シャリーナの聖地?
光喜&シャリーナに魔法学校の期末試験という難関がたちはだかった。優等生のエルルが光喜を、既に卒業生となっている悠夜はシャリーナをそれぞれ教えることになった。
ウェルカム・ダンジョン。そんなわけの分からん言葉がよく似合いそうなダンジョンに俺たちは
来ていた。というか来てしまった。ダンジョンの入り口のゲートには両端にピエロの巨大な置物
が置いてあり、内部までへの道には赤い絨毯が敷き詰めてある。
「なんか最近、普通のダンジョンに来てない気がする・・・」
お菓子の城に、死神だらけのダンジョンなのかどうかも分からんダンジョン。俺の快適な冒険
者ライフは一体どこへ行ってしまったのだろうか。もしも、迷子になってるのを見つけたら連絡し
てくれ、たとえそこが異世界だとしても迎えに行くから。
俺は煙草を吸いながらやる気ないオーラを全開にして周囲に振りまく、だがそのオーラを悟っ
てくれるほどするどい人間はここにはいないようだ。
光喜はいつもと同じで常に無邪気なニコニコ笑顔、エルルはシャリーナと何かこそこそと話し
ている。
「―――ためには、まず家族から責めるのも1つの手なんだからね」
シャリーナが何かエルルに言っている、エルルはおもちゃの水鳥のように赤くなった顔を上下
させていた。そして、ひとしきり話したあとシャリーナはエルルの肩を叩き俺に近づいてきた。
「じゃあ、とっとと行くわよ、私が教えさせてあげるんだから手抜きは許さないわよ」
シャリーナが偉そうにいいながらダンジョンとは別の方向に歩き出す。
「おい、このダンジョンでするんじゃねぇのか?」
俺が尋ねると、シャリーナは俺の方に向き直る。
「光喜とエルルはね、私たちは別のところで特訓よ!!」
別のところって、光喜たちと離れた場所で特訓する意味なんてないだろう。どうせならみんなで
したほうがいいんじゃないか? 俺のそんな疑問などおかまいなしにシャリーナは歩いて行く。
こいつは昔からこんな奴だ、昔も今も苦手な奴だ。もっとも、俺と目を合わせることが出来ない
内気なエルルに、馴れ馴れしくっついてくるタケシ、会話が成立しないメア、俺からしたらどいつ
も苦手な連中だ。
いや、それだと少し語弊があるか・・・。俺は人付き合いというものが苦手なんだな。光喜は逆
に誰とでも付き合えるようだから、その点、奴がうらやましいよ。
「何してるのよ、早くしなさい!!」
俺の遥か前方からシャリーナの怒鳴り声が聞こえてくる。アイツは俺に教わろうという気がある
のだろうか?
シャリーナに連れられ、ワープポイントと電車を駆使して俺たちはある町まで来ていた。
「思ったよりワープポイントがこんでたわね。おかげで予定を20分もロスしてるわ」
シャリーナが改札から出たところで車道を眺めながらそういった。
「で・・・ここでどうするんだ?」
俺は一応聞いてみる。改札を出たところにはデカデカしくもアースタウンと書かれた看板がある。
「いい、このアースタウンは地属性に関連したものがわんさかとある町なの!!」
知ってるよ。地属性なんてマイナーで地味な属性を取り入れちまったばかりにさびれつつあるど
うしようもない町だろ。マニアックな町は全てアキバのように繁栄するとは限らないんだぜ、最もこ
の世界にはアキバはないがな。
「地味じゃなーい!! 地属性の地と地味の地は意味が違うのよ!!」
一緒だろうが・・・。まぁ、そんなことを考えていても仕方ないので今後の方針を聞くことにする、ま
さかショッピングとか言わないでくれよ。
「無論決まってるわ、ここで買った装備を駆使して試験でいい点数を取り、火属性や水属性を見返
してやるのよ」
ようするにショッピング&私念的なもののために俺はここにいるわけだな。
シャリーナはそれだけ言うと、俺の反論など長期休暇前の担任の話し程度にしか聞いていないら
しく、ほぼ無視を決め込んで歩き出した。
しばらく歩いてシャリーナは1つの店の前で立ち止った。ウィンドウには濃い赤や赤茶やこげ茶、よ
うするに似たような色ばかりの魔石が並んでいた。このタイプの魔石は持ってるだけでわずかながら
も魔力が上がる奴だな。
「こういうのって、うさんくさいわね・・・」
シャリーナはマジマジと見ながら小さく呟いた。俺はこの世界の全てがうさんくさいよ。
「なんかこう、確実にドンと強くなれるものってないのかしら?」
ねぇよそんな都合のいいもの。
「あんたは知らないの伝説の秘薬の作り方とか、大精霊と契約する呪文とか」
シャリーナがマジメな顔で聞いてくる。こいつは本気で魔法を習得したいと思っているのだろうか?
「あるにはあるがリスクが大きすぎる、よぼよぼの婆さんにはなりたかねぇだろ」
俺が言うとシャリーナが少し悩む。悩むなよ。
「それもそうね・・・」
少し残念そうに言いながらまた歩き出した。構わないからやって頂戴!! とか言われたらどうしようか
と思ったぜ。俺は半ば本気でそう思いながらも煙草の箱を取り出して、一本加えるとライターで火をつ
けた。
「なんで魔法で火をつけないのよ、あんたなら呪文詠唱なしで火ぐらい出せるでしょ」
「めんどくせぇ」
シャリーナの質問に適当に答えると俺は煙を吐き出した。すると、後ろから誰かが肩を叩いてきた。
「君には煙草はまだ早いんじゃないですか?」
そこには一人の優男が立っていた。青い髪が肩まで伸びていて、眼鏡をかけた線の細い男だ。
「ウゲッ!! 鏡志じゃん!!」
シャリーナが明らかにいやそうに言う。
「先生をつけないさい」
コイツは木戸 鏡志、魔法学校の教師だ。俺はコイツが嫌いだから別に覚えなくても
いいぞ。
「私の生徒の前では喫煙はやめてもらいたいんですが」
鏡志が眼光の矛先を俺に向けなおす。俺はわざと大げさに煙草の煙を吐いてやる。そしてガンを飛
ばすように睨みつけた、だが、鏡志はすぐに目線をそらせた。
「危ない危ない、君は呪術と幻術に関してはエリートでしたね」
教師は目を合わせないでそういった。
「全てにおいてエリートだよ」
俺はそういうと、足場に転送用の魔方陣を出現させる。そして、俺はシャリーナと一緒にその場から
文字通り消え去った。
転送先は近くの商店街の中だった。シャリーナは足で地面をバンバンと踏み荒らして怒りを体現して
いた。
「あの人を見下すような目が気にくわないのよ!!」
同感だな。エルルや光喜に聞いたら優しい先生らしいが、あのバカ丁寧な話し方とかは俺も嫌いだ。
「絶対見返してやるんだから!!」
シャリーナが珍しく燃えている・・・。そういえば、鏡志はたしか火属性だったか・・・。なるほど、そうい
うことなら、マジメに修行に付き合ってやろうじゃねぇか。
新キャラの鏡志ですが、出しても出さなくてもどっちでもいいかも知れないキャラで、また出てきたときには、アッこんな奴いたな〜、ぐらいで構わないです。