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    ラブラブ?

 なんだかんだでエルルと2人きりで初詣に来ていた悠夜。2人でいるうちに、エルルの両親の死について話を聞くことになった。そして、その時にエルルを助けた男がいたことを知る。それは、悠夜の母親を殺したあの男だった・・・。

 相変わらずの人ごみの中、俺たちはこれでもかと言うくらいのろのろと歩いていた。くそ・・・人ご

みが鬱陶しい、いっそ全員吹き飛ばしてやろうか・・・。そんなことを考えながらも、やはりさっきの

話が気になってしまう。

 俺の探している男とエルルの初恋の男、そして、『魔女狩り』の存在。くそ、考えてもらちがあか

ねぇ。

 エルルとの会話もそこそこに、ついに長かった苦難の道を越えて賽銭箱までやってきた。初詣

がこんなに気力と体力を有するものだとは知らなかったよ。財布の中をあさって5円玉を適当に

放り投げて一応手を合わせる。

 願い事は特にねぇ。つうか、俺は神も仏も信じちゃいねぇ。

 でも、1年の初めくらい信じてみてもいいかもな・・・。自分でも神頼みなんてバカなことだと思う

が、心の中でそっと今の願いを唱えてみた・・・。


「お兄ちゃんは、何をお願いしたの?」


 エルルが恒例ともいえるような質問をしてくる。


「家内安全と金だな・・・」


 無論そんなことは頼んじゃいねぇ、聞かれたから即席で考えただけだ。


「お前は?」


 俺はエルルを見下ろしながら尋ねた、エルルは両人差し指を合わせながらうつむく。


「な・・・内緒」


 お決まりの問答を繰り返したあと、俺らは帰ろうと後ろを振り返る。またこのワラワラとした人ご

みを抜けなきゃいけねぇのか。俺はエルルの手を引いて神社脇の茂みへと入っていく。


「ちょ・・・お兄ちゃん!?」


 何も言わずに手を引っ張ったため、エルルは驚いている。そうだよな、何も言わずに茂みに連

れ込まれようとしたら誰だって焦るわな。まぁ、抵抗しないだけ俺は信用されているのだろう。


「こっちを抜けたほうが、人ごみに入らずに済むだろ」


 俺がそういうと、エルルは納得したのかしてないのか分からない表情のまま俺についてくる。人

ごみから完全に離れ、徐々に雑踏のざわめきが遠ざかっていく。月の青白い光が幻想的な感じだ

な。などとガラにもないことを考えつつも歩いていく。

 風が緩やかに吹き、木々のざわめきだけが聞こえてくる。その風は少し肌寒かったが妙な心地

よさを感じさせた。

 歩くたびに足元に茂った草がガサガサと音を立てていた。二つの音が不意に一つになる。俺は

振り返り、エルルを見た。


「どうかしたか?」


 風に揺れて顔にかかっていた髪を払いながらエルルに尋ねる。エルルはうつむいて口をつぐんで

いたが、ゆっくりと顔を上げると俺をまっすぐに見つめる。

 青白い月明かりがエルルの白い肌をより白く、赤い瞳をより赤く見せた。


「お兄ちゃんは、メアちゃんのことどう思ってる・・・」


 不意に投げかけられた質問にとっさな答えが出なかった。なんで急にメアの話しなんか持ち出す

んだ? それにしても、メアか・・・。


「変な奴だよな、最初は何考えてるか分からなかったが・・・。最近は何が言いたいかなんとなく分か

ようになったかな」


 俺が悩み悩み考えて答えを出したが、エルルは納得がいってないようでゆっくりとうつむき始めた。


「そうじゃなくて・・・あの・・・」


 エルルはしばらくうつむいたままだったがふっと顔を上げた。少し潤った瞳が俺を一直線に見つめ

ていた、普段は俺と目を合わせようにしないエルルがここまでまっすぐな瞳を向けたのは珍しいな。

 月明かりに照らされたエルルに俺はしばらく見ていた。いや、正確には魅せられているのかもしれ

ないな。


「大人っぽい方が・・・いいとか・・・」


 聞こえるか聞こえないかの境界ぐらいの声で言う。蚊の囁くようなとはこういう声の事を言うんだろう

な。これだけ声が小さいと、俺に語りかけているのか、独り言なのかさえ怪しい。

 それにしても、メアが大人っぽいか? ちびっ子に混じって人形掬いに全力を出すような奴だぞ、泣

き虫だし、暇さえあればお菓子かじってるし、この前なんて朝食にバームクーヘンを食ってるし。光喜

大差がないんじゃないか。などと考えていると、ふと今日の事を思い出した。

 どちらも屋台で俺と並んでたとき、メアは彼女と間違われ、エルルは妹と勘違いされてたよな・・・。

まさか、そんなことを気にしてたのか?


「別に・・・可愛けりゃどっちだっていいだろ?」


 俺は悪態をつきながら元の進行方向へと歩き出した。エルルはゆっくりと俺の後ろをついてくる。背

中越しにエルルの沈んだ顔が見えるようだ。


「・・・お前も十分だと思うぞ」

「え・・・?」


 エルルは小さな声を上げると、エルルの足音が止まる。たく・・・こっちだって恥ずかしいの我慢して

言ってるんだぞ・・・。


「エルルも十分魅力的だって言ったんだよ!!」


 俺は怒鳴り声に近い声を上げると足早に歩き出す。くそ、冷え上したみたいだ、顔が熱い。エルルも

それにつられて駆け足でついてくる。俺はエルルの方に振り向いた。

 振袖と髪が風に揺れ、胸元の銀の十字架が輝き、青白い月明かりに包まれたエルルの顔は、驚く

ほど柔らかな笑みを浮かべていた。

 まったく、たった一言で機嫌が良くなるなんて・・・安上がりだな。

 そんなことを考えながら、俺の後ろではなく隣を歩くエルルを見て、こんな平和が永遠に続けばいい

と思ってしまった。


 だが、それは叶わない願い・・・。

 いや、本当は俺はそんなこと望んじゃいないんだ・・・。

 心の中では、奴と戦うことしか考えていない・・・。

 復讐のために戦いに身を焼く、この運命から逃れない限りは・・・。

 この平和も、いつか消えてしまうんだろうな・・・。

 初詣がやっと終わった・・・。もう、バレンタインの時期になっちゃってるし・・・。バレンタインも何かしようかと思ったけど、この調子だと間に合わないし止めておこう・・・。

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