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#3

さて三話目です

{鎖雛・病室}


救急車で病院まで運ばれた私は病室のベッドの上にいた。まだぼんやりしているのか白塗りで冷蔵庫付きの棚にテレビしかない殺風景な病室の景色は霞んでいる。

と、そこへ、


「はあい♪気分はどう?」


眼鏡でスタイルの良い女医が笑顔で私に話しかけて来た。見知らぬ人物ではない。と言うか私の主治医だったりする。


因みに彼女の名前は…知らない。


「悪いに決まってるじゃないですか。先生。後、不便なのでいい加減名前教えて下さい」


この医者じゃ無かったらモデルが芸能人でもやってそうな美人女医…確かに私の主治医なのだが…にも関わらず


「だーめ。乙女のヒミツを暴こうなんていけない子ね?」


この通りわけのわからない理由で教えてくれないのだ。因みに、私の通う学院の保健の教師も務めていて通称『保健医』の愛称で親しまれている。


「と言うかなんで先生がここに?」


「愛しの菜月さんの危機に私が駆けつけないでどうするのよ!!駆けつけないで何が」


「とりあえず『愛しの』は要らないと思います」


冷めた目で告げる私に対し、彼女は


「まあ!!菜月さんってば本当にツンデレね?照れなくても良いのにぃ~」


「照れてません」


「菜月さん冷たい!?でもそこがいいっ!!」


ダメだ…この人。


「で…?私は何時解放されるんですか?」


「自己を解き放つのね?菜月さん!!大丈夫よ。先生が受け止めてあげるわ!!さあ遠慮せず私の胸に」


「グーでいきますよ?」


流石に身の危険を感じたのか先生は医師の顔に戻る。


「あなたの精密検査は何時も通り私が行う。異論は無いわね?」


「どうやって話を取り付けたかは知りませんけど、その方が良いのは確かですね」


「まあ、私としてはあなたを一般の医師に診せるわけにはいかないしね」


これは彼女なりの主治医としての意地もあるが…他の理由もある。


「丁度定期検診も近かったし好都合よ。薬も出しとくわ」


彼女はドアに錠を掛けると手近な椅子に座り準備を始める。


「…まあ、良くなってることは無いと思いますよ。多分」


「私が居る限り…あなたを死なせはしないわ。絶対に」



{鎖雛・自警団事務所}


自警団では数時間前に発生した事故の調査が行われていた。この手の事故はこれで三件目。しかも短期間ともなるとただの事故として処理するには不可解な点が見えて来る。


「此処まで来ると…流石に事故とは思えないな…」


自警団所属の大学生、『神無月 修代志』は他のメンバー同様、事故に関しての調査に参加していた。


三件の事故には妙な共通点がある。


一つ目、死亡推定時刻の矛盾。運転手は見るも無惨な姿になった者もいれば、余り外傷が見られない者もいた。惨い姿になった者は明らかにそれが死因と考えるのが普通だが、司法解剖の結果運転手は共通して、外傷は死因に関係ないことが判明した。傷が出来た時間と死亡時間が一致しないのだ。


二つ目、死因。直接の死因は三人共心臓破裂が死因と判明したが、それにしたって立て続けに三人が心臓破裂などという偶然があり得るのだろうか?


そして三つ目…これが俺にとって一番気になるのだが…


「全ての事故に『藤咲菜月』が遭遇している…」


それも三件目は直接の被害も被っている。これは単なる偶然か?


「…この短期間で三度も命に関わる事故に遭っている…」


何だか嫌な予感がする…



「よう!!調子はどうだ?修代志くん」


後ろから先輩に声を掛けられた。


「先輩、何時の間に戻って来てたんですか?」


「先輩じゃねぇ。兄貴って呼べ。菜月ちゃんはちゃんと呼んでくれてんだぞ?」


「…それが何の関係が…?と言いますか何時の間に知り合ってたんですか?」


藤咲菜月は俺が師範を務める大学の剣道サークルの門下生である。その関係で彼女と俺とは面識があるが…先輩が道場を見に来た事は無い筈だ。恐らくは今回の事故に見せかけた事件で知り合ったのだろう。


「ちょっとな…それで修代志、この事件…お前はどう見る?」


「どうって…俺達に回ってくる案件ならエクシード犯罪かと…」


俺がそう答えると先輩は満足そうに頷き、懐から煙草を一本取り出し、火を点ける。


「今回の件、オレには心当たりがある」


先輩はそう言うとデスクに一枚の写真を置いた。


「名前は『国木田 史熊。』通称は『Σ』だ。エクシード所持者で爆弾魔なんだが十年前にもエクシード犯罪で逮捕されてる。一年前位に釈放されてるんだが…こいつの能力が生物の体の一部分を…起爆させられるってやつでな」


体の一部分を起爆…?


「…規模を抑えれば破裂程度にも…?」


俺が尋ねると先輩は頷いた。


「どうやら可能って話だ。けどよ…こいつを追うのはちょいと問題があってな…」


「…問題…ですか?」


「ああ…国木田のやつ2ヶ月前に自殺してるんだよ。海に身投げしたって話でな…遺体も見つかってる」


自殺している!?


「…それじゃあ犯行は無理じゃないですか…」


俺の言葉に先輩はだが被りを振った。先輩はにやりと口元に笑みを浮かべると


「いや、仮に国木田が怨霊になってだな…………って修代志くん?」


「ななななななななんっですか?」


「いや…何か…震えてないか?君」


ギクゥっ!?


「…そ…そんな事は…」


「…まあ冗談はさておきって痛ァっ!?何するの修代志くん!?」


俺は先輩に思いっ切り肘打ちをかました。


「良いから…つまりどういう…まさか?」


其処まで言ってから俺はある可能性に思い当たる。


先輩は再度にやりと笑うと


「この写真、ひょっとすると国木田本人じゃ無いかも知れないって可能性があんだろ?」



{鎖雛・国立病院}


「本当に良いの?菜月さん」


「はい。別に目立った外傷も無いですし、病院『嫌い』なので」


私は病院の玄関先でグラマー女医と話している。無論彼女はあの主治医だ。


「ぐすん。せっかくのチャンスだったのに」


「何のチャンスだ何の」


「え?夜になったら襲おうかと」


「精神病院行って来たらどうですか?先生」


冗談では無く本気だから困ったものだ。


「大丈夫。クセになるわよ?」


「ちっとも大丈夫じゃないです」


私は先生の言葉に適当に返事を返す。この人にはまともに付き合ってはいられない。


「私、脱いだら凄」


「脱ぐな。求めて無いから」


体の調子の確認の片手間に先生の対応をしていると突然、携帯のバイブが鳴り始めた。


「菜月さん、携帯持ってたの?番号は?」


「あからさまに番号を聞き出さないで下さい。教えません」


私は着信画面を見ると懐に携帯をしまう。


「出ないの?」


「非通知でしたから。それじゃあ失礼します」


「あ、うん。お大事に~」


私は先生と別れると、改めて携帯を取り出す。この携帯への着信は特定の人物のみだ。


私は着信履歴を呼び出すと先頭の番号へ掛け直す。程なくして相手が出た。


『私よ』


「ごめん…人と会ってたの」


『取りあえず状況報告から…こちらの守備は上々。眞樹も華梨も良くやってくれているわ』


どうやら問題ないらしい。


「わかった。そのまま守備を固めて。此方は此方で戦力を集めて置く」


『あの女は?』


「現在は動いていない…大方、高みの見物って所ね」


『菜月…ごめんね…こっちはそっちに人員を一人も送ってあげられない…』


そんなこと…


「いや、寧ろ今は一人の方が都合が良いわ。元より応援は期待してない」


『私達みたいな組織があんな奴らに対抗するなんて…本当に出来るの…?ましてや…あなたと戦ってまで!!』


「命令は絶対…それにこれだけが…これが私達が呪縛から解放される唯一の方法よ」


『…強いね。相変わらず』


強い…か…


「いいえ…未だにその疑問を持ち続けていられるあなたの方がよっぽど強いわ」


私にはもうそんな余裕すら無いというのに…


ふと、前方に視線を向けると、黒いドレスを着た女性が視界に映った。


「……椿、次の連絡は早いかも知れない」


私はそう言うと通話を切る。すると、黒いドレスの女は私に歩み寄ってきた。


「全く…仮の保護者って言っても、連絡位してくれないと心配するじゃない!!」


「…っ!?ごめん…なさい…」


「……今夜、私の部屋に来なさい」


「はい…」



{黒いドレスの女の私室}


「誰にも気取られて無いわね?」


「はい」


深夜0時、ある建物の一室。私は暗い部屋の扉の前に立っていた。


「菜月、服を脱いで此方へ」


私は言われるがままに衣服を脱ぎ、女の元へと向かう。


女は私の体を満足げに眺めるとサラサラと絵を描き上げていく。


「あなたは私の芸術…あなたの母親と私…そして卯月による合作…彼女があなたを産み、彼があなたを壊し、私があなたを作り上げた…」


女は恍惚の表情を浮かべると私の胸に頬を擦り寄せる。


「はい…」


「時間はかかった…彼女も彼も私を裏切ったけれど…あなただけは違う…あなただけは私を裏切らない…」


彼女はキャンパスに繊細な手つきで色を付けていく…


「あなたは私のキャンパス…あなたに刻まれる全てが芸術…」


彼女は私の体に筆を滑らせる。


「…さて、と…例のエクシード犯罪者だけど…あの事件を知っている…と言うか首謀者に近い人物らしいわ。今頃になってあなたを狙い出した理由は…」


「直ぐに狙うのは得策とは言えません…ほとぼりが冷めてからの方が支障は少なくて済みます」


女は頷くと、一枚の書類をデスクに置く。


「…彼には相応の制裁が必要ね?あなたを狙ったのだから。それも三度も」


「エクシード犯罪者となると自警団が動くと思われますが…」


「寧ろ自警団はあなたに協力してくれる筈よ。ギリギリまで動く必要も無いわ。利用出来るだけ利用しなさい」


「現状を維持…わかりました」


女は私の左手を取るとデスクから立ち上がる。


「観て…この腐りきった世界を…」


私達の眼下には鎖雛の夜景が広がっている。


「あなたはその鎖雛の統治者じゃないですか?」


一瞬で空気が変わる。当人達にしかわからない感覚、切り替えの合図。


「まあ私程の者なら鎖雛の一つや二つ、牛耳れて当然なわけだけれど」


「鎖雛は一つだけなんだけど…」


「言葉の文というものよ。細かいわね」


「そう言う性格なんで」


「…自分の学院の理事長にタメ口って生徒としてどうなの?」


「好きで生徒やってるわけじゃないし…それよりもう良い?服来て帰っても」


「今夜は泊まっていきなさいな。私が許すわ」


「いえ、帰ります。少し用事もあるので」


「…そう…夜になったら襲おうと思ってい」


「冗談と受け取っておきますけど…本気だったら…私の周りにはロクな大人が居ないな…」


女は訝しげに眉を潜める。


「…?それってどういう」


「あなたも彼女も同レベルってことですよ…」

段々と登場人物が増えてきましたね…キャラ提供して頂いた友人等無くしては作れない物語です


本当に感謝ですね

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