#4
スローペースで
「時代はツチノコだよね!!」
あたし『津室 美紀!!』バリバリ現役女子高生。因みに18歳。んで、なっちゃんの親友である!!いや、なのだっ!!
「…いきなり何だ?美紀…ははあ?さてはまたテレビに感化されたな?全く」
この知的タイプのメガ姉さんはさやのん。本名は『禄宵 鞘乃』でクラスメートであたし達、鎖雛新聞部の部長さんだ!!同級生が部長なのは単に三学年が居ないからです!!
「うん!!だからツチノコ探そ~?焼いて食べよー?」
「いや、食うのかよ」
よっし!!今日も掴みは絶好調なり。快晴なり。
「えっへへ~。軽いジョークだよ。カナディアンジョーク☆」
「何だカナディアンジョークって…と言うかどの辺までがジョークだ?」
む?やれやれ。理解力が無いぜぇさやのんは…
「したかないなあさやのんは、今回は特別におせぇてしんぜよう」
「『仕方ない』な」
っ!!?
「かっ噛んだだけだもんっ!!」
「まあまあ、弁明は良いから、教えてくれ」
もーっ!!さやのんはいっつもいじわるな指摘ばっかりするんだもんなあー…まあいいや。
「どの辺って…焼いて食べよーがだよ?」
どんがらがっしゃーん!!
そう言ったらさやのんが椅子から転げ落ちた。
「…さやのんだいじょぶ?」
「大丈夫かだと…?その言葉そっくりそのまま返してやる…あのなあ美紀…ツチノコってのは空想上の生物であって…」
「でもなっちゃん知ってたし…」
「…は?」
「だから、オカルト嫌いのなっちゃんがすごく詳しく知ってたから居るのかなあーって」
「ほう?で?その詳しい情報ってのはどんなんだったんだ?」
☆回想だよ☆
「ねえなっちゃん、ツチノコって知ってる?」
「胴の膨れた蛇のような生物よ。最古の記録では縄文土器の壺の縁によく似た生物が確認されていて…」
「ありがとう!!」
「いや、まて、その顔は理解出来てないからやめとく。ぶっちゃけると居るか居ないかも定かじゃない妖怪の類みたいなものよ…ってもう居ないし…最後まで聞いてたのかしら…?」
☆回想終わり☆
・・・やべぇ忘れた!?えっとーどんなだったかなあー…?
「…ど、胴が膨れてて…じょーもん土器でー」
「いや…意味がわからんぞ…」
「縄文土器の縁にツチノコに似た生物が確認されてるんだよ」
おお!!この声は!!
「やあ隆。1日振りだな」
「1日振りって…わざわざ言うほどでもないんじゃ…」
彼は『月見里 隆。』月見里でやまなし、隆でゆたかって読む変わった名前の人。彼も同じ部員で…
「よっ!!新聞部期待のソープ!!」
「そりゃ石鹸だ。ホープな、ホープ」
「そんな…僕なんかがホープだなんて…」
なんかなよっとしてるけど物知りで新聞部きっての情報通なのだ!!
「ゆたんぽもツチノコ探そう?」
「えっ?でも伝説上の生き物だし…そもそも妖怪みたいな類のものだから…」
にゅー…ゆたんぽはいっつもノリが悪いなあ…
「いや、良いんじゃないか?面白そうだし」
おおっ!!流石は我らがさやのん部長!!わかってらっしゃる~ぅ♪
「えぇっ!?鞘乃まで…」
「(どうせ行くことになるだろうし…面倒だから早く済ませたい)」
「(そっ…そうだね…わかった)」
二人で何コソコソ話してるんだろう?んーまあいいや。
「そいじゃあしゅっぱーつっ!!」
☆捜索中、茂みの中☆
「えーと…?胴が膨れてて蛇みたいな…」
うーん…居ない。やっぱりそう簡単には見つからないよね…
「さやのん居たー?」
「うんや。まあ居てもすばしっこいし跳躍力も相当なものだそうだ。早々捕まらないだろ」
そうなんだ。なんか話もだけど難しそう…ん?
……確か胴が膨れてて蛇みたいなもの…今、私の目の前には正にそんな感じのものが映っている…
「…ツチノコさん?」
『っ!?』
ガササッ
「あっ待って!!」
突然声を出したので驚いたのかツチノコさん?は茂みの奥へと逃げてしまった。早く追いかけないと!!
私はツチノコさん?の逃げて行った方向へと追いかける。
確かに素早い。でも!!
「こちとらお姉ちゃんに毎日鍛えられてるんだから!!」
追いかけられない速さではない!!これはきっとツチノコの正体見たりって…
「ほわっ!?」
運命のいたずらか石に躓いてしまった。これはコケる!?
「にゅうああーっ!?」
「は…?ちょ!?待ああああーっ!?」
ゴシャ
あててて…何かにぶつかってしまったらしい…と…視界が逆さまに見える。
「…痛たたたた…いきなり何なんや…っておわーっ!?」
おお、何にぶつかったのかと思えば、人間だったのか。
「あうー…ごめんなさーい!!躓いて止まれなくて…」
「あ…いや…それはええから…」
ああ…目を反らされてる…やっぱり怒ってるよなー…
「あの…」
「いや…だからっ!!その…体勢…はっ…その…せやけど大声は堪忍してほしいっちゅーか…」
???
「…えっとー…よく聞こえないんだけどー?」
「ぱ…ぱ…パンっ…」
「ああ…ツチノコさんにあげよーと思ってたんだけどお腹空いてるならー」
「パンツが見えるっちゅうとるんや!!」
・・・・・・・
「はへ?あ…ああーっ!!これはどうもご親切に」
よくよく考えると視界が逆さまということは私は逆さになっているわけで、どうやら木に背中を付けて、お尻を青年に向かって突き出したような格好になっていた。ミニスカートだしこれでは確かに見える。
「…ご親切に…って…大声とかあげへんのか…?」
「?何で?」
「はあ?何でってそりゃ…」
「悪いのは私だし、親切に教えてくれたんだもん。大声なんてあげないよ?」
「…変わっとるな…お前」
変わってる…?
「まあええわ。ってヤバッ!?隠れろ!!」
「にゅ?」
青年は素早く私の手を取ると、茂みに隠れる。
彼は暫く様子を窺っていたのだが
「…ふぅ…危ない危ない…」
そうポツリと言うと安堵の息を吐いたようだった。
「そういえば君もツチノコさん探してたの?」
「ツチノコさん?あーまあそんなところや」
何と!!私達以外にもツチノコさんを探している人が居たとは!!こいつはうかうかしてらんねぇぜ!!
「やっぱり!!でもあたし見たんだよ!!ツチノコさんっぽいもの!!」
「さ…さよか…それは良かった。案外早く見つかるかも知れへんな」
「へへっ♪君には負けないかんね!!」
私は宣戦布告をすると立ち上がる。
「そいじゃ、またね!!」
「お…おう」
私は彼に別れの言葉を言うとみんなの所に走っていった。
「行ったか…もう出てきてええぞ。野鎚」
☆部室☆
「まあ結局見つからないわな」
さやのんの気の抜けた発言に私は反論を返す。
「見つけたもん!!捕まえられなかったけど!!」
「それでは証拠も無いのだしスクープとして薄いだろう?信憑性が無ければネタにはならん」
「ううっ!?ゆたんぽはっ!!ゆたんぽは私の味方だよね?」
「えっ!?ああ…僕も信憑性が無いと…その…ダメなんじゃないかと思うよ?」
「…う…」
「う?」
「裏切り者ーっ!!」
ゆたんぽまで敵だったなんて!?
「もういい!!とっときのネタ用意してたけど二人には教えてあげないもん!!」
~帰り道~
一応大事を取って剣道は休むことにした。私としては全然問題ないのだが、先輩…と言うか師範が自警団に所属しているので先日の事件は恐らく筒抜けだろう。そんな状態で顔を出したら心配をかけてしまうと思うのだ。
…そういえば美紀は何でツチノコを知ってるかなんて聞いてきたんだろう?
あの子の事だから信じてたりする可能性はあるけれど…ああ、そういえば新聞部に所属しているんだったっけ。まさか新聞のネタにする気なのか…?
「いや…まさか…ね」
流石にそれは無い…とは言い切れないかも…
「鞘乃なら何だかんだ言って乗りかねないわね…」
「乗るって何に?バスに?」
「なにゃあっ!?」
突然の声に驚いた私はバランスを崩す。
「っ!!」
私は左手を地面に付いて、身を翻す。そのまま着地すると声の主をキッと睨み付けた。
「…前世はネコ?」
「黙れ。変態。と言うかこのやり取り前にもやった」
「あはははは。そうだっけ?て言うか見せるの好」
「ていっ!!」
私は笑う変態の体に思い切り回し蹴りを喰らわせた。
「おも゛ぁっ!?だっだって今日も短いスカートを履いているみたいだし」
「好きなわけあるかっ!!これは指定の制服よっ!!」
「まあまあ落ち着いて。あんまり大きな声出してると変な目で見られるよ?」
変な目…?ああ…
「その設定まだ続けるのね…」
「設定じゃないよ!!まごうこと無き事実だよ!!」
「はいはい。そういうことにして置くわ。で?今日は何の用?えーと…」
流石に外で変態変態連呼するのもどうかと思うので適当に周りを見渡してみる。と、犬小屋があるのが目に止まった。
「ポッキー」
「今、思いっ切りあの犬小屋見て言ったよね?」
「変態より良いでしょ?それにほら、あの犬シベリアンハスキーよ?」
「…だから?」
「光栄でしょ?」
「何で!?全然光栄じゃないよ!!」
お気に召さないらしい。まあ当たり前か。
「ならどんなのが良いのよ?ポッキー」
「もうそれで行こうとしてるよね!?菜月ちゃん!!」
「え?あーうん。ちょっと気に入ったかも」
確かに発音し易い破裂音だし、親しみやすい名前ではある。
「で、でもなんか犬っぽい名前って言うかさあ…」
「犬じゃ無くて人として見てもらいたいってこと?」
「えっ!?そこからなの!?」
純粋なヤツだ。なんかちょっとイジってみたくなった。
「御理解頂けて無かったのね。ちょっとがっかり…」
「幻滅された!?」
「残念…もうお別れね。でもせめて名前位は覚えておいてあげるわ。ポッキー」
「もう確定事項なの!?」
「冗談よ」
「…え?えええええっ!?冗談って…全部?」
…全部信じたのか…こいつ…
「そう。全部よ。ポッキー」
「全部じゃないじゃん!?」
「じゃあポッキー(仮)で」
こいつには軽いジョークすら通用しそうにないな。
「仮って…もっとまともな名前にしてよ?」
「考えて置くわ。で?今日は何の用?」
話が一段落した所で、話題を元に戻す。
「今日は…と言うか…前回もなんだけど…」
ああ…そういえば有耶無耶になったんだっけ…
「それで?まあこうして二回も来る位だしあなたにとっては重要なことなんでしょ?」
彼は神妙な面持ちで頷く。
「菜月ちゃん…一緒に暮らそう」
・・・・・は?
「はあーっ!?ちょっ!?冗談…よね?」
いきなり何を言い出すんだこの男!?
「冗談でこんなこと言わない…本気だよ!!僕は!!」
冗談じゃ無かった…ってちょっと待て…本気って…これじゃあまるで…っていうかどう考えてもっていうか!?
「あ…いや…その…いきなりそんなこと言われても…」
あううー!?何だか顔熱いし…もしかしなくても私真っ赤?こんなやつに?
「菜月ちゃん!!僕の目を見て!!」
彼は私の肩を両手でがっしりと掴むと、強引に私の体と自分の体を向き合わせる。彼の顔がすごく近い…
「だって…これってどう考えたってプ…プロポーズなんじゃ…」
「…プロポーズ?何それ?」
一瞬で場の空気が冷めた。
「…違うの?」
何聞いちゃってるんだ私?
「僕は、君の事、心配だし…近くに居られるならその方が良いかなって思ったんだけど…って菜月ちゃん!?何で無言で鞄を振り上げて!?」
何で…だと?
「…知るかあああああああああああーっ!!」
次の瞬間、真っ赤になって涙目になった私がこの最低男に制裁を加えたのは言うまでもない。
次位には動かしたいですねー