に吹き掃除

をしようとして手が溶け出したりと、まぁそんな感じだ。それにしても、光喜よ・・・お前には学習能力と

いうものがないのか? そして、ミヤはなぜ断らんのだ。

 ともかく、ミヤが溶けるたびに俺はミヤの体の作り直しをさせられたのだった。


 夜もそろそろ明ける頃、光喜はとっくに自分の部屋で深い眠りについていた。俺はというと、ここ数年

の事故および殺人などの記録を調べていた。幽霊というものは、年月と共に自らの姿が曖昧になり、さ

らに時を重ねると精霊と呼ばれる存在へと変わっていく。ミヤは限りなく自分の姿を残したまま召喚され

た、つまり、幽霊だとしたら死んでからあまり年月が経っていないのだろう。


「とはいっても、名前がわからないんじゃなぁ・・・」


 俺はリビングのテーブルに、親父の部屋にあった数年分の事件のファイルを投げ出す。親父も名があ

る魔法使いらしく、いろいろとした分野の仕事に手を伸ばしているため、こういうものがこまめにとってあ

ったりするのだ。

 俺は口元で短くなった煙草を、灰皿にできていた吸殻の山に突っ込んだ。手元には睡眠欲を抑えるた

めに酒類ではなく、冷め切ったブラックコーヒーが置いてある。俺がそのマグカップに入った冷たいコー

ヒーに口をつけながら、4冊目になるファイルを開ける。新聞の大きな見出しと写真だけを見るようにパ

ラパラと適当にファイルをめくっていった。すると、ファイルのページが数枚引きちぎられていたことに気

付く。日付は10年前のあの日、母さんの命日だ。そうだよな、あの事件は親父にとって忘れたい出来

事だったんだな。

 ふと、ページが破られていたために見えていたページ、つまり、破られたページの前のページにあた

るページに目をとられた。

 会話のみで終わっちゃいましたね、まぁ、意味ありげな終わり方ですが、その事柄がどの程度ストーリーに影響するかというと・・・・あまり期待しないほうがいいと重いますね。

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