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プロローグなんで短いです
「やあ。気分はどうだい」
僕は彼女に話しかけてみる。
「・・・・・・」
彼女は余り反応を示さない。チラリと此方を見たがそれでも直ぐに顔を下げてしまう。
「…感覚が戻ってきてないのかい?まあそれなら話せなくても仕方が無いかな?」
「…あなた…誰?私に何の用?ここ…何処?」
まあ彼女にしたら『目を覚ましたら其処は見知らぬ場所だった』なんて状況な訳だし、その疑問は最もだ。
「ここは何処か…残念だけど、教えても君たちでは理解出来ないし、そもそも聞き取ることさえ出来ない。僕にだってどうやって説明すれば君達人間が理解出来るのかわからない。よってその質問には答えられない」
「…まるであなたが人間じゃない…みたいね」
ああ、その通りさ。
「人間じゃないよ。僕は。君達が形を理解しやすいようにオーソドックスな姿を取っているだけさ。『少なくとも』君達には人型に見えているんだろうけど…本当の形なんて存在しないし、第一意味を為さない。ほら、僕って人によってどんな姿形なのか認識が違うだろう。男だったり女だったり」
僕の説明に彼女はきょとんとしている。首を傾げている姿は年相応で愛らしい少女のものだ。瞳に光が無い所以外は…
「…まだ答えてもらってないよね…?あなたが誰なのか」
「誰と言われてもね…僕って概念とか思想的なものだから一概にこういうものですとは言えないよ?」
「…概念?思想?それじゃあまるで」
「そうだな…君達の言葉で言えば…『神』ってことになるんじゃないかな?」
僕がそう言うと途端に彼女の表情が険しくなった。キッと睨み付けてくる。
「ま…まあ落ち着いて。これじゃあ一向に進まないし、手っ取り早く説明するよ?僕は罪を犯した君を裁きにきた。それはOK?」
「…神には権限があるのね…人を裁く権限が…けれど…」
「罪を覚えていないんだろう?だからこの場所があるのさ」
そう…僕はこの子に罰を与えにきた。そして…
「君には罪を思い出して貰わなきゃならない。そうしないと裁くに裁けないからね」
「…見かけによらず残酷なのね…」
「無関心なだけさ。これは罪の清算では無いよ。これからのことはあくまでも君を裁くための過程に過ぎない。ほら、あの扉が見えるだろう?あの扉の向こうの部屋は君の脳に刺激を与えることで段階的に記憶を呼び起こす。君達の言葉で言えば『追想』といったところか」
彼女は僕が指差す扉へと視線を向ける。
「…どうせ決まっていたことなんだろうから抵抗はしない…けど悪趣味ね…一片に思い出す方法は無いの?」
「段階的…それもまた君の罪の重さ故の選択さ」
さあ…そろそろ出発して貰おうか。
「では教えて貰うよ…?『藤咲 菜月』…君の罪を」
本当に短いなあ