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11/13

#12

いやいや12って章が飛びすぎだろ!?と思った方に言う。


その反応は正しい。至極真っ当な感じ方だ。僕だって同じ立場ならそう思う。


結論から言って、彼女の身辺警護は滞りなく終了した。それは1ヶ月にも渡る長い任務だったが、ここまで音沙汰無いとなると見当違いだったのではないか?と思えてしまうのも無理はなかった。あの連続事件が嘘のように平和だったのだ。身辺警護の期間もまずは1ヶ月間と決めてあった為、続けるには申請が必要だった。受理されるには最速でも1日はかかるため、最終日の夜明けを以て警護態勢は一旦終了することになった。


ここまで読んで頂けた方ならば、もうお気付きだろうか?章が飛んでいる理由を、それが現時点で語られない理由が・・・


「語り手」がいないのだ。文字通り消えた、失踪したのだ。


だから、それからのことを知らない僕にはそれ以上は語れない。これから語られるのは、その後の話で、彼女のではなく、


         ーーーーーー僕の物語だ-----

「藤咲 菜月」----鎖雛学院高等部2年生、性別、女性、僕が師範を務める剣道場の生徒で僕の後輩であるところの彼女が失踪したのは身辺警護を解いた日の翌日だった。


勿論書類上の形は取れないにしても、個人的な警護はその日も続けていた。にも関わらず、何故彼女が失踪したかと言われればなのだが


「先輩、服を買いに行きたいです」


何の脈絡もなく、つまり突然彼女はそんな事を言い出した。


勿論、初めは反対したが、考えても見れば24時間態勢で監視をつけられ、夜は缶詰め状態。そんなことが1ヶ月も続けばそれはストレスが溜まらないわけがない。ここらでちょっとした息抜きがあっても良いのではないか?とも思えたのだが


「ダメだ」


当然先輩からは思った通りの言葉が返ってきた。


「ショッピングなんて行って、何かあったらどうする?」


暗に「お前に責任は取れないだろう」と。


「ですが、まだ高校生・・・普通の女の子ですよ?彼女のメンタルが持たない所まで俺達は追い詰めてしまっているのかもしれないじゃないですか!それともそれは度外視しろってことですか!?」


先輩は僕の言葉に「普通・・・ねえ?」と呟くと次いで僕に釘を刺す。


「そうは言わないが、別に今でなくともいいだろうということだ。それに、この件にお前は深く関わらん方がいい」


1ヶ月も経過してから何を言い出すんだ?と疑問に思ったが、僕に限っては思い当たる節がある。


それは・・・僕がオカルト関係の事柄がダメだと言うことに他ならない・・・


「先輩・・・一体何を知って」


そこまで言いかけた所で、先輩は「キャッチが入った。一旦切るぞ」と通話を終了した。


直後、僕のスマホの液晶画面に見慣れた番号が表示される。僕は怪訝に思いながらもその電話に出た。


「やっと繋がった!修代志くん今何処に居る!?」


やはり先輩だった。にしても


「先輩・・・?やけに早いと言うか、速すぎませんか?さっき話してから10秒も経ってな」


先輩は僕の言葉を遮るようにまくし立てる。


「早い?んなわけあるか!!こちとらどれだけかけたと思ってんだ!?」


え?でもさっき先輩とは話して・・・


「それより今君何処に居るんだ?まさか電波の届かない所に居るわけじゃ無いよな?菜月ちゃんは一緒に居るか!?」


先輩は何度もかけていたと言っていた。何か嫌な予感がした僕は先程までの通話内容を先輩に伝えることにした。


「・・・それはオレじゃないぞ・・・君一体誰と話したんだ?それも気になるが、君、菜月ちゃんと一緒に居るんだよな?」


と、先輩が言った所で、背後からすうっと細い手が伸びてきて、その人物は僕の背中に胸が押し当てられる程密着してきた。そしてぐいと僕の体を引っ張ると耳元で


「-------------」


と、声がした。けれど、聞き取れなかった。


それでも


「さよなら。先輩」


続けて聞こえてきたその声で、誰が話しかけてきたのか知るには充分だった。




気が付くと僕は台所の前で倒れていた。時間にして10分も経っていなかった。辺りを見回してみたが、藤咲の姿はもうそこには無かった。近くに落ちていたスマホが着信を知らせており、僕はその通話に出る。


「話途中になってすまない。それで先程の話だが」


ああ、そういうことか・・・つまりは・・・


「・・・先輩、藤咲を見失いました。申し訳ありません・・・」


先輩は「直ぐに行く」と告げると、少し間を開けてからお決まりの台詞を言う。


「後、兄貴って呼べ」




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