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戦いのなかで

作者: 小鳥遊 貢

意味分からないかもしれませんが、読んでください。

ドーン

爆音とともに右腕がはじけ飛んだ。

流れだす血をとめ、胸に抱くように持っていたアサルトライフルを左手で強く握り締める。

まわりにはたくさんの同胞が倒れている。

皆泥だらけで、血で赤く染まり、たいていは体のどこかがなくなっていた。

俺は守っていた。意味もなく戦争をはじめた国を。

俺は信じていた。存在し得ない信念を。

頑なに心を閉じ、人を殺すという重圧を抑え、自分を守るこの銃の引き金をひたすら絞った。

何人殺したか?とは考えられなかった。

考えたら、その思いに囚われ、内側から崩れ去ってしまう。

失った右腕の痛みも感じなくなった。

これが米軍で使われたモルヒネ中毒の長所。

痛みも感じず、何も考えられない操り人形。

だが、それを何千万人も投入した米軍は、今や数千人しか残ってない。

ドーン

またどこかで一つのともしびが消えたであろう音を、小耳に挟みつつ、堀から顔を出し、迫る歩兵に弾丸を打ち込み、前列の数人を倒す。

せまる敵軍と距離をとるため、後退をはじめる。

タイミングをはかって、堀から飛びだし、敵に背中を向けつつ走る。

ダタダダダダダダダ

敵の掃射が始まる。

一つ後ろの堀に飛び込むまでに、うち一つが脇腹をかすめ、少しの肉をえぐった。

堀のなかに倒れこむと、先程の自分と同じように銃を抱えた少年兵がいた。

五体は揃っていたが、頭から血が流れていた。

俺とは違い、歯をがちがちならして震えている。

「敵が近い。後退するぞ」

少年はコクッとこうべを垂れた。

その時見つけてしまった。

彼の背中に突き刺さった鉄片を。

きっと爆弾の破片であろうそれは、命を奪うのには十分である。

「やっぱ動くな。」


少年はまたコクッとこうべを垂れた。


俺はまた堀から出て、一つ後ろの堀に飛び込む。

そこにいた先客は、老人だった。

アサルトライフルは握っているが、煙草を葺かし、あきらか戦う気などない。

「じいさん、逃げたがいいぞ」


「まだまだ若いものには負けんぞ。」


コロンッ

手榴弾が堀に転がってきた。

振り返りもせず次の堀へ走った。

ちょうど次の堀に飛び込んだとき後ろで爆音がした。

同時に赤い飛沫とやわらかい塊が降ってきた。それが何かは考えなかった。


次の堀には、誰もいなかった。

安堵の息をついた。

ここが自分の墓だと思った。

やっと死ねると思った。

死ぬ間際の走馬灯を、自分が例外でなく見ていることに気付いて、苦笑がこぼれた。

家の前で俺の家内が笑っていた。俺の娘が笑っていた。

涙がこぼれた。

今そっちに行くよ。

心の中でつぶやき、俺は目を閉じた。



その後、その兵士は堀に投げられた手榴弾によって爆死。

彼ということも気付かれず、放置され今もその辺りに骨が残っている。

お読み頂きありがとうございました。感想をいただけるとうれしいです。初短編なので、改良点などもお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
[一言] 短い文章に 詰め込まれた1人の人生と一つ一つの命が なおさら 強烈なインパクトを与えるカンジがしました。 戦争って ちっともきれい事じゃないですもんね… また期待しています。ありがとうござい…
2007/06/08 21:45 宮薗 きりと
[一言] 手軽に読めて良かったと思います。あと、個人的には長かった方が良かったと思います。
[一言] 内容は伝わりましたが、擬音のカタカナ書きは 臨場感を失う感じがしました。
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