仲間はずれいくない
ここで問題です。私が全裸のまま正座させられているのは何故でしょう。
「貴女と言う人は、ききかんと言うものがないのですか?」
答え。王子と巫女を拘束するだけ拘束して、説教は放置し、クーさんに私が説教されているからです。ちなみに全裸と言っても、シーツは巻かせていただいてますよ、はい!
「…危機感を漢字にも出来ない奴に言われたくないですよ!」
脚も痺れて限界になってきたし、全裸と言う乙女には辛い所業により、私は下からクーさんを睨みつけながらそう言ってしまった。その言葉にクーさんは一瞬詰まったが、その後いつもの顔に戻った。
「そうですか…。漢字がわかればよろしいんですね?」
やべぇ、こいつは確実に数日で漢字をマスターしやがるぞ…。電子辞書、見つからないようにしないと…。むしろ、見つかっても使い方を教えないとか電池を抜き取るとかのことはしないと…。
「――~!――――――――――!」
「…ゼア」
互いに睨み付け合っていると、拘束されたまま放置されていた王子がついに痺れを切らして暴れ始めた。その横で迷惑そうにしているナチさんは未だに大人しく拘束されていた。
クーさんが真顔のまま私の前にしゃがみ込み、何事と若干怯んだ私にイラついた顔を見せた後、少し手を翳した。その一瞬で、私は服を着用していた。
「すげぇ…」
「たちなさい」
THE・命令形!知ってたよ、クーさんがそういう人なくらい。
私は立ち上がり、二人がいる所まで歩いていく。そして、そこにしゃがみ込み、クーさんが二人の拘束を解いたところで、三人仲良く手を繋いだ。ナチさんは繋がなくても日本語通じるから、輪の外で一人座っていた。
なんだろう、この可哀想な図。
『シャク!どうして、こんな男に体を許したんだ!』
『許してません。断じて許してません』
「えー、結構濡れ…「黙れ!」…はーい」
この思念波的な会話すら巫女さんには聞こえるらしい。つーか、巫女って神に見も心も捧げた人のことを指すんじゃないのか。こんなに下半身緩々でもいいのか、これ。
『みこって何?』
『は?』
急に王子に疑問をかけ投げられ、うっかり敬語を忘れた。
『今、シャク、こいつのこと“みこ”って考えたでしょ?』
『え、巫女って変換できないのですか?』
まぁ日本語じゃあ巫女って女性のことを指すしなぁ…。
『シャクのみこをこっちの言葉で変換すると、神に仕えて云々の女性ってなってるよ』
『…後で辞書で調べます』
『…辞書?』
げ。
油の注していないブリキの玩具のように、ギギギと音が鳴っているかの如く、私は右手を繋いでいる人物をゆっくりと見つめた。
『辞書、あるのですか』
やべぇ、やべぇ。しくった。マジでしくった。この人に一番持っていることをばれちゃいけない代物だった。
『そそそそそ、そんなことよりも、ふふふ、二人はどうしてここへ?!』
無理な話題転換だって、自分でもわかってる。わかってるけど、仕方ないじゃないか!!だって、あのクーさんがだよ?!あの、クーさんがニヤリって笑ったんだよ?!笑ったんだよ?!顔の表情筋まだ動いたんだっていう驚きだよ!!
全部筒抜けだと言うことを忘れていた私は、右半身が不随になるかと思うくらいの電撃を食らった。
今度からホント、考えることを自重しよう。
『いやだってさー。騎士団が大騒ぎになってたんだもん』
だもんじゃねーよ。可愛くねーよ王子。
『ナッツォ君が知らせてくれたんですか?』
『違います、副団長です。彼が式紙を飛ばしてきました』
この式紙って日本語変換だと式紙になってるんだろうけど、魔術的に言うと使い魔的なのを飛ばしてきたのかなぁなんて推測してみたり。
『彼が貴女が“色欲の君”に連れ去られたと教えてくれたのですが、運悪くその時殿下がいらっしゃって…』
『運悪くないでしょ。運よすぎでしょ』
全裸の私を放置して神殿丸焦げにしようとする人がその場にいたことを運がいいなんて口が裂けても言えないわ。つーか、色欲の君とかなんなのネタなの?ウケるわ、マジで。
『つまりは、クーさんは思いっきりとばっちりってことですね』
『まったくそうです。だから、どうして貴女は』
「ねー、もぉ話終わったぁー?」
クーさんの小言を遮ったのは、事の発端であるナチさんだった。
「俺、もう飽きたんだけどさ」
「―――――――――…」
クーさんの呆れた声。
クーさんはきっと彼が子どもの頃を知ってるんだろうなぁ…。そう考えると、不憫だなクーさん。こんな位のたけぇ我儘破天荒な二人を恐らく押し付けられていたんだろうし…。
温かい目…と某ネコ型ロボットの目をしてクーさんを見つめていたら、思いっきり頬を抓りあげられた。
「その顔をやめなさい」
「いだだだだだだ!」
なんでだ!いつもは電撃じゃないか!どうして今回は物理攻撃で来るんだ!つか、マジで痛い!ほっぺた捻じ切れるぅうう!
『愛嬌のある顔が不細工になる前に、これから注意しておきなさい』
愛嬌のある顔?!暗に不細工だともう言ってんじゃねぇか!!しかも、日本語で言ってこなかったところを見ると、愛嬌とか不細工っていう言葉がわかんなかったんだろ、バーカ!
『頬がまだ抓られている事に気付いてないんですか?』
「いぎぃいいいいいい!」
王子に助けを求めたものの、両頬を抓りあげられて涙目の私を見て爆笑するだけだった。こんの役立たず!
「でさぁ、クーラドヴォゲリアはさ、シャクのことお気に入り?」
でさぁ、っていう接続詞が理解できないけれども、とりあえず一言。テメェはこの状況を見て物言え。この状態でお気に入り?笑わすな!
「――――――――――?」
「だってー」
巫女の声は私にもクーさんにも聞こえているところを見ると、聞く人の言語に合うらしい。凄いな神様。無神論者だけど。
「じゃあ、どっちなの?」
クーさんはナチさんに向き直る瞬間私から手を放した。いきなり放されて、そのまま倒れこんだがクーさんの魔術かナチさんの神の力か知らないが、床にぶつかる直前で私の体は止まった。
本当に凄いね、魔術。私にも使えないかしらん。
「―――――――――――――――――――?」
「いーや、これからの俺の行動にかかわるってくらい?」
クーさんの言語についていけない私は、王子と戯れようかと思ったけれど、王子は真剣は顔をして二人の会話を聞いていた。
仲間はずれいくない!
「で、どうなのさ」
「…――、――――――――――――――――――――――」
「へぇ、そう」
その言葉に口元を上げたのは王子と巫女だった。
二人とも悪そうな顔をしてるなぁ…。
「じゃあ、遠慮なく」
すたすたとクーさんの横を通り過ぎて、座り込んでいる私の前にナチさんは座り込んだ。
「ねぇ、シャク」
「はい」
「元の世界に戻らないで、俺の伴侶になってよ」
「は?」
こいつ、何言っちゃってんの?