選ばれなかった少女
「うむぅ・・・」
これは何かの間違いではないのだろうか。この読書感想文はわたしが全身全霊をかけ、考えに考えなんと5時間もかけてかきあげた大作なのだ。その評価がCとは・・・。わたしの感性は先進的すぎて先生方が理解するには3光年ほど年月が足りなかったらしい。
「どうしたんだい?いかにも悩める学生風にうなっちゃってさぁ。」
「お、綾小路君。いやいや、どうしてわたしのこの芸術ともいえる読書感想文がCなのか考えていただけなのです。」
「いや、俺安藤なんだけどね・・・」
綾小路君の抗議をにゅるっと聞き流し、彼の作文用紙を盗み見る。
「っち、いかにも頭悪そうな顔のくせに・・・」
「・・・えっ?」
「いえ、Aなんて取るやつはこの世から消えてしまえといっただけですよ。」
「なんていうか・・・ごめん・・・」
引きつった笑いを浮かべている綾小路君にわたしは笑いながらいう。
「本当に。死んでしまえ!」
「それはいやだ!」
拒否られた。
「でも・・・どうして斉藤はそんな作文を書いたの?」
「うん?思ったことを言葉にしようとしたんです。」
そう、言葉にしようとした。でもわたしの想いは言葉なんて形に収まってくれなかった。この世界には想いを言葉にできる人と、言葉に逃げられてしまう人がいて、わたしはどうしようもなく後者だった。それだけのことだ。想いをきちんと言葉に収められる人なんていうのは、ほんの一握りの選ばれた人だけなのだ。選ばれなかったわたしは、自分の気持ちに逃げられて、逃げられてやっとつかまえた「悲しい」という言葉だけを原稿用紙にのせた。
「適当に補強すればよかったんじゃない?本当に思ってることを書いてるやつなんてほとんどいないよ。先生が採点するのは上手にかけているかどうか、それだけだよ。」
「そんなことをしたら、一生言葉を捕まえることはできませんよ」
わたしは選ばれなかった人間だから。逃げられてしまうなら追いかければいい。選ばれないなら迎えにいけばいい。
「斉藤は、おもしろいな。」
「綾小路君は恥ずかしいです。」
「いやだから、あんど・・・まぁいいや。」
綾小路君は二ヘラと笑った。
「ん?何ですか、綾小路君。気持ち悪い顔してますよ?」
「いやね、なんかこういうの、いいなって」
きがつくと、教室にはわたしたちしか残っていなかった。
「さて、わたしも帰り支度をしましょうかね。」
「な、なぁ斉藤、外はもう暗いよなぁ。」
「ん?まぁそうですね。冬の日は短いですし。」
「ふ、不審者とか危ないよなぁ。」
「まぁ、わたしもか弱い乙女ですからね。」
「だから俺とっ」「一緒に帰りましょうか」
綾小路君は口をパクパクさせた。顔も真っ赤だし、うん、金魚みたいだ。
「なにしてるんですか?おいてきますよ、安藤君」
「お、おう・・・って名前!」
「ん?なんのことですか?綾小路君」
「・・・なんでもない!」
うん、やっぱり素直に言うのは悪くない。
小説というものをはじめて書いてみました。
いいたいことはたくさんあったのですが、自分の気持ちを言葉にするというのは難しいもので、わたしの力量ではなんともできず、ぐちゃぐちゃな、いいたいことをかいただけの、よくわからないものになってしまいました。
厳しい評価お願いいたします。