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    共通点?

 みんなで初詣に来ていたが、メアと光喜が迷子になり、シャリーナがエルルに気を利かせ、メアと再び合流し、メアが再び姿を消し。

 めまぐるしいメンバーチェンジの果てに、悠夜とエルルは2人きりで初詣をしていた。

 屋台の熱気のおかげでコートがなくてもそれほど寒くはない。エルルのゲタの音がコツコツと控

えめな音を立てながら俺についてくる。両手に花というわけにはいかなくなったが、これはこれで

悪い気はしないな、後ろじゃなくて隣を歩いてもらえればもっといいのだが・・・。


「・・・・・」


 縦に並んでいる二人の間に会話は弾む気配を見せなかった。そりゃそうさ、参拝客の雑踏でた

だでさえやかましいのに、後ろにいる人間と会話なんて無理難題だろ。


「・・・・あっ」


 急にエルルが蚊の囁くような声でそういった。この雑踏でこの小さな声を聞き取れる俺の耳が恐

ろしいよ。上記の無理難題は一般人の話だ、忘れてくれ。

 俺が振り返ると、エルルは屋台に並べられていた小さなネックレスを見ていた、銀の十字架がデ

ザインされたネックレスだったがイメージ的にはどっちかというと男物だな。


「欲しいのか?」


 エルルの横に立って尋ねた。エルルは少し考える動作をしてもう一度ネックレスを見た。ネックレ

スの下には2番という数字がふられていて、この屋台がくじ引き屋だということを物語っている。

こういうのって、くじの中は実はハズレばっかっていうことが多いんだよな。わざと1等とか出ない

ようにしてあんだよ。


「おっちゃん、一回頼む」


 俺はそういって300円を屋台の主人に渡した。すると、その主人は明らかに数の少ないくじが入

った箱を差し出してきた。ほぼ間違いなく1等とかはないだろうな。

 俺は適当にくじを引くとあけてみた。隣からエルルも見ようとしているが、身長差があるためにくじ

の番号までは見えてないだろう。


「2番だ」


 俺がそういうと、案の定屋台の主人は驚いた表情をしている。俺はくじを差し出し、ネックレスを手

に取った。屋台の主人はくじを見ては目をこすり、もう一度見ては、ポカンと口を開けている。


「じゃあ、このネックレスもらってくぜ」


 俺はそういうとネックレスを持って早々と立ち去った。今頃あいつは67番のくじを永遠と眺めている

だろう。いやほんと、幻術って便利だわ〜。幻術が解けるのは6時間後ぐらいだろうが、念のために

屋台から離れていくと少し人ごみを外れる。


「ほら、欲しかったんだろ?」


 俺はエルルにネックレスを手渡してやる。エルルは俺が幻術を使ったことなどお見通しのようで、少し

ため息をついたが受け取ってくれた。エルルはネックレスを首にかけると、十字架を指で転がすように

触っていた。


「それにしても、男物のネックレスが欲しいなんて変わってるな・・・」


 俺がそういうと、エルルは何かを考える仕草をする。少し考えたあと、ネックレスを見て感慨にふけて

いるような顔をする。


「むかし、このネックレスと同じものをした人に会ったことがあって・・・」


 エルルは穏やかながらも寂しそうな顔をする。たまに見ることのある顔だ・・・おそらく、何度となくそい

つのことを思い出していたんだろう。


「悠夜お兄ちゃんと同じ、黒い長髪の男の人だったんだけど・・・」


 俺はそのセリフを聞いたとき、全身の毛が逆立つようだった。まさか、奴が・・・・。いや、黒い長髪の

男というだけで判断するのは早いか。


「あの爆弾テロのとき・・・・助けてくれたのがその人」


 あの爆弾テロ? なんの話だ? シャリーナと爆弾テロの現場に居合わせたことがあったが、エル

ルとはなかったはずだ。


「シャリーナも一緒に助け出されたんだけど、お父さんもお母さんも手遅れで・・・・」


 エルルがそう言ったとき、俺は聞いちゃいけないことを聞いたんだという罪悪感に襲われた。そうか、

エルルの両親は内戦に巻き込まれて死んだと聞いたが、爆弾テロが原因だったのか・・・。でも、エル

ルの元実家は俺の実家からそう遠くなかったはずだ。なのに何でそんなことも覚えていなかったんだ?

 そう考えたとき、俺の頭の中で1つの可能性が生まれた・・・。何度か振り払おうとしたが、何度でも

同じ結論が出て来た。


「なぁ、それっていつだ・・・」


 俺が尋ねたときエルルは悲しそうな顔をしたが、次の瞬間には納得したように一人でうなづいた。


「そうか・・・悠夜お兄ちゃんは、あの日以前の記憶が曖昧だったんだよね・・・」


 あの日・・・今から12年前の俺の母親の命日・・・。そこを境にして過去の記憶が曖昧になっている

原因分かってる。医者が言うには母親を失ったショックだというが、アレは奴の・・・母親を殺した長髪

の男の忘却術のせいだ。


「私の両親と、悠夜お兄ちゃんのお母さんの命日って一緒なんだよ」


 エルルの言葉を聞いた瞬間思考回路が停止した気がした。この12年間、互いの過去のキズとして

そういう話をしなかった。この世界に葬儀という習慣はあっても、命日に特別なことをする習慣はなかっ

たからエルルの両親の命日は知らなかった。

 この世界では死んでも魂の寿命がこない限り何度でも蘇生が可能だ。だが、俺の母親もエルルとシ

ャリーナの両親は蘇生が不可能だった。

 魂の寿命というのは個人差はあるが、5人が同時に死ぬなんて普通ありえない。ここから得られる結

論はなんだ・・・簡単なことだ、魂を殺すことのできる奴が5人を殺した。

 そして、俺はそんな手段を持つ奴らを知ってる。『魔女狩り』そう呼ばれる集団、黒魔術式の武器を持

ち蘇生不可能な魂の死を与える手段を持つ。

 そうか・・・ならば、奴も『魔女狩り』なのか・・・。


「お兄ちゃん?」


 エルルに呼ばれて我に帰る。知らない間に顔がだいぶこわばっていたようだ、眉間にしわを寄せすぎ

て顔の筋肉が疲労している。俺は平常心を心の中で訴えながらエルルに尋ねてみた。


「それが初恋?」


 その瞬間にエルルの顔が真っ赤になった。図星か・・・ならば、そいつが『魔女狩り』のメンバーという

ことは控えていたほうがいいだろう。『魔女狩り』のことも、自分の命の恩人が親の仇なんてことも知ら

ないほうが・・・・ん?なんでエルルとシャリーナの両親を殺した奴が、エルルとシャリーナを助けたりし

たんだ? 俺は心の奥底にひっかかるものを感じながらも、母親の仇の手がかりを見つけた喜びが勝

っていたため深く考えるのをやめてしまっていた。


「・・・まさか、こんなに身近にヒントがあったとはな」


 独り言を呟く俺をエルルは不思議そうな目で見た。俺はなるべく心配かけまいと、エルルに笑って答

えてやる。普段しない笑顔を作るのはなかなか難しいものだ・・・・。


「あ・・・で、でも・・・それは、昔の話で・・・今は・・・・」


 あたふたとするエルルが顔を真っ赤にしてついには黙りこくってしまった。たく・・・名前も知られてな

いのに、ここのまでこんなかわいい女の子にもてるなんてうらやましい男もいたもんだ・・・。

 俺はあわてふためくエルルの頭を軽くなでると、賽銭箱への道に戻っていく。というか、この神社賽

銭箱遠いな・・・。

 修学旅行や部活での行事がかさなり、2月なのに初詣・・・。ヤバイ・・・。頑張ってこの話から抜け出そう・・・。

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