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    撃退?

 エルルと2人で出かけた悠夜、だが、その途中で事務所を壊した恨みがあるヤクザたちと、お礼参りにきた亜人の群れに出くわした。

 シャリーナと光喜の力によりなんとかその場から逃げることができたが・・・

「はぁ・・・はぁ・・・あの人たちなんだったんだろうね?」


 エルルが息を切らしながらそういった。俺たちは先ほどの場所から少し離れた路地裏に来ている。

エルルの腕の中にはあの黒猫が抱かれていて、エルルの話によると、あのヤクザのような奴らは

エルルの抱いていた猫を、事務所で飼っていたが逃げ出した猫といって引き取りにきたらしい。

 そして、エルルが猫を渡そうとした瞬間に俺の神がかり的なシャイニングウィザードが炸裂したとい

うわけだ、いやはや、なんともよく出来た寸劇だな。


「この猫、返してこないと」


 そういいながら、自分の腕の中でゴロゴロと喉を鳴らす猫の頭をなでる。近くで見ると毛並みのキレ

イな黒猫で、赤い首輪には鈴の変わりに六角形の真っ青な宝石のような石がつけられていた。

 俺はおもむろにその宝石を猫の首輪からはずして眺めた、宝石の側面には日本語でも英語でもない

やたらと角ばった箇所の多い文字列が書かれている。


「いや、この猫はあいつらの猫じゃないだろう」


 俺が言うとエルルは首をかしげて理由を尋ねてきた。


「これは伝令用の魔術がかけられてる、あいつらが魔法を使えるとは思えんしな」


 全て俺の勘に基づいた意見だ。宝石の側面の文字を指でなぞってみると、何箇所か傷で文字が

消えかけている場所があることに気が付く。こりゃあ、中に込められたメッセージを解析できないかも

しれないな。

 そんなことを考えながら宝石を見ていたとき、猫はエルルの腕から逃れて裏路地を疾走しだした。



「あっ!! 待って!!」


 エルルはそういいながら猫の後を追っていく、仕方がないので俺は宝石をポケットに入れて一緒に

走り出した。

 しばらく走った後、建物の角を曲がったとき、猫は皿に入れられていたミルクを飲んでいた。その猫

の目の前には牛乳パックを片手に持ったメアがいた。


「・・・・・・飲む?」


 つかれきった顔をしていた俺を見て牛乳パックを差し出す。俺を猫と同じ扱いにするのはやめて

くれないか。


「お前の猫なのか?」

「・・・・・・ミケ」


 別に名前は聞いていないのだが・・・。


「・・・・・・野良」


 メアの口からやっと本来の回答が帰ってきてホッとする。こいつとはなかなか会話のペースが合わな

いよ。

 そんなこんなしているうちに、路地裏の向こう側から無数の足音が聞こえてきた。


「もう追ってきたのか・・・仕方ねぇ、出迎えてやるか」


 俺はそういうとミルクを満足気に飲んでいる猫を見ながら、嬉しそうな笑みを浮かべていたエルルに耳

打ちする。


 俺は一人で路地裏に立っていたメアはさっさと建物の裏口から中へ入っていった、そういえばあいつの

家がどこか知らないな、ここに住んでいるのか? そんなことを考えながら自分の腕の中にいる黒猫に目

をやる。現在の状況を考えてあいつらの目的はこの猫なんだろうな。


「アニキ!! 居ましたよ!!」


 声が聞こえて前方に目をやると、すでに5人ほどの黒服の男たちが拳銃を構えて立っていた。

男たちは俺を見ながらジリジリとこちらににじみ寄ってくる。


「ちょっと待ってくれ!! 参った、この猫は返すよ」


 そういうと猫をその場に放した、猫は俺を振り返りつつもアニキ分の男の元へ駆け寄っていった。

男は猫を抱き上げると、真っ先に首輪につけられていた青い宝石を確認しニヤリとした笑みを浮かべた。

そして、予想の範囲内であったが俺に向かって銃を向けた。


「やっぱ見逃してはくれないか」

「当たり前だろうがよ」


 そういってアニキ分の男が引き金に指をかけたとき、猫の体が光に包まれる。

 男たちはその光に驚き一瞬目をつむった。その間にも、光の中から猫ではなくエルルが現れる。

 これがエルルの能力、メタモルフォーゼ、要するに変身能力といったところだ。

 エルルの手には俺が店で買った酒の瓶が握られていた、エルルはそれを男たちにぶっかける。


「くそ!! だましやがったな!!」


 男はそういいながらエルルに銃を発砲した。

 ガン!! という金属音が当たりに響く、銃弾はエルルの皮膚を貫通せずに兆弾したのだ。


「バカな!!」


 男が驚いたように言う、エルルは姿はそのままだが、皮膚を鉄のように硬く変化させていたのだ。

そして、俺は火のついた煙草をその男へと投げ捨てた。


「ぐぁああああああ!!」


 アニキ分の男とその隣の男が炎に焼かれて悶える。そして、消火しようとしていた残りの男たちは

目を丸くした。

 アニキ分の男が持っていたはずの青い宝石は、手榴弾に変わっていた。これはエルルの能力ではなく

俺の幻術で手榴弾を宝石に見せかけていたのだ、相手が魔法の使えないような人間ならば手触りなども

幻術でごまかすことが出来るのでとても楽だよ。

 俺がエルルの手を引いて建物の陰に隠れたとき、裏路地に爆風が吹き荒れた。


「少しやりすぎたかもしれないな・・・」


 俺は新しい煙草に火をつけながらそういう、まぁファンタジーの世界だ、また教会で蘇生してくれや。

俺は心のこもっていない黙祷を捧げると爆風で飛んでいたエルルの帽子を拾い上げる、炎で燃えて

穴が開いているうえに汚れまくっていた。

 ため息をつきながら近くにあったごみ置き場に帽子を捨てるとエルルの頭をなでる。


「悪いな・・・これから、新しいの買いに行くか」


 俺がそういうと、エルルは軽く頷いた。その顔はどことなく赤くなっているのは、作戦の緊張からだろうか?

それとも、爆発の熱のせいか?

 そんなことを考えながらも俺はエルルと一緒にその裏路地を出て大通りに面した道に出た。

 そして、もさもさとした毛並みの亜人とでくわした。

 そういえば、おっちゃんの他にもワンちゃんがいたんだったな・・・・。

 まぁ、ヤクザといっても一般市民なんで悠夜からしたら、ただめんどくさいだけの敵です。

 メアが出てきたのには、意味がある・・・・といいですね。

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