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    両手に花?

 魔女狩りという悪の組織の存在が明らかになったが、悠夜たちは何事もないように初詣に来ていた。

 家から出てから8分後、光喜とメアが迷子になりシャリーナは2人を探しに行く。

 2人きりになる悠夜とエルル[ちなみに、タケシは忘れられている]、このまま、2人きりの初詣になるかと思ったとき、屋台を堪能していましたという風貌のメアが帰ってきた。

「とりあえず、迷子確保と・・・」


 俺はメアの頭に光っている電飾を軽く小突く。するとメアはそれをゆっくりとはずして、俺の頭

に・・・。


「つけたら、怒るぞ・・・」


 俺の一言を聞いてメアはその場で静止。しばしの沈黙のあと、それを帯に引っ掛けるようにし

てしまった。顔が残念そうに見えるのは俺の思い過ごしではないだろう。


「それじゃあ、3人で屋台でもまわろうか」


 エルルは少し俺の顔を見たあと、またいつもの通り視線を逸らす。表情が沈んで見えるのは

夜のせいだろうか? メアは綿菓子をモニュモニュという擬音で食べている。自分でモニュモニ

ュはおかしいと思うが、ほんとそんな感じだ。

 俺が歩き出そうとしたとき、俺の肩に誰かの肩がぶつかる。そいつは地元の若い男のようで

ラムネ瓶を持ったまま俺を睨む。ガンを飛ばされたら、ガンをとばし返すのが礼儀というものだ。

というか、飛ばさなきゃ気がすまねぇ。

 男はそれにいらだったのか俺と正面に向き合う。なんだコイツやる気か? 俺はその男が持

っていたラムネの瓶を軽く握る。バリンという音を立てて一瞬で砕け散った瓶、それを呆然と見

る愚民。


「やんのか?」


 男は一目散に逃げ出した。いやぁ、速い速い・・・。というか、こんなことで逃げ出すなんてチ

キンにも程があるだろう。

 そんなことを考えていると、不意に後ろから誰かに肩を叩かれた。また俺に喧嘩を売る奴が

いるのかと思い振り返る・・・。


「君、ちょっといいかな?」


 そこには警官(ポリ)が立っていた。俺、今年も厄年なのかな。


「悪いな・・・」


 俺が駐在所から解放されたのは30分後のことで、その間、エルルとメアは律儀にもその前で

待っていてくれた。


「・・・くしゅん」


 ベビーカステラをモニュモニュと食べていたメアが不意にくしゃみをする。


「たく・・・浴衣でくるからだ」


 俺はコートを脱ぐと、メアに着せてやる。メアは俺の顔とコートを交互に見ると、コートの袖に顔

を近づけてみる。匂いを嗅いでいるように見えるが、煙草臭いか? 自分では意識したことがな

いんだがな。


「・・・・・似合う?」

「似合わん」


 白い浴衣の上から黒いコートを着て似合うはずがない。メアは自分の手が隠れてしまう長い袖

をバタバタと羽ばたくように振り回す。何が楽しいのかは俺の理解の範囲外だ。

 そろそろ移動しようかと思い振り返ると。エルルの顔が先ほど以上に沈んで見える。


「大丈夫か?」


 俺が尋ねると、エルルは我にかえったようだ。


「うん・・・少し人ごみで疲れただけだから・・・」


 エルルはいつもより心なしかテンション低めに言う。


「それより、悠夜お兄ちゃんは寒くないの?」


 エルルはなんだか、強引に話題を変えるように言った。この時期にアンダーだけで寒くないわけ

ないのだが、過去、夏の暑さにまいった光喜にと共に行った半そででの氷のダンジョンよりマシだ。

 俺は適当に返事を返すと、エルルはまたうつむいた。そして、しばらくの沈黙の後、俺の背中に

やわらかくくっつく感触が・・・。

 顔だけで後ろを見ると、メアが俺の腰に手を回して背後から抱きついている。


「・・・あったかい?」


 いや・・・あったかいにはあったかいが・・・。背中に当たるものをなんとかしてくれないかな、とい

うかメアって着やせするタイプなのか、結構デカイ・・・。なんの話をしているからはご想像に任せる

よ。少なくとも帯に入っている財布がデカイとかいう話ではない。


「歩きづらいだろ・・・」


 平常心、平常心、平常心・・・・煩悩退散。ため息のふりをして深呼吸をし、すこし瞑想をする。よし!

煩悩退散失敗。

 メアから視線を逸らしたとき、エルルがジーッと俺たちの事を見ていた。やっぱり、表情が沈んでい

るよな。

 やっとのことでメアは俺から離れ、俺の横に立つ。こいつは何をするにしても、ワンテンポ間を空け

るのはなぜだろう? そんなことを考えていると、今度は俺の腕にしがみついてくる。


「・・・・・・」


 そして無言で俺の目を見る。この目線が「あったかい?」と尋ねているということが分かるようになっ

た俺はテレパスか何かを身に着けたとでもいうのだろうか。


「大丈夫だから離れろ」


 俺の理性が健在しているうちに離れろ。衆目に構わずお前に手を出して、お前の能力で俺と周囲の

人間がバラバラになるのはゴメンだ。お前の声を刃に変える力なら、この神社にいる人間を30人くらい

なら1秒で始末しそうだしな。

 俺は初詣という神聖な儀式を血で汚さないために煩悩を押さえ込む。さっきガンの飛ばしあいしたと

きは殺してやろうかと本気で思っていたが、男の闘争本能と煩悩は別だ。

 そんな俺の脳内で起こっている煩悩と理性の戦いなど知らないで、メアは未だ俺の腕を掴んだまま

離していない。


「ほら行くぞ」


 平常を装いながらメアのやわらかい感触から離れて歩き出した。ちょこちょこと上品な歩き方で後ろ

からついてくるエルルと、俺のコートを大事そうに羽織ながらも綿菓子を食べながら横に並んでくる。

大和撫子な感じな女の子と、無口ながらも人懐っこい女の子、両手に花っていうのは、こういうことを

いうんだろうな。

 まぁ〜、そんな感じです。ただ、お気に入りのエルルとメア、そして主人公の悠夜をメインにして書いていこうと思っただけ・・・、それだけじゃ、番外編みたいになっちゃうから少しは本編に沿ったことをするかもしれませんが、重要性の低い話には変わりないでしょうね〜。

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