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    偽者?

 その朝、悠夜は巨大な黒いサメと不思議な女性の夢を見た、『私の名前を呼んで・・・』。

 その言葉にもやもやした気持ちで起きたとき、窓から悠夜をアニキと慕う鮫島(さめじま) (タケシ)が現れた。

「俺は心が広いんだ・・・用件だけは聞いてやる」


 タケシと寝ぼけ眼の光喜を1階のリビングに引きずり降ろしてきて、俺は今、リビングとは

カウンターで仕切られたキッチンにいる。

 リビングの壁には俺の黒いコートがかけられていて、今の服装は真っ黒のシャツと、同色

の長ズボンだ。別に黒以外の服を持っていないわけじゃないぞ、ただ、陽河家の正統後継

者は黒い衣服に身を包むという、訳の分からんしきたりがあるためそういう服が多いんだ。

まぁ、俺自身も黒は嫌いじゃないからいいのだが、夜道ではほとんど透明人間状態だよ。


「いや、アニキがヤクザ組を1つ壊滅させたってうわさを聞いたんで」


 タケシがやけにニコニコとしながらいう。俺はリアクションもそこそこに、白い質素なエプロンを

つける、今の服装で唯一黒くない部分だな。


「それにしても、すごいっすよね〜。今世紀最強の魔術師と呼ばれた男・・・もう、アニキの名前

を知らない奴はもぐりっすよ!!」


 何のもぐりなんだよ・・・。俺は心の中でそうツッコミながら卵を割った。


「光喜、皿とってくれ」


 テーブルの前でうとうとしている光喜に呼びかける。適当に仕事を与えていないと二度寝する

からな。光喜はゾンビのようにヨタヨタと食器棚の方に歩き出し、なぜかラーメンのどんぶりを出

した。おいおい、それに目玉焼きを入れるのか?


「――そんとき、俺は言ってやったんすよ、お前らなんてアニキからしたら昆虫以下だって!!」


 タケシよ、まだ喋っていたのか・・・。3分前からリプレイしていただけると助かるね。いや、やっ

ぱくだらない内容らしいのでリプレイはいらんか。

 そんなことを考えている間にも、光喜は冷蔵庫から牛乳パックを取り出してラーメンのどんぶりに

注いだ。そして、ファラオの秘宝を持ち帰るミイラのごとくテーブルへと帰っていった。


「――やっぱ喧嘩は男の華っすよね!!」


 タケシがまだ喋っていた。ほとんど聞いてないって・・・。


「俺は江戸っ子じゃねぇよ・・・」

「エドッコってなんですか?」


 タケシがポカンとした顔で聞いてくる、そうだな、この世界には江戸はなかったんだな。


「パスタの名前だ」

「パスタ?」


 説明が面倒なんで間違った知識をタケシに植えつけた、こんな感じでタケシの頭の中には、存在

しないはずの雑学が溜まっていっているのだ。そんな話を繰り広げているうちにも、光喜はラーメンの

スープを飲み干すように牛乳を飲んでいる。我が弟ながら、こいつはどんな寝ぼけ方をしているのだ。


「それで、結局は世間話をするだけのためにここに来たのか?」


 俺がそういうとタケシが思い出した様子で顔を少し上げる。


「いや、実は変な情報を耳にしたんで・・・」


 俺は焼きあがった目玉焼きを自分で出した、ラーメンどんぶりではない皿に移し変えながら聞いてい

た。


「最近、アニキの名前をかたって冒険してる奴がいるみたいで・・・」

「俺の名前を?」


 俺は目玉焼きの位置とベーコンの位置をそろえながら言った。はて、俺の名前を名乗って得すること

なんてあるのか? 別に陽河悠夜という名前だからって、ダンジョンのモンスターが宝箱の引換券をくれ

るなんて経験ないんだがね・・・。


「そんな不届きものを野放しにするわけには――」

「ほっとけ」


 俺は適当にそういった、別に俺は困らん。そりゃ俺の名前で悪事を働かれるのは迷惑だが・・・冒険

するくらいどうってことない。


「でも、そいつ、黒い長髪で背中に呪印があったっていう情報もあるんすよ!!」


 タケシがそういったとき、目玉焼きの皿をテーブルに置いた状態で固まっていた。

 まさか、奴が・・・。いや、奴だとしても、なぜ俺の名前を名乗る必要がある!? 奴の名前は知らんが、

偶然同姓同名でしたなんて洒落にもならんオチがあるはずがない。

 だとしたらなぜだ? もしかして、俺を誘っているのか・・・。あの日の復讐のチャンスでも与えるとでも

言うのか。


『・・・俺が憎いか? 憎いなら、殺してみな』


 また奴の言葉が頭の中で木霊する、どんな声だったかももう覚えていない・・・。どんな顔だったかも覚

えていない・・・。あの時は分からなかったが、俺はあの時、呪印の他にも忘却術をかけられていたんだ。

だが、忘却術をかけられたのに、なぜ奴の言葉を思い出せる・・・。答えは簡単だ、奴が忘れさせなかっ

たから。それは、なぜだ・・・。

 いろいろと考えていると、急に頭から何か液体をぶっ掛けられる。俺が現実に目を向けたときに始めて

見たものは、ラーメンのどんぶりだった。


「悠夜、考えすぎ」


 光喜も目が覚めたようでいつもの調子で言う、こいつは、あの場には居合わせなかったんだよな・・・。


「光喜・・・わりぃ、サン――」


 俺は光喜に礼を言おうとしたとき、自分にぶっかけられた液体の匂いを嗅ぐ。そして、俺の頬が痙攣する

のが分かる。光喜の顔も若干引きつっているようだ。


「てめぇ!! なに牛乳ぶっかけてんだ!!」

「ふぇ!? だってだって、悠夜が〜」


 俺は光喜の頭をわしづかみにすると、アイアンクローをしながら光喜の頭を上下左右に振り回した。


 とりあえず、光喜へのお仕置きも済んだので、俺は浴室へと足を伸ばした。シャワーの水温が暖かくなる

のを待ち、ちょうどいい温度になってから壁に取り付ける。


「たく・・・光喜の奴・・・」


 そういいながら、長い髪をかきむしる。ふと自分が移されている鏡に目をやった。俺の肩から肘との丁度

中間点ぐらいまで、黒いツタのような模様が書かれていた。足はふとももぐらいにまで伸びていて、その模

様は、背中にかかれた1つの不可思議な文字のようなものに繋がっている。

 最初はこの文字しかなかった、俺が強力な呪術や魔術を使うたびに、そこからツタ状の模様が伸びてく

るのだ。

 奴につけられたもの・・・。俺が一人前の呪術師となって調べたところ、これが俺の体中を覆い尽くしたと

き、俺の理性は崩壊するらしい。そして、この文字のようなものの意味は『全てを奪う』という意味らしい。

 これの解除方法は1つ、術者が決めたキーワードを言えばいい。


「奴が・・・ついに奴が・・・」


 俺は肩の呪印をなでるように触りながら自分の中で疼いている殺意の火種を沈めた。

特に回想もなく、悠夜の因縁の相手の話が来ていますが。まぁ、そのうち回想みたいなのをする予定です。

正直、なくてもいいかも〜、見たいないい加減な気持ちもあるんですけど・・・。

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