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【番外編】窓の向こうの君へ③

第三話 向こう側

アースラ先生は天才だった。

魔法陣を最大四つも同時成立させ、その組み合わせも無限。


習得魔法陣数もブルーシアトップクラスと謳われ、直接熱エネルギーに変換するA型、物理干渉するB型、他人の魔力に干渉する難易度の高いC型まで網羅する、まさにブルーシアの極致。


特に範囲内に侵入した敵に対し、自動で出力する「条件成立」。

空間トラップとも呼ばれる極めて負荷の高い魔法陣ですら並列処理できる魔女なんて、そうはいない。

至宝と言ってもいい、貴重な人材なはずだ。


その先生が戦死?

相当な護衛が付くはずなのに…。


どうして…。

リブルムンドの魔女はそこまで強いの…?


卒業が決まって以来、私は、次のレポートを進めていた。

魔法陣が異次元の扉である、という仮説。


出力される雷や炎やあらゆる現象は、あらかじめその異次元で発生している。

或いは異次元で発生させ、魔法陣を通し、出力されている。


そしてその扉へ干渉できる可能性と、仮説流入式。

そんな、幻想だと一蹴されるかもしれない内容。


だから。

先生に見て欲しかった。

先生なら何か知っているんじゃないかって。

先生はなんて言ってくれるんだろうって。


もっと話したかった。


…褒めてほしかった。



ーーー



配置されて一ヶ月。

私は淡々と仕事をこなす。


来る日も来る日も治療魔法陣。

夢にまで魔法陣が出てくる始末。


レポートの続きが書きたい。

先生に…会いたい。



ーーー「そこの新兵ちゃん。ちょっといいかな」


呼ばれて顔をあげると、綺麗な赤毛の女性がいた。

魔女、かな。


「補給下ろすの、ちょっと手伝ってくれる?」


後ろをついていく。

こんなところなのに、その人はやけに明るく接してくれた。


軍服の袖部分がやたらと短い。

端、焦げてる?

赤髪…。


「あの…、もしかして、ヴェスタさんですか?」

「あらー?どうして分かったの?どこかで一緒だった?」


爆炎の魔女だ。

伝説級の。


「私の担当教官が、よくヴェスタさんのお話をされてまして…。その、髪の色とか」

お調子者だとか、空気が読めないとか。


ーーそしてその、私の担当教官は、もういない。


「…もしかして、アースラの教え子?」


アースラ。


その響きに、私の積み上げた何かが決壊しそうになる。

ヴェスタさんの青い眼が、何の言葉も掴めない私を覗き込む。


「おいで」


その意味を理解する前に、抱きしめられていた。


ここは戦場。

誰しもが戦っている。

辛い思いをしながら。

苦痛に耐えながら。

悲しみを抱いたまま。

戦い続けている。

まだまだ新兵の私が、許されることではない。


でも。

もう、決壊して。

頭も心も身体も言うことを聞かない。

私は大声をあげて、泣いてしまった。


「あなた、ナギでしょ。アースラからよく聞いてたよ。賢い子だって。頑張り屋だって。戦線に出てこないか心配だって。よく話してた。私も会ってみたいなって思ってた。ナギ。大丈夫だよ。仇は打ってる。拠点ごと吹き飛ばしてやったんだから。寂しいよね。でも、アースラも向こう側で見守ってくれてるよ。そしてあなたたちは私が守るから。大丈夫」


嗚咽が止まらない。

頭も心も身体も、ぐしゃぐしゃになっていく。

爆炎の魔女。

強い魔女。

こんなにも温かい。

私の弱音も涙も何もかも、その炎は、ただ優しく包んでくれた。


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