#7
《菜月の家、浴室》
夕食を終えた私は自宅に戻ってきていた。ただし、自警団である先輩も一緒だ。ミミちゃんも長期間一人には出来ないということで、一緒に来ることになった。
私とミミちゃんは一日の汗を流すためにお風呂に入ることにした。今はミミちゃんの頭を洗ってあげている所だ。
「ミミ、こんな風に誰かとお風呂入るの初めてだよ♪」
彼女は気持ち良さそうに目を細めながら話す。彼女の黒髪は毎日手入れが行き届いているようで、艶があり、サラサラしている。
話からして小さい頃も先輩とは一緒に入ったことは無いのだろうか?
「そうなの?お兄さんとは?」
私が尋ねるとミミちゃんは此方を向いて
「無いよ?お姉ちゃんはあるの?」
「えっ!?それは流石に・・・」
ミミちゃんはじーっと此方を見つめている。これは答えるまで待ってそうな気がする。
「・・・無いよ。だから安心」
「じゃあお姉ちゃんとお風呂に入ったのはミミの方が先だね!!」
ミミちゃんは嬉しそうにしっぽを振りながら言う。
というか、何れ先輩と入ることに彼女の中ではなってるっぽい。これは早急に誤解を解かなければならない。
「いや・・・これからも無いよ?」
私がそう言うとミミちゃんは首を傾げながら
「どうして?入りたくないの?」
無邪気な子供の問い掛けは時にナイフのように鋭い。
「・・・女の子と男の子は一緒に入らないものなのよ」
とりあえずこれで誤解を解ければいいのだが、ミミちゃんを傷付けずに済む言葉を探していると、
「っ!?」
ゾクリと、背筋に悪寒が走った。
「(・・・今のって、殺気・・・?)」
一瞬あの幽霊青年かと思ったが、彼からそんな様子は感じられなかった。天井から落ちてきた水滴が背中に当たっただけかとも思ったが・・・
「・・・そろそろ上がろうか。ミミちゃん。あんまり長いと先輩が心配するし」
やはり違う。この生々しい空気と視線、気のせいとは思えない。私は早めにお風呂を切り上げることにした。彼女に危険が及ぶことだけは避けなければならない。