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【番外編】窓の向こうの君へ②

第二話 共通項



それから二年をかけて、私は訓練生を卒業した。


「おめでとう。お前ら。知っての通り、リブルムンドとの戦線が崩れ、我が国が押し始めた。私もそろそろ出撃することになるだろう。お前らが立派に卒業試験全員合格してくれて憂いなしだ。ありがとう」


それでか。

アースラ先生の髪はずっと短くなっていた。

もったいないような、なんだか寂しい気もする。


「特にナギ。よくがんばったな。型違い魔法陣の共通項のレポート、あれは私も鼻が高い。よくやったよ」

拍手がくすぐったい。

見たこともないくらいの、先生の笑顔。

涙をこらえたせいで、何も応えられなかった。


あの日、見つけた違和感。

魔法陣の型は違っても流入する経路にはいくつかの共通項があった。

同時成立。

右手で文字を書きながら、左手で絵を描くような行為だと思っていたけど、違った。

それを理解できてから、私の成績は飛躍的に伸びたんだ。


私は提出したレポートが認められ、戦線が落ち着いたら、という条件付きで研究職への配属が叶った。

みんなが当たり前に使う魔法陣。

魔力のことも魔法陣のことも、もっと知りたい。



ーーー「リブルムンドの魔女ってさ、あれやこれや色々体得するんだって。効率悪すぎじゃない?」

先生が去った後の教室でジーナが笑っている。


でも、だから、なんだ。

リブルムンドの魔女が強いのは。


「魔導式」。

魔法陣に頼らず個々の性質に合わせて習得する。

言ってみれば、個人個人のために仕立てた魔法陣。

もっとも自然な形の流入式が構築できるから、

出力差が出るのは当然。

だから、私たちは手数で応酬するわけだけど。


「私はさ、こんな時代だから仕方ないけど、正直どうでもいいんだよね。じゃあね、みんな」

エルサはそう言って、誰とも目を会わさずに出ていった。

最後まで分からない人だったな。


「ていうかナギ聞いたよー。研究職配属だって?すごいじゃん」

ジーナたちの話題が私に向けられ、どきっとする。


「でも、戦況が落ち着いたらって条件付きだから、しばらくはみんなと同じだよ」

「あんたがさ、新型魔法陣開発したら、まず私らに使わせてね!」

「ええぇ。そんな簡単に…」

「それまでにあんたは出世しないとね」


ジーナとアンは私の成績が伸びてからずいぶん優しくなった。

嫌われてたわけじゃないんだって思えたけど、それでも私のやりたいことには触れてこない。



ーーー


半年後。

私は、私たちは、戦場に赴くことになった。


「マジで意味わかんないんだけど!なんで戦況押してるのに新兵まで大量投入って?なんで?」

ジーナが宿舎で激昂しているところに遭遇してしまった。

出撃は明後日なのに。


「安定しないからだよ。拠点確保できるまで上がった戦線維持しないといけないの。だから兵がいるの。隊長言ってたじゃん」

相変わらずアンと一緒みたいだ。


「あ、ナギじゃん!こっちおいでよ!最後の盃交わそうぜ!」

ジーナはお酒を飲んでるらしかった。


「そんなこと言わないでよ…。私たちは治療要員でしょ?」

「こうなると魔法陣ってやっかいだよなー!武器にも薬にもなれちゃう」

「ほんと。便利な物だよね。ていうかジーナそれくらいにしときなって」

「みんな不安、だよね…やっぱり」


沈黙が走る。

不安って言葉は使っちゃだめだったのかもしれない。


「そういえばエルサ?も出るのかな」

アンが話題を変えた。

「あーーエルサね。なんか男といるって。あんまいい噂聞かないわ」


……。


冷めた、と言って私たちは解散した。

他愛もない時間。

でも、嫌じゃない時間。

こういう時間もきっと、また作れるよね。



ーーー


出撃の日が来た。


そんなことはどうでもよかった。


アースラ先生が亡くなった。



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