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♯1

さてスタートです

誰でも小さい頃は怖いものが沢山あったと思う。夜中のお手洗いとか、夜道、宇宙人、お仕置きとかで入れられる押し入れ。後は…『幽霊』とか…お墓が怖いのは幽霊関係。大抵の人はこういうのが恐怖の対象。でも私は違ったんだ…だって、視えてたから…私が怖いもの…それは…



此処は鎖雛学院。鎖雛って言うくらいだからこの地域を代表するような学院なのだろう。今は昼休みだ。


「ねぇねぇ?この間の特集番組見た?UMAのやつ」


教室では賑やかに談笑が行われている。まぁ私もそんな中に一応居るのだが…に、しても"UMA"……なんてそそられない話題だろうか…話の矛先が私に向かないことを願いたい。


「見た見た!!すごかったよね!!あれ絶対UFOだよ!!」


クラス一明るいであろう『津室 美紀』という女子生徒が話に乗っかったようだ。髪はツインテール。顔立ちは幼く、可愛らしい。なんだか不思議系に分類されそうだ。補足して置くと、私達は高等部2学年である。


「しかし、本当にUFOなんているのか?菜月嬢はそこの所どう思う?」


彼女は『禄肖 鞘乃。』このクラスの知性派副委員長だ。長髪で美形で眼鏡がよく似合っている。と、いうか来ちゃったよ…全く…


「…居ないよ。UFOなんて。と…言うか、私にその手の話題を降らないでって前に言ったよね?第一そんなくだらない事を話題にするあなた達が私には理解出来ないんだけど…?」


『私』こと『藤咲 菜月』は自分の意見ははっきりと言うタイプだ。その上、時々毒舌になる。私の返答には美紀が反応した。


「おお~!!キッパリだねぇ?流石はなっちゃん!!」


そりゃあ降られりゃあ言うだろ…と言うか毒はスルーか。


「でもさぁ、ちょっと怖いよね~?あ、みんなは怖いものとかある?」


美紀が即返答。


「あるある。暗い所とか」


次いで鞘乃。


「お化けとかな。菜月大先生は?流石に怖いもの位あるだろう?」


流石に…まぁしょうがないか…


「おい…私が何時大先生になった?」


「だってなっちゃん頭良いじゃん?学年トップだし。夏休みは期待してますよぉ~?」


「ふむ。大抵の人間にとっては敵でも菜月にとっては武器…いや、友達だからな?」


…敵…か…そんなに嫌いか?あんたら。と言うか友達が宿題ってどんだけ寂しいのよ私は…


「…夏休みは旅に出ようかな…」


『そんなぁ~!?』と声を揃えて言う一同。約一名、鞘乃を除いて。頼る気100%か。


「まあ、それは置いといて!!ほら、怖いもの!!」


美紀が話を誤魔化す。ああ、そういえばそんな話だったっけ。


「怖いもの…そうだな…強いて言えば『人間』とか…」


途端、『え?』と言う顔が並ぶ。面倒だけど説明が必要なようだ。


「ほら、人間ってやることが生々しいじゃない?戦争とか環境破壊とか、裏取引とかは良い代表例ね。それも全部、欲望関連よ。『植民地が欲しい』、『もっと良い環境で住みたい』、『世の中を便利にしたい』、『もっとお金が欲しい』…ほら?全部『欲』でしょ?そう言う時って人間は目的の為なら何だってやるの。現に、そのお陰で地球が壊されてるんだから、正直、生きてる人間程怖いものは無いと思うわけ。わかる?」


『まあ、これは極端なものなんだけどね?』と、付け足すものの、『なんとなくは…』と言う声が大半。


「死人は何も喋らないの。例えば自分に絶対に誰にも知られたくない秘密があったとして、それが2名にバレていたとする。しかも片方は死んでしまったとしようか。死んでいる者には何も口外出来ないけど、生きてる人間には喋ろうと思えば何でも喋れる…ほら、何にも出来ない死者より、人間の方がその人にとってはよっぽど怖い。もっと簡単に言えば人間関係ね。言葉一つで崩れちゃうこともあるし…得体の知れないものより生きてる人間の方がよっぽど怖いって言うのはそう言うこと」


最後を簡単にしたことで、わかってくれれば良いのだが…


「あーっ!!それわかる~!!確かに人間関係って怖いよね?」


あ、わかってもらえたみたいだ。


「難しいしねぇ…相容れない人だって居るし…なる程ねぇ~」


さて、納得して貰えたし、切りの良い所で話は切り上げるとしよう。ここでさっきから疑問に思ってたことを尋ねてみる。


「…で?どうしてみんな私の机に集まってるの?」


一同、声を揃えて。手にはノート。


「宿題教えて~っ!!」


…やっぱりか…


学校を終えて、時刻は間もなく夕方の6時を迎える。何時もなら剣道に行っている時間だ。大学で運営されており、私は神無月師範に稽古を付けてもらっているのだ。まあ、護身用なのだが…とりあえず軽食をコンビニで買って家に帰って来た私は、玄関で硬直していた…


「………………」


リビングに見知らぬ男性が座っている。鍵は掛けて行った筈なのだが…青年はこちらに気付いたらしく、にこにこと話しかけてきた。


「やあ!!僕が見えるかい?」


笑顔で話しかけてくる青年。発言は訳がわからない。バカか?バカなのか?この人。


「うん。はっきりと見えるよ?この不法侵入者さん?」


思いっきり毒を吐く。青年は流石に驚いたようだ。


「え!?本当に見えるの!?…うわぁ…凄いね君!!」


…驚いた…驚く所がまるで違う。バカだ。完璧バカだこの人。


「で?勝手に他人様の家に入って何の用ですか?単刀直入に言いますけど、出てって下さい。出来れば今直ぐ。出てかないなら警察呼びますよ?」


青年は途端渋い顔になる。目は相変わらず笑っているが…青年の容姿は異様だった。何しろ全身が真っ白なのだ。髪までが白と来た。その上冬でも無いのにマフラーを首に巻いている。…顔は悪くないのだろう…多分美形ってヤツだ。私の脅しに、青年は思わぬ返答をした。


「うーん…呼んでも良いけど意味無いと思うよ?多分、僕の姿は見えないだろうし…」


…姿が見えない?何言ってるんだこの人?


「何言ってるの?あなたここに居るじゃない?それとも自分が透明人間だとでも言う気?ごめんなさい。私はその手の話は信じてないから」


青年は目の前で爆笑し始めた。お腹を抱えて笑っている所を見ると相当ツボにハマったらしい。私は笑わせるようなことを言った覚えは無いのだが。


「あははははっ!!良いとこ突いてるけど、ちょっと違うかな?」


オホンと咳きをし、青年は自慢気に話し出した。


「なんと!!実は僕、幽霊なんです!!」


……は?


「……あっそ」


私の素っ気ない反応に自身を幽霊と名乗った青年はガクッと崩れた。

「ちょ…ちょっと~調子狂うなあ~?驚かないの?幽霊だよ?お化けだよ?」


この青年は驚いて欲しいのか?仕方ない。ちょっとは驚いてあげるとしようか。悪い人じゃ無さそうだから満足したら帰るだろうし…


「ふぅん…すごいね」


我ながらなんて感動の無い反応だろうか。そもそも驚くことが無いから、あんまり良い言葉が浮かばないのだ。


「…そっ…それだけぇっ!?」


仕方ないだろ。本心を言えば少しも驚いて無いんだから…よし。この際はっきりと自分の意見を言うとしよう。


「はい。私、先程も言った通りそういった話は信じて無いんです。だから幽霊とか言われても、正直、何の感想も浮かびませんね。まあ証拠があるなら別ですが」


『証拠』と言う発言を受けて考え込む青年。間もなく答えが出たらしく…


「なぁんだ~!!じゃあ証拠を見せれば信じてくれるんだね?」


そう言うと青年の足がカーペットから離れた。そしてそのまま宙に浮かびだす。『これでどうだ!!』と言わんばかしの笑顔を携えながら。


「…マジシャンなの?」


これまた無反応に近い私に青年はガックリと肩を落とし降りて来る。しかし、それにもめげず…


「じゃあこれは~?」


そう言いながら壁をすり抜ける青年。その後、『やっほ~』っと言いながら戻って来た。


「…それ、下準備があれば出来るの知ってるから。まあタネは知らないけど」


また肩を落とす青年。これは流石に信じるだろうと思っていたらしく…今度は深く考え込んでいる。


「あの…いい加減に帰ってくれないかな?さっきから幽霊だって事を証明しようとしてるけど…結局、用、無いんでしょ?今ならまだ通報まではしないからさ?」


…青年に反応は無い…段々腹が立って来た。


「…帰って。悪戯するために来たなら帰って。大体、あんた幽霊って話だけど…この通り触れるみたいだし」


私はぺたぺたと青年に触れる。触れたため今度は流石に気付いたらしい。青年は冷や汗を流しながら苦笑いをしている。


「ま…まぁ待ってよ?ホントに!!決定的な証拠見せるから!!今思い付いたから!!と言うか触ることも出来るんだ…」


…懲りないなあ…この人…


「あのさ?マジで帰ってくんないかなぁ?正直、やっても無駄だし、あなたの話にも飽きてきた…」


もうこんな人に付き合い切れないよ…


「えい」


…青年がまた何かをしたらしい。はぁ…もう反応するのも面倒だ…しかし、そんな風に思いながら私の目に映った光景は…


「……え…?」


何か違和感を感じた。自分の体を見る。私の体の中心に私に向かって突き出された青年の右腕がある。手首の辺りは無い…いや、正確には見えないだけだ。何故なら腕はぶすりと私の体に突き刺さっているのだから…


「…ふぇ…?……」


何これ…どうなってるの?私の体にまちがいなく青年の腕が突き刺さっている…


「………(あ…あ…ああああ…)」


ぞぶり…


青年は更に腕を突き出してくる。腕は音も無く私を貫通した…


「………………」


声が出ない…言い知れぬ恐怖が襲ってくる。間違いなく腕は私を貫いている…だって…確かに感じるのだ…その存在を…私の中に在る違和感を…背筋がぞくりとする。私の中の何かが悲鳴をあげた…そう…『怖い』と…何度も何度もその言葉が私の中で繰り返される…


「…………(嫌…助けて…)」


怖い…怖い…怖い…怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…


「…どう?これで信じてくれた?」


「…嫌…嫌…嫌…嫌あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!」


意識(ワタシ)が…薄れていく…ぼぅーっとして頭が透明(クリアー)になっていく…『ワタシ』にあるものは…『拒絶』だけ…


私は青年の手をぼぅーっと見つめる……ワタシに…触るな…


「…帰れ!!帰れ!!この変態っ!!二度と私の目の前に現れるなっ!!」


私は半泣きで近くにあったクッションで相手を叩く。…すり抜けているようだが…


「わあーっ!?ダメだ!!きょっ今日は退散ーっ!?」


青年は逃げようと走り出す。しかし、それよりも速く…


「出てけ!!ばかぁぁぁぁーっ!!」


驚愕の顔でこちらを見ている青年。


「わ゛ぁーっ!?待って菜月ちゃん!!」


クッションが駄目なら渾身の一撃をぶつけるまで!!


「これ以上私を…!!」


『…狂わせるな…!!』


ずばぁぁぁん!!


「ぽっーんっ!?」


青年に思いっきり拳をねじ込む。吹っ飛ばすために…自分に制限(リミッター)をかけるために…直感的にリミッターをかけなきゃいけないと感じたのだ。…青年は驚く程軽くぽーんと吹っ飛んで壁をすり抜けていった…


「…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…何なのよぉ…あれ…何で私の名前を…」


私はその場にへたり込んで暫く何も考えられずただ…ただ泣いていた…理由は自分でもよくわからない。ただ単に怖かったのか…背筋に悪寒は感じたが…それとも、自分の主義(ココロ)をめちゃくちゃに壊されるような気がしたのか…可能性としては後者だと思う。私は幽霊とか宇宙人とかそういった『非現実的なもの』に恐怖は感じないから…感じた恐怖は…生々しかった気がする。そのクセしてどこか得体が知れなくて…矛盾しているのだ。そして…自分が壊されてしまう気がした…あ…怖かった理由なんて簡単じゃないか……要するに私は『自分が嫌いなクセに自分が壊されるのは怖かった訳である。なんて…滑稽…


「ほんと…無様…」


無意識に、私はそんな言葉を呟いていた…

先は長いけれどやっと始まった感じですね。まだ触りですが…

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