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【外伝】サイラス・フェイ④

第四話 ディル班


「決闘」から二ヶ月後。正式に、ディル班としての初任務。

ディル・レミントン

サイラス・フェイ

ラグ・グニル

ミレイ・ブラウ

四名は軍本部の正門近くの駐車場に向かう。

午前十一時の正門付近は朝のように慌ただしい往来もなく、まばらな人の行き交いが残っていた。


「どうですかー、ラグ君。初任務、緊張する?」

「え、なんで?魔獣倒しにいくだけだろ?」

「ほんと頼もしいよ。サイラス、ラグを頼むぞ。先輩として」

「ラグ。魔獣を取り逃しても俺がいるから安心しろ」

「え、魔獣って逃げるの!?」

「「いや、そうじゃなくて」」


整備された五人乗りの小型移送車は、フロント部分の傷が重なり、十分に「使い込まれて」いた。

正門横にある、小さな門口で待つ魔導兵二人に、ディルが地図を広げ示している。

「サイラス、運転任せていいか?」

ディルが車まで戻って来る。

ああ、と短く済ませるとサイラスは運転席に乗り込み、エンジンをかける。

「サイラス、運転も出来るのか!」

ラグが後部座席から顔を覗かせ、運転席周辺にまじまじと視線を這わせる。

「お前もそのうち訓練でやるよ」

振り向かないまま言うと、正門に向かいゆっくりと車を進める。

門口のすぐ外で、挟むように魔導兵二人が構える。

「あ!ラグ君、ベルト閉めないと!吹っ飛ぶよ!」

ミレイに急かされ、シートのベルトを装着する金属音が鳴る。

車を挟んだ魔導兵が、手をかざし魔力で車を包んでいく。

「行きます!」

運転席側の魔導兵がサイラスに向かってはっきりと伝える。

進行方向に、巨大な車輪のように魔力を回転させる二人の魔導兵。

直後、移送車は進行方向へ「射出」された。

「なんだ、揺れねえじゃん」

ラグが肩透かしだ、と軽口を叩く。


初任務地は、ラグの出身地ミドガルからやや南に位置する、リブルムンド東区クワン。

農耕地のクワンから、畑に魔獣の足跡が連日多数確認される、との通報が本部に渡っていた。

射出から二十分後、着地した移送車は速度を通常に戻し、クワンまでは残り十数分の道なりを進んだ。


「クワンってねー、パンがすごく美味しいんだよ!食堂の小麦もほとんどクワンからなんだ」

「そりゃあ、全力で守らねえとな!」

「まあ、すんなり魔獣が見つかればな」

乗車から資料を見続けていたディルがついに口を開く。

「着いたらまずは足跡の確認と周辺を捜索だ」

「捜索?魔獣のくせになんでそんな野生の動物相手するみたいになってるの?」

「あー!ラグくーん?座学でやってるはずですよー?初めに習いますよー?」

「えっ!なんだっけ…はぐれた魔獣は腹空かして、町を襲うんだよ…な?」

ふぅ、とディルが資料を閉じる。

「魔女城から落ちたばかりの魔獣は知性のかけらもないが、はぐれて生き残った魔獣は、野生動物のような知能を急激につけていく。生き残る執念のようなものを見せ始めるんだ。あいつらは食い続けないとすぐ死ぬからな。繁殖こそしないが、隠れて生き残ってる数も相当いると言われてる」

「あー確かそんな話だったか…」

こらっとミレイに小突かれるラグ。

「さらに、稀にだが、近年は群れを誘導するような魔獣も確認されている。俺の村はそれで、やられた」

運転席からサイラスが淡々と話す。

「そうだな。今回も被害が出ていないのに、足跡は見つかっている。そういう個体をアルファと呼ぶが、そいつがいる可能性が高い。だから捜索なんだよ」


ーーー


クワン到着後、ディル班はすぐに現地の確認を行う。

町から二面目の畑にまで、最低でも二体の痕跡が見てとれた。

「とりあえず水流を辿ってみよう」

ディルの判断で、本流のクレイラ川まで進む。


ちょうど昇りきった陽が、辺り一面を包むように照らす。


開けた麦畑に風が泳ぎ、金色の波を見せる。


「綺麗だな」


サイラスの呟きに、ディルは誰にもばれないよう、口元を綻ばせた。






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