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第6話「使い魔とマスター」

 初詣もすみ、寝正月を満喫した悠夜はまたせわしい毎日が近づこうとしていた。

 皆さん、お正月には親戚に会いに行きましたか? 俺はというと・・・そんなめんどくせぇことや

ってられるかボケって感じです。正月はほとんど家で過ごしてたもんだから、親戚の奴から電話

がかかってきやがった。来週の日曜に、陽河家現頭首であるクソジジイのなんかの祝いだっけ? 

誕生日じゃなかったが・・・。まぁ、とりあえず親戚中が集まるので次期頭首である俺にも来いと

のことだ。


「それで、何やってるの?」


 光喜が夜の公園で地面に何か書いている俺に尋ねる。その手には落ちていたサッカーボール

があった。


「影武者を作ってんだよ」


 俺は煙草を咥えながら地面に魔方陣を書き続ける。これは使い魔を作る魔方陣だ、俺は色々な

物を媒体にして使い魔を作ることができる。今は公園の土を媒体にして使い魔を作っているところ

というわけだ。


「自分そっくりな使い魔を作って、親戚の集まりに行かせるの?」

「そうだ・・・」


 俺は生返事をしながら淡々と作業を続ける。


「そういうの職務怠慢って言うんでしょ」


 たく、どうでもいい言葉を知ってるなどこで覚えた。


「刑事アニメ〜♪」


 はいはい、そうですか・・・。最近のアニメも侮れないな。それはそうと俺の邪魔だけはしないでく

れよ。またいつぞみたく、気が付いたら俺や光喜やエルルの精神が入れ替わってたなんていやだ

からな。


「ふぅ・・・よっしゃ、詠唱をはじめるから離れてろ」


 俺はそういうと魔方陣の中から光喜を追い出した。光喜は退屈そうにドリブルをはじめた。さて、

高等な使い魔を作り出そうとすると集中力がいるんだよな・・・。

 俺はゆっくりと詠唱を始めた。夜の空気は声が透き通って詠唱がスムーズに進むような気がす

る、悠夜という名前だからというわけではないが、夜に高度な魔法を使うのはそう言った雰囲気

が好きだからだ。

 すると突然、ボールがバウンドする音が聞こえた。たく、俺の集中力を乱すなといっ・・・あの・・・

何か俺の足に当たったんですが? 足元を見下ろすとサッカーボールが転がっており、そいつ

は魔方陣の一部を見事にかき消してなさった。

 俺がそれを認識した瞬間、魔方陣は真っ赤な光を放ち始めた。

 ドカーーーーーーン!! そんな擬音がぴったりなコミカルな大爆発が起きた。辺りは土煙に包ま

れ、爆音の余韻だけが耳に残っている。いや〜、生きてるってすばらしい・・・。


「光喜ーーー!!」


 殺す。今日こそ三途の川の向こう側まで吹き飛ばしてやるさ。

 俺はぶっ倒れている光喜の頭を掴むと、上下左右に揺さぶる。


「てめぇ、邪魔してんじゃねぇぞこらぁ!!」


 光喜の首を腕で固めると、頭を握りこぶしでぐりぐりと攻撃する。


「ふぁ、ふぇ!! ご、ごめんってば〜、ほ、ほら、失敗してないじゃん!!」


 光喜は俺の腕の中でもがきながら砂煙の中の人影に指差す。おいおい、あんな不完全な魔

方陣で使い魔ができるわけねぇだろ・・・。

 やがて土煙が晴れると、異形なモンスターでも、ゾンビやゴーレムでもない完全な人の形をし

た使い魔がそこにはいた。


「ほらね、成功してたでしょ」


 光喜がにこやかな顔をしていた、微妙に顔が引きつっているがな。


「ほう・・・お前の目には俺はこんな可愛く見えているんだな」

「ゴメン・・・」


 俺の目の前には黒髪、黒い瞳までは俺と同じだが、黒いローブを着た十代前半ぐらいの女の

子がペタリと座り込んでいた。


「失敗して、なんかよく分からんのを召喚しちまったようだ、多分浮遊霊かなんかだろう」


 あ゛〜、めんどくさいなぁ〜。事後処理っていうのが一番嫌いだ。俺はそのキョトンとしている少

女に片手をかざした。


「何するの?」


 光喜が不安そうな顔で俺に尋ねた。事後処理だ事後処理。


「失敗したんだから、取り消すんだよ・・・」

「それって、この娘を消すってこと?」


 まとめるとそうだな。


「ダメダメ、ぜーーーーったいダメだって!!」


 あのなぁ・・・元々死人だぞ、それがここに存在していること自体がイレギュラーな事態であり、

道徳的にも許されないことでな・・・。

 俺が珍しくも人間のあり方について語ろうとしていると、少女は俺のコートのすそを掴んで引っ

張った。


「ご主人様」


 か細い声で少女はそう言った、その瞬間俺の中の何かのスイッチが入っちまったようだよ。


「今すぐ消す!!」

「悠夜、落ち着いて!!」


 俺と光喜の問答を不安げな瞳で見つめていた少女は、光喜の激しい反対によりとりあえずは

家に連れて帰ることになってしまった・・・なんでだろうな・・・。

 ところ変わって、家のリビングで半ばやけ気味にウイスキーを飲みながら今後の事を話し合っ

ていた。


「面倒見切れねぇよ・・・」


 ウイスキーを持つ手が口にうまく運ばれないのは、その手を少女がずっと掴んでいるからだ。


「えっと・・・君、名前は?」


 光喜は俺の言葉をことごとく無視して少女と会話する。おい、兄のありがたい言葉を全て無視

するのはやめろ。


「無いです」

「ナイちゃんか〜、俺は光喜で〜、そっちが悠夜」


 わざとやってるのか光喜?ナイなんて名前ありえねぇと思わねぇか?いや、この世界なら必ず

しもありえないと言い切れないか・・・。

 光喜が俺の自己紹介をすると、名無しの少女は俺の顔を見る。俺の顔はさっきから眉間にし

わが寄ったまま元に戻らないんだがな・・・。


「ご主人様」


 そういいながら、すそを引っ張ってくる。いや、確かにお前の主は俺だが、周囲の人間に誤解

を生むためそういう言い方はやめてもらえないかな。

 俺の提案を受けその少女は少し首を捻って考える。


「・・・旦那さま?」


 ・・・やっぱ消すか。

 内容がうっすーい話なんですが、ミヤはいないと後々困るのでこの話が入り込みました。この話が終わる頃には、内容が真剣になってくる・・・予定です。

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