【外伝】サイラス・フェイ⑦
第七話 この日
第七話 この日
「対魔軍第二部隊出撃!」
「苛ついているな。サイラス」
「でもコルト隊長、出撃が遅すぎます」
「整備が重なってたんだ。こういうこともある。それに避難完了の報告は受けている。もうすぐスクールバスとすれ違うだろうよ」
「あと十五分…」
サイラスは腕時計を睨む。
「ギリギリ間に合うか。どちらにせよ真上から降ってくるんじゃ施設の損壊は免れない」
ーー!!
鈍く、重い轟音が急停車の衝撃とともにサイラスたちを襲った。
「先頭車、横転です!」
運転手の声に、サイラスに冷たい予感が落ちる。
耐えられず、車を飛び出す。
先頭車は確かに横転していた。
プスプスと煙を上げ、その先から金属の摩擦音。
それが足音だと気付く前に、それは煙から姿を現した。
ーーー
「…赤い…バーサーカー」
「サイラス、確かか?」
サイファー・コルト対魔軍第二部隊長は背後から確認を促す。
サイラスはすでに対象から一瞬だろうと目が離せなくなっていた。
「対峙するのは初めてです。ただ、特徴は一致しています」
「撃鉄をアテにしたことが仇になったか。囲え!!」サイファーの号令と同じくして、鎧は二台目の移送車を目掛け、突進する。
行く手に立ちはだかるサイラス。
魔力で包んだ刃先は、鎧の動きを制止した。
鎧とサイラス。
まるで二人以外、世界の全てが止まったかのような。
二人の間を、刀身を包む魔力が淡く照らす。
ーー刹那。
音速の如き剛腕。
頬の皮一枚を預け躱すサイラス。
鎧の脇を沿うように流れる刀身。
刀が生んだ亀裂から出血はない。
サイラスの体内魔力は限界値を超えて循環する。
より疾く。
より深く。
より多く。
一撃が即死に直結する刹那の流星群。その交差。
熾烈を極め続ける闘争。
周囲の兵士は全く狙いを定めることの出来ない二人の立ち回りを、ただ眺める他なかった。
(いつまで続くんだ…!)
魔導兵を不要と判断した後ろめたさが、サイファーの脳裏に焦りと不安を招き、それが蔓延しきる頃、
バーサーカーは粉塵のように消えた。
刀身の魔力が霧散する。
サイラスは膝を着き、激しく乱れた呼吸に身体を取られていた。
ーーー
移送車の中。
「あり得ない…」
応急処置を受けるサイラスは、芽生えてしまった信じがたい確信を、どうにか疑念へと押し戻すように必死に思考を巡らせる。
ーーー
「学校」到着。
その光景を前に、サイラスの思考が白紙に覆われる。
「学校」は敷地ごと引っこ抜かれたように消え、周囲には老朽化した瓦礫の山が鎮座している。
この日、ミレイ・ブラウとラグ・グニルは、行方不明となった。




