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【外伝】サイラス・フェイ⑧

第八話 理由



サイラスの証言と瓦礫の検出結果。

ディルの思考は朽ち、言葉の欠片さえ喪失していた。


地下の会議室に集まる軍の中枢らは、世界的災厄の根源が我が国であるという事実を、臥薪嘗胆の覚悟で受け入れようとしていた。

分厚い資料の一枚一枚が判決書のように、重く捲られる。


「つまり、魔女城の正体はリブルムンド軍管轄養成所、君達の言うところの「学校」で、天災の魔女はミレイ・ブラウ。バーサーカーはラグ・グニルということか」

軍本部大佐バレル・ガンはディルに視線を送る。

「…天災の魔女が、ミレイ・ブラウであるという確証はありません」

「状況がそう言っている。瓦礫は表面こそ朽ちているものの、あらゆる結果が学校であると示している。今頃、時空を超え、七十年前の世界にでも行っているのだろう」

バレルは視線の方向を変える。

「ミレイ・ブラウは一年ほど前から、魔女城の出現予測理論の構築に尽力していました。彼女の理論は現在の魔道論を超越する主張がいつくあり、仮にそれらが事実であるならば、彼女にとって時空の移動は、不可能とは言い切れません」

魔導隊管理主任イデア・シリウスは事務的に答え、ディルに視線を送る。

それは絶望の淵にあり、憔悴を隠せないディルを、案じる以外の意味を持たなかった。


「これからのことは順次検討を進める。言うまでもなくこれは国の存亡に関わる。拙い情報などは勘弁願いたい」

バレルの締めの言葉に、会議室の空気が僅かに緩む。

「ディル・レミントン中尉、何かあれば、いつでもいらっしゃいね」

イデアは囁くように伝え、退室していく。


ーーー


「サイラス、いいか」


ディルがサイラスの部屋を訪ねたのは会議から一週間経ってのことだった。


「なぁサイラス、間違い…ないか」


「……ああ。動き、圧、技。ラグ以外、考えられない」


窓際のベッドに腰掛けるサイラス。


「お前はオニの匂いも嗅ぎ分けられるしな。そうか…。あの鎧は、ミレイが作ったんだろうな」


ディルは部屋の入り口付近から車椅子を進めなかった。「そうだな。ガントレットの時みたいに…」


思いと記憶が目まぐるしく思考に絡みつく。


光を纏った風がカーテンを揺らす。


「二人が何かしらの術にかかり、自我を失っているのも間違いない」


「ああ。イデアさんにも聞くつもりだ」


「ディル。俺は諦めないぞ。何年かかっても、どんな手を使ってもだ。あの二人を、俺たちの仲間を、このまま世界の災厄にしておくなんて出来ない」


「サイラス…でも、どうする…」


「分かんねえよ!お前にしか出来ないことがある。俺にしか出来ないことがある。だから話すんだよ。これから、何度でも」


「そうだな…泣き言言ってすまなかった」


ディルの目のクマは掘られたように黒ずみ、頬も深くなっていることに、ようやくサイラスは気付く。


「来週、またここで、だ。ディル。とりあえず寝ろ」


じゃあ、とディルは部屋の扉を閉める。


その後ろ姿に、サイラスの胸が締め付けられていく。



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