第七章 I will know that you are no dreamer③
第三話 「学校」
「対魔軍第二部隊出撃!」
サイファー・コルト率いる対魔軍第二部隊。
二台目の移送車にサイラスが乗っていた。
「苛ついているな。サイラス」
隊長のサイファー・コルトが横目で睨む。
「でもコルト隊長、出撃が遅すぎます」
「整備が重なってたんだ。こういうこともある。それに避難完了の報告は受けている。もうすぐスクールバスとすれ違うだろうよ」
「あと十五分…」
サイラスは腕時計を睨む。
「ギリギリ間に合うか。どちらにせよ真上から降ってくるんじゃ施設の損壊は免れない」
「…クソッ」俯いて洩らす。
ーー!!
鉄骨が爆ぜたような轟音と共に急停車。
「どうした!?」
サイファー・コルトが叫ぶ。
「先頭車が横転!!」
「横転?ぶつかったのか!?」
サイラスの背筋がざわつく。
「何か!いや誰かいます!」
堪らずサイラスは車外に飛び出した。
プスプスと煙を上げる先行車両。
煙に人影が映る。
鈍い金属音。
それが足音だと気付く前に、視界で捉える。
「…赤い…バーサーカー」
ーーー
「ミレイ、これって…」
二人は立ち尽くし困惑していた。
眼前の魔女城。
それは背後にあるはずの、朽ちかけた「学校」だった。
「分かんないよ。何も分かんない」
ハッとミレイに視線を送る。
「でもここが魔女城で、この先に天災の魔女がいるの」
「わたしたちは今から乗り込んで、全部倒すの」
「全部…」
「ここも、たぶん狭間。ラグ君。平気?ぼーっとしない?」
「ああ、動けるよ。普通に。なんか静かになったね」
「そういう空間なの。説明は難しいけど…」
その時。
魔女城から魔獣がのそりと現れた。
一体。二体。
次々と現れる。
「っしー、行くか!」
ラグの回路が開き始める。
「うん。ラグ君」
二人は見合わせる。
「守って」ラグはニコッと笑い、魔獣に向かって「発射」した。
ーーー!!
濁った破裂音の後にはその場にいた八体が骸と化し転がっていた。
ミレイが魔女城の敷地に踏み込む。
「場所、分かるのか?」
「…うん。今。聞こえた。…わたし、呼ばれてる」
ーーー
警戒を保ちながらゆっくりと歩みを進める。
中庭を抜け、「宿舎だった」建物に入る。
足を踏み出す度、床の軋みが響く。
「魔獣、来ないな。全部下に落ちたのかな」
ラグの言葉には応じず、ミレイは進む。
軋む音だけが世界に響く。
「宿舎」を抜けると教会があった。
ーー「ここ」
ラグは背後を警戒する。
「教会ごと、吹き飛ばすのか?」
……。
「だめ」
「だめ?」
……。
……。
「わたし…行ってくる。行かなくちゃ。ラグ君。ここにいて」
「ミレイ?」
踏み出す彼女の手を、ラグが無意識で掴む。
ミレイは振り返る。
涙が、流れていた。
ラグの唇を指で触れ、そっとキスをする。
初めての感触。
呼吸が止まる。
「ラグ君。ここにいて」
振り返り、教会へ向かう。
もう、動けなかった。
大きな扉が軋んで開き、闇の中に進むと、大きな音を立て扉が閉まる。
……。
……。
唸り声。
振り返ると、口らしき穴から唾液を垂らす醜い獣の大群が迫っていた。
「行かせるかよ」
その声は、唸り声のようだった。
ラグの回路に、雷鳴が轟く。




