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ずるい人

長らくお待たせしました。

引越しも終わり、回線も無事復活しました。

これからもまた土曜日更新していくので、よろしくお願いします!


ちなみに今回はちょっとレイプ描写があるので苦手な方は前半を飛ばしてください。

『ボロくてすまねぇな』

 普段なら寝てしまうような時間を馬車に揺られてから、ガタガタと恐怖に震える体を持ち上げられ一軒の宿屋と思しき家に連れて行かれた。最初のほうに助けを求める声を上げたため、今は猿轡をかまされている。

「ぅ…」

『泣かないのか?』

 怖い。怖くて怖くて本当に泣き叫びたい。でも、泣いてもどうしようもないことはわかっている。この現状を打破できるような術を私は何一つ持たないのだ。この現状に私はもうあきらめてしまった。諦めてしまったからといって、私にだって一応貞操観念はある。ほいほいとやられてしまって、妊娠しなかったらいいや気持ちいいからいいやなんてことは思えない。いや、思わない。でも、この人は私を妊娠させることが目的だ。だから…今の私は、レイプされてもいい。でも、子供だけは妊娠したくない。ということを願うことしかできない。妊娠するということは、私の中で(おそらく私だけじゃないだろうが)別次元の問題だ。私のお腹にもう一人の人間ができるなんて想像もできない。いや、想像もしたくない。新しい命をほしいと思えるほど大人じゃないし…ほしいと思うときは、好きな人の子を産みたい。心のそこから愛した人の子を産みたいと思えるその日までは絶対に妊娠したくない。

 一つまだ救いと言えるのが、男が私のタイプだというところである。知りもしない気持ちの悪い男の子を孕むよりましだというものだ。

 ナチさんに襲われたときとは違う恐怖が腹の底から湧き上がってきた。

『暴れられても困るから縄は解かずねぇ。だから、服は裂くな』

 男は何をするか伝えてから、私の服を力任せに引き裂いた。

『優しくしてやるから暴れるなよ?』

 男の手が私の体を這い回る。男による愛撫が始まった。

  ・

  ・

  ・

 何度行為を繰り返しただろうか。何度男は果てただろうか。そして何度私も高みに連れて行かれただろうか。足を伝う液は私の体液かそれとも男が出したものか。

『これくらい、すればっ…いいだろ…』

 男の息も絶え絶えなほど行為を繰り返したのだ。途中で縄や猿轡を外されても私には抵抗する体力は残っていなかった。

「っ…」

 ずるりと抜ける感触とともに溢れ出す液。どうすればいい。どうすれば私はこの現状を打破できるのか。どうすれば…子供を孕まないですむのか…。

『お嬢ちゃんには前のままでいてもらいたかったんだけどな…』

 頬を掴まれ男のほうに顔を向けられて、私の瞳を覗き込んだ男は苦笑した。

 私は今、どんな顔をしているのだろうか…。

『じゃあな…俺を恨めよ。絶対に』

 男は私の額にキスをする。優しく労わるように。

「ふっ…」

 こういうところがだめなんだ。恨めってなに。そんなことを言われたら恨むに恨めない。傷物にしたいなら手荒く扱えばいい。恨ませるように扱えばいい。セックスしている時も、恋人のように甘く優しく扱う。…ずるい。なんてずるい男なんだ。

『だいきらい』

『…それでいい』

 男は優しく微笑み、私の頬にかかった髪を指でそっと払った。

「…ずるい人」

 男は私の体を乱雑に清め、宿代らしきお金を机において闇夜に消えていった。男が見えなくなって、私は脱力した。そして、喘いで枯れた喉を更に痛めつけるように思いっきり泣いた。

  ・

  ・

  ・

 ドゴォオン!!

 爆発音とともに私は目を覚ました。泣いていたと思ったが、泣き疲れて寝てしまっていたらしい。体は一ミリも動かない。目元は擦れて痛み、喉は唾を飲み込むだけで鋭い痛みを走らせた。

「サクラ!!いるなら返事をしなさい!」

 ドォン!!

 クーさんの声が聞こえた。私を探して、部屋を一つ一つ破壊しているのかもしれない。あれから何時間たったのだろうか。クーさんの捜索も伸びるくらいの時間がたっているのだろう。私がいる場所を虱潰し探しているようだから、この宿屋に来るまであった宿屋はすべてクーさんによって破壊しつくされているのではないだろうか。

「返事をしなさい!!」

 そんな無茶な。私の声はもう当分出ない。今はクーさんの怒号にも怯えて反射的に返事をできないですよ。

「サクラ!」

 ドガン!

 私のいる部屋のドアが吹っ飛んだ。明るい廊下と暗い私の部屋では、クーさんの顔は反射してなにも見えなかったが、クーさんが息を飲んだのは音でわかった。

「サクラ…」

「ぁ…」

 掠れてほとんど声になっていなかったが、クーさんは私の元へ駆け寄ってきた。そして、どこか怒った顔をしているクーさんは私を所謂お姫様抱っこで持ち上げた。

「…中はどうなっているのですか」

 たぶん掃除をしたかどうかを聞いているのだと思い、私はゆるゆると首を横に振った。益々怒気を強めたクーさんは私のお腹に手を当て、魔方陣を描いた。お腹の中がスッとした感覚から考えるに、たぶん綺麗にしてくれたのだと思う。

「…殺しておくから安心しなさい」

「………」

 グッと体を引き寄せられ、クーさんの胸に顔を埋める体勢になった。

「安心して、眠りなさいサクラ」

 クーさんの声に誘われるように私は目を瞑った。

ヒロインがレイプされる話ってあるのだろうか。やめておいたほうがよかったかな。

でも、実際ヒーローがあんなに都合よく間に合わないだろうなぁと思ったのは事実である。

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