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犯罪組織

「ま、まぁ、なんでもいいですけど…今から帰りますか?」

 少年を助け起こしながら、クーさんには曖昧=日本人的な返答を返しておいた。うまく出来てないのは確かだけども。

 それにしても、二人を保護したからにはやはり帰るのだろうか。いや、帰るだろうな。ちょっと日用品とか買いたかったんだけどな。まず下着が欲しい。城で貰ったものと同じタイプかもしれないが淡い期待を持って、日本と同じものを探したい。あと、ズボンが欲しい。ミリティアちゃんがズボンを渡してくれないしね。他の侍女からこっそり持ってくるようなことがあれば、次の日にはばれないように仕舞ってあったズボンがズタズタにされた状態で机の上に置かれているのだ。初めて見たときはリアルにいじめだと思った。

「そうですね…私がこの二人だけ持って行って帰ってきますよ」

 魔術なら、簡単に出来るそうで。

「私が助けるって言い出したのに、迷惑かけてすいません」

 と、私は倒れた少年を膝枕した状態で謝る。膝枕している少年をうつ伏せにして、でかい瘤を痛くない程度に撫でているのだ。効き目など知らん。

『あ、うあ…お、お兄ちゃん、やめて…僕、痛くないから…離して』

 ファシア?もしかして、あたし?お兄ちゃん?…よし、続行だ。

 クーさんにとっ捕まっている赤毛の少年が私に向かってなにやら喚いているがマジでわかんないので、本気でシカト。

 ガタン!

『――――――っ!!』

『―――!!―――――っ!!』

 なにやら部屋の外が騒がしくなってきたぞ。怒声と鈍い音と砕け散る音が聞こえてくる。

 喧嘩?

 私は首をかしげ、クーさんは音のするほうを目を細めて見つめ、少年二人は顔を真っ青にして震え始めた。

「少年たちの元凶か?」

 小さくなってしまった少年を抱き上げて腕の中へ抱き込む。少し酸いにおいがするがそこは気にしない。少年だって好きでこんなにおいを発しているわけじゃないのだ。

『あなた、“少年狩り”という言葉に聞き覚えは』

『っ…!!そ、そんなの、誰だって知ってるだろ!』

 クーさんが赤毛の少年に詰め寄り始めた。別の部屋からは依然として激しい物音が。先ほどと違うところといえば、その部屋から悲鳴と泣き声が聞こえてくるということだろうか。

『お兄ちゃん…逃げて』

 兄ちゃん、逃げろ、だと?

『嫌だ!私、逃げない!君、守る!』

 そう言い切ると、少年は顔をくしゃりと歪め、泣きそうな顔をしてしまった。

『そうですね…では、ここはどこか教えてくださいますか?』

『て、テメェになんで教えなきゃならねぇ!!』

 クーさんの笑顔、マジこええ。なにあれ。なんであんな心にもない笑顔が出来るのだろう。少年、顔面蒼白だよ?まぁ、クーさんのせいだけじゃないけど。

『あぁ、一つだけ言っておきたいのですが。少年といえども、脅されていたとしても、生きていくためだとしても、犯罪に手を染めれば、保護される対象ではなく裁かれる対象だということはあなたのためですから、覚えて置いてくださいね』

 にっこり

『っ…、大きな、お世話だ!!』

『復讐が怖いなら私を頼りなさい。私はあなたがいう“国の犬”ですよ?』

 相手の喉許に食らいついてさしあげましょう。

 クーさんが言っていることすら半分ほどしか理解できなかったが、少年はなにやら後ろめたいことをしているらしい。言わずもがな私の胸の中で震えている少年もだ。やはり、別の部屋の騒ぎは犯罪なのか。

「クーさん、どうするのですか?」

 日本語で喋っちゃうが、少年たちよ気にしないでおくれ。

「現行犯逮捕が一番楽なのですが」

 動かぬ証拠を突きつけることが出来ますからね。

「犯罪組織ですか?」

「まぁ、そうでしょう。巷で噂の組織のようです」

「…なるほど」

 少年を集めていやんあはんなことをしているグループだということですね。死に曝せ。

「貴女は本当に首を突っ込むのがお上手ですね」

「褒めているのでしたら、ありがとうございます」

「…犬は貴女ですよね」

 どっちかって言うと猿って感じだけども。

 冷静に話していると、ドタバタと足音が聞こえてきた。

『ニケ!ポルク!どこにいやがる!!』

『は、はい!ここにいます!!』

 赤毛の少年が強張った顔で大きな声で返事をする。私が抱いている少年は掠れた声しか出て来なかったようだ。

 いなくなっていた二人…むしろ集まってこない二人を探しているのか。面倒な。

 それはクーさんも思っていたのか、魔術で拘束したままの赤毛の少年を私のほうに放り投げると、ドアのほうを向いて立ち、瞬きもせずに見つめていた。どんどんと足音は大きくなり、怒声も部屋中に響き渡ってきた。

 ごくり、と私の喉がなった。

 バン!!

『さっさと…うぐぅう!!』

 ドアが開いた瞬間、クーさんの魔術が相手に向かって迸った。呻き声を上げた男はそのまま前のめりに倒れこんだ。どうん、と男が倒れた音が部屋に響く。次いで、しぃん、とした無音が部屋を支配する。私たち三人はクーさんが動くまで息を止めていたことに、息を吐いてから気付いた。

『…さぁ、吐いてもらいましょう』

 なにを?と聞くまでもなく、情報を、ですね。

 クーさんは意識を失った男の頭を掴み、男の体の下に魔方陣を作り上げた。私の額を押さえていたときとは違って、赤い魔方陣で赤い光がクーさんを覆っていた。

「………?」

 クーさんは何を言っているのかは聞き取れなかったが、男が僅かに目を開き、虚ろな目の状態のままなにか答えていた。

 魔術って怖いね。というか、クーさんの魔術レベルがパネェのか。

『す、すげぇ…』

 うんうん。

 拘束が解かれぬまま放り投げられた赤毛の少年の感嘆に私も同意して頷く。

「サクラ」

「は、はいいいい!!」

 やべぇ、頷いてたのバレた?!いや、凄いっていうことに頷いてたから怒られないでしょ!

 慌てて金髪の少年を横たわる赤い少年の上に乗せ、立ち上がる。

「少し、楽しいことをしませんか?」

「はい?」

 クーさんが男を床に放り投げ、にっこりと笑いながら私を手招いてくる。

 なにこれ、死神が呼んでるようにしか見えないんだけど。

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