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…やはり痴女だったのか

前回の最後の部分に矛盾が生じたので、少し改訂しておきました。

『まっさーじ…?』

 やっぱり、伝わらなかったか…。

『なんですか、それは』

 銀髪野郎の鋭い眼光に、少したじろぐ。だって、感情に乗って伝わってきたのは電撃の一言だったからね。

『えっと、その、相手を気持ちよくさせるものでして…』

 ビシリと二人の顔が固まった。

 え?なんだ?

『…シャクは幼いのに凄い仕事をしていたんだね』

『…やはり痴女だったのか』

 二人が考えていることが、私の想像を絶する卑猥な言葉たちとして、どんどんと私の中に流れ込んできて、彼らがかなり誤解していることがわかった。

『ああ、ちょ、待ってください!誤解です!違うんです!』

 私は大学四年間バイトとしてマッサージ…いや、エステと言えばいいのか、そういうお店で働いていたのだ。研修期間を過ぎれば、私も人前に出させてもらえる。そこで四年も働いていたから、ベテランとみなされていたし、両親も店長も従業員の方々も私がそこで就職するもんだと思っていたらしいし、腕はなかなかのものと言いたい。

『シャクがねぇ…』

 その顔やめろ!んなことしねぇよ!!

『な、なら実践しますよ!』

 だから王子!!そこでうつ伏せになってください!

『えー、いいけどさー』

『殿下、おやめください。この痴女はどさくさに紛れて殿下との子供を狙っているのかもしれません』

 んな訳ねぇだろ!!

 その言葉が通じたのか、王子は笑ってほらね、と言った。

『えー、えっと、その、じゃあ、ジェルとかローションなどありませんか…』

 この流れでジェルとかローションとか言ったら、またもや誤解されそうだ。

『じぇる?ろーしょん?』

 王子は下っ足らずな口調で聞き返してきたところを見ると、伝わらなかったようだ。

 な、なんかその下っ足らずが卑猥だ…。

『その、油のようなものと言いますか…』

『香油でいいですか?』

『はい!香油でお願いします!』

 そうか、香油か、なるほど。香油なんて現代じゃ口にしないから、思いつきもしなかった。

 銀髪野郎と王子が一緒に手を放す。王子は煌びやかなジャケットのようなものを脱ぎ、中のワイシャツのようなものになっていた。その間に銀髪野郎は戸の外にいた甲冑その2に何かを言っていた。目線を銀髪野郎から離し、脱ぎ終わった王子に手を伸ばし、手を繋ぐ。銀髪野郎が戻ってくるまで、このまま待機。戻ってきたところで、王子に話しかける。

『服を脱いでもらったところで申し訳ないのですが、痛いところって上半身ですか?』

『ん?痛いところ?』

『痛いところや凝ったところを解すのがマッサージと言います』

『へー、覚えたよ』

 王子は少し思案して、肩と腕が重いと仰った。

『では…肩にしましょうか』

『そう?じゃあ、脱ぐよ』

 王子と手を放したとき、甲冑その2も来たため、銀髪野郎は甲冑その2のもとへいく。銀髪野郎は机の上に高価な壷のようなものを置き、ナチュラルに私と手を繋いだ。

『これ、どうやって出せばいいんですか』

『頑張ってください』

 なんだよ、それ。使い方ぐらい教えてくれたっていいじゃないか。

 不愉快な顔を見せたら電撃を食らいそうなので、何も言わずに王子に目をやった。

『ごっふ!なんだ、これ!エッロ!やっべ、まじエッロ!』

『…本当に痴女認定しますよ』

 前を寛げ、肩だけ出した王子のエロさは堪らんかった。いや、別に欲情なんてしてないから。

『えっと、じゃあ、失礼します』

 銀髪野郎の手をやんわりと解いて、壷に手を掛けた。王子はソファにうつ伏せになっていた。

 なにこれ、本当に壷?いや、見た目は壷だけど…どうやって開けるんだ…。

「んぎぎぎぎ」

 変な言葉を発する私を見て、王子はうつ伏せの状態で顔を上げて笑う。

 ちょ、なにこれ!蓋かたっ!!未開封のジャム瓶みたいな固さですけど!!

「――――」

 見かねた王子が何かを押す仕草をした。

「?」

 蓋だと思った部分を指で押してみると、机の上に香油が飛び散った。

「すすすす、すいません…!」

 なんだよ、これ!プッシュタイプかよ!そこだけ進化してんじゃねーよ!

 パニックになる私に対して溜息をついた銀髪野郎がなにやら呟くと、綺麗さっぱり私が汚した部分はなくなった。さすが、超能力者…。

「そ、それじゃあ…」

 気を取り直して。

 ソファでうつ伏せになる王子の横に立って、満遍なく香油を伸ばす。この香油、お風呂で嗅いだ臭いと一緒である。

 王族はバラが好みなのか?

「―――~」

 王子は気持ちよさそうに目を細め、間延びした声をあげる。

「気持ちいいですよねー」

 そんな私の一挙一動を銀髪野郎は監視している。どうやら私が王子の上に跨る、またはナイフでブッ刺さんか注意しているようだ。

 いや、せんて。



 そして、数十分後。

『いやー、気持ちよかったよ~、シャク~』

『ありがとうございます』

 満足そうな王子にホッと漏れるため息。怖いんだよ、銀髪野郎が。

『シャクは幼いのにすごいねー』

『はぁ…』

 王子と年齢変わんない気がするけどな。

『これなら、まっさーじとやら、してもいいよ』

『本当ですか?!』

 やった、王子からオッケーの言葉をいただいた!

『ところで、あなたはそれでお金を取るつもりなのですか?』

『いえいえいえいえ、滅相もない!』

 慌てて銀髪野郎の言葉を否定する。

『私はここにおいてもらう身なので、王族で働く方々の癒しになればと…』

 ぶっちゃけ、動いてないと嫌だって言うだけなんだが。

『シャクはいい子だね』

 なでなで。

 おい待て、ガキ扱いはやめい。

『これなら大丈夫だと思う?クー』

『あらかじめ何をするところ明記しておけば、わかるでしょう。言葉がわからなくても、解したい部位は手で指せばわかりますし』

 おおお、銀髪野郎の許可も出そうだ!

『どこで開こうか?』

『兵士や下女の出入りが激しいところがいいのではないかと』

 侍女や執事になると、見知らぬ人間に体を触れられるのは嫌でしょうし、兵士や下女よりかは肉体の負担も少ないでしょう。

『そうだね。じゃあ、看板作っておいてよ、クー』

『…私がですか?』

『うん。僕は、気持ちよかったって喧伝しておくよ』

『…わかりました』

 まぁ何はともあれ、出店先は決まったようだ。

『ところで、シャク』

『はい』

『変な奴も来ると思うから、そういう時は問答無用で暴れるか、人を呼ぶんだよ?』

『はぁ…』

『看板の意味を履き違えて、娼婦と同じようなことをさせるかもわかりませんしね』

 交互に私に対する注意を言ってくる二人の顔を見つめる。

 な、なんだよう。なにがそんなに心配なんだよう。

『男色の兵士もいると思うので、襲われないように注意してくださいね』

 そういう心配かよ!!

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