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人間的扱い求む。

初めまして。

私が好きなキャラとくっつかない事に苛立ってやってしまいました。

後悔はしてません。

 えー、皆さんどうも初めまして。森 桜と申します。先日、社会人になったばかりのピッチピチの私ですが、桜という名前の通り春生まれでして、しかもこれまた4月2日という早さ。いつも仲良くなった方々に誕生日を祝われることもなく、すでに普通の人たちよりも一つ年齢が上になっていまして…と現実逃避はここまでにしましょう。何故、何故、私は牢屋にぶち込まれているのでしょうか。


「こっから出しやがれぇえええええ!!」


 2日間も牢に入れられ、ぶち切れた私の渾身の絶叫は見張りの兵士によってぶん殴られて終わった。

 …ひでぇよ、マジで。一応女子なのに。

 じんじんと痛む頭を手で擦り、何故こうなったかを改めて振り返ってみる事にした。

  ・

  ・

  ・

「うえ~…疲れたぁ…」

 新入社員の私は、ここぞというばかりにしぼられた研修期間という名の鬼合宿から解放され、重いボストンバックを肩に掛けながら一週間ぶりの我が家への帰路についていた。疲れと緊張からドッと眠気が襲ってきた。

「ん~…?」

 閉じかけている眼で、前を見る。目の前にゆらゆらとした空間が見える。しかし、その向こうに見えるのは久しぶりの我が家。

「あぁ…なんだ、陽炎か…」

 あの時の私はどうかしていたのだ。そう、疲れすぎていたのだ。春に陽炎なんか出るわけがない。むしろあってたまるか。

 陽炎か、と一人納得した私はそのまま脚を進めた。早くベットに飛び込みたかったのだ。まぁ、結局違うベットに飛び込んだのだが。

 がっくん

「う゛、え!」

 可愛さの欠片もない言葉を残して、私はその『空間』に落ちた。一瞬の浮遊感の後、私のふっかふかのベットに顔面から落っこちていた。

「へぶ!」

 いくらベッドが柔らかいとは言え、空中からの顔面ダイブ。痛いわけがない。

「ぐおおおお。ない鼻がもっとなくなるっ…!」

 ボストンバックを肩にかけたまま一人悶えていた私の首許に冷たいものが押し付けられる。

「―――――――」

「え?」

 人の声に振り返ろうとしたが、後頭部をガッチリ押さえつけられていて振り向くことはかなわなかった。がしかし、首許に突きつけられている冷たいものと、何語かわからないが低い脅したような声。もう何が起こったか一発でわかってしまった。きゅぴん!と一瞬にして凍りついた私を、押さえ込んでいる人物は哂った。そして、また二言三言何かを言ったと思ったら、それは私に放たれた言葉ではなかったらしく、激しい音がしてドカドカとなにかがたくさん入ってきた。

「――!――――――?!」

 入ってきた人物が何かを叫び、後ろにいた人物の手が放されたと思ったら、今度は右側から容赦なく二の腕を掴みあげられ、痛みと恐怖に声をあげた。

「お、お命だけは!」

 その言葉に私の二の腕を掴んでいた男が眉を寄せる。その男は甲冑を身に纏っていた。

 とんだコスプレ殺人鬼だな!

 もう私の中では彼らは通り魔的犯行の殺人鬼になっている。だって私は道を歩いていただけなのだからね。…って、私は何故か知らんが、どっかに落ちたぞ。じゃあ、ここはどこだ?

 改めて自分のいる場所を見たら、天蓋つきの高級そうなベットの上だった。どこやねん、ここ。

「―――――――」

「っい゛!!」

 キョロキョロと辺りを見回していた私の意識を戻すように、容赦なく腕を握り締められた。

 これ絶対痣になる!

 だがここで痛いなんて暴れたら確実殺られる。私は出来るだけ友好的な笑みを見せようと、引き攣った笑顔を甲冑の男に見せた。男は再び眉を寄せ、口を開いた。

「―――――――――――」

 何語だ。確実に英語じゃねぇ。やめて、ヨーロッパとかやめて。喋れないよ。だが、英語は世界共通語。大の大人が何も判らない訳がない。むしろ相手のほうが英語わかってそうだし。

「I can't understand your language.」

 発音がいいわけじゃあないが、必死で言葉を紡いだ。文法が間違っていようが知ったこっちゃねぇ。伝わればいいんだよ!

 だが目の前の男は怒りを露にした。

「――――――――――!!」

 と同時に顔面に衝撃が走り、視界がぶれた。

 何事かと思ったときには痛みが走ったので、私は目の前の男に平手で打たれたのだと理解した。

 ひでぇ!父さんにも打たれたことないのに!(ただし母はある)

 目を丸くしている私の横で、金髪碧眼のえらい顔が整った外国人が微笑を浮かべ、男の手を制していた。

 なんだ、フェミニストか。

 ここで、なんて素敵な殿方なんでしょう!と思わない私素敵。いやだって、そのイケメンの手には短剣が握り締められていたからね。どう見てもさっき私の首許にナイフ突きつけてた人でしょうが。

「―――――――――――?」

 笑みを浮かべたまま首を傾げられるが、何を言っているのかわからないので私は反対方向に首を傾げた。横で顔面を殴った甲冑が拳を握り締めていた。それを止めるようにもう一人の甲冑が肩をポンポンと叩いて宥めていた。どうやら、入ってきた甲冑は合わせて二人。

 なんて横目で眺めていたが、イケメンに頬を片手でガッチリを押さえ込まれ、視線を合わせられる。そして、

「―――――――――――?」

 たぶんもう一度同じ事を聞いたのだろう。私はまた首を傾げた。イケメンは苦笑すると、二言三言私を殴ってないほうの甲冑(この人を甲冑その2と呼ぼう)になにかを伝えた。甲冑その2は「御意!」的な肯定の言葉をいい、その場から立ち去った。

 このイケメンが一番えらいのか。イケメンだからか。

 ぼけーっとイケメンの顔を眺めていると、甲冑その1に頭を鷲掴みされた。

「う゛!!」

 ずるりと引っ張られ、頭からベットから落ちる。

 いや、待って。もうちょっと人間的扱い求む。

 べちゃ、とベットの下に叩き落され、その上に重いボストンバックが降って来た。

「いだい!」

 腰…私の腰はもう駄目だ…。

 痛みに悶え苦しんでいると、遠くから急いでいるような足音が聞こえてきた。そして、私たちがいるドアが開かれ、入ってきた男は、これまた吃驚するくらいイケメンの銀髪男だった。

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