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【外伝】サイラス・フェイ②

第二章 軍隊



「魔獣だ!魔獣が出た!」


すっかり月は昇り、変わらない一日を終えた俺たち家族が寝る支度をしていた頃、村の誰かが叫び回っていた。

「サイラス。家から出るな。マリー。頼むぞ」

父は、元軍人ということもあり、「はぐれ魔獣」を追い払う時にはだいたい駆り出される。

というより、自分から行く。

「何ヶ月ぶりかしら。しばらく出なかったのに」

母はたいした動揺も無く、食器を棚に淡々と戻していた。


ーーーしばらくして、

父が乱暴に家の扉を開き、戻ってきた。


「マリー、サイラス!逃げろ!大群だ!!」

「大群!?魔女城が出たのかしら」

「分からない。通報はしてあるからとにかく町を出るんだ!」

母の顔色が変わる。

母は俺の手を引き、逃げる村のみんなの流れに乗る。

「お父さん、残るの?」

「大丈夫!軍人さん達がすぐ来てくれるから!」


ーーー


その言葉通り、十数分後、軍隊が到着し、魔獣の討伐にあたっていた。

村から少し離れた山の麓に、避難してきた村民が集まっていた。

「マリー?サイラスー?」

喧騒の中から父の声がした。

片脚義足の少し癖のある歩き方は、町の逆光をしても父だと知らせた。


「よかった。無事か。怪我して無いか?」

「あなたも怪我は無い?」

近づくと父の左腕は肩口から真っ赤に染まっていた。

母が慌てて魔力を当てる。

そんな使い方も、出来るんだ。


「なんか変なんだよ。統率されてるっていうか」

「暗いから、明るい方を目指したんでしょ。魔獣にも目はついてるもの」

「うーん…」

父は俺の頭を雑に撫でながら、背後の山の方を見ていた。

「おい…」

一瞬、強く頭を握られた。

「おい…!おい!!町へ走れ!!」

父が叫ぶ。

振り返ると、三体、いやもっと、魔獣が木の闇からのそりと現れた。


一瞬にして混乱が始まる。

幾重にも重なる悲鳴。

聞くに堪えない唸り声。

大人達の怒声。

そして、また悲鳴。

ぶつかる、人人人。

「お父さん!お母さん!」


その中で捉えた、父の首が左から噛まれる瞬間。

母が、立ち塞がり、魔獣に覆われる瞬間。

そして、光。


一夜にして、俺は両親を失う。



ーーー


翌朝。

ひとりだった。


たくさんの軍人。

半壊した家。

町のみんな。

怪我をした人。

治す人。

心配する人。

抱き合う人。


俺はひとりだった。


年が明けると提出するはずだった入隊希望の紙を、崩れかけた家から引っ張り出した。


誰と何を話したか、まるで覚えてないが、その足で軍施設へ行った。


ーーー


ーーー


「目が覚めた?サイラス」


「ステラ。……治療室…本部か」


「ミドガルで魔女城に遭遇したんだって?よくこの程度の傷で済んだよ」


確かに。斬ってもっ斬っても…。


「ダメだ。途中で記憶が切れてる」


「うん。うなされてたもん。夢見てた?」


「ああ、見てたな。ずいぶん昔の夢だ」


「まだ二十のクセに!あ、ディルさんから伝言。任務完遂。回復に努めよ。だって」


「ああ。了解…」


「…寝ちゃった」




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