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第六章 Will I always be there for you⑤

第五話 轟音

移送車の二メートル上空。


ミレイは上昇を止める。

目からは力が失せ、顔がやわらかに紅潮していく。


頭上の空間が裂け、直径三メートル。白銀の砲身がバチバチと破裂音と共にゆっくりと現れる。

陽の光を反射する砲身は、まるで救済と断罪を示すような神性すら放った。


身を乗り出し銃を構えたままディルはミレイを見上げ、表情が固まる。

輝く巨大な砲身は、もはや「撃鉄」を遥かに超えていたのだ。



ーーー


ラグの全細胞が警戒する。

肌が立ち、毛穴が開く。


武器を持たない「鎧」。

それ自体が兵器だと疑わない。


「火」を、極限まで高める。

あらゆる神経を研ぎ澄ませる。


意識はすでに、魔獣には無かった。

歩み寄る鎧を無心で見据える。


七メートル。


六メートル。


五メートル。


ラグと鎧。

同時に「発射」する。


接触直前、

左足を踵から地面に叩きつけ、

半拍空けて右足も止める。

全ての速度を右拳に乗せ、

鎧の頭部へ腰を切る。


ーー!!!


咆哮のような衝撃音


ーーー


魔女城の一角が爆破。

瓦礫が飛び散る。

黒煙が噴き出す。



ーーー


ラグと鎧、双方の頭が弾ける。

ビキビキと首の筋の悲鳴が聞こえる。



一瞬の間。

ラグの意識が切れた。



ーーー


ーーー


広い空間。

女の子が両手で拳銃を構えていた。

彼女が引き金を引くと、撃たれたかのよう、凄まじい反動で後ろに吹き飛ぶ。

飛び起きるも頭から、腕から、指から、血をバタバタと流し、再び女の子は銃を構える。

「止めろ!」

そう叫ぶも、声は出ない。

誰かを守ろうとしているのか、それとも何かに怯えているのかも、分からない。



ーーーハッと意識が戻る。

空。

痛み。

全てを思い出す。


全身の筋肉を千切り、鎧へ体勢を取る。

鎧の左拳が視界を塞ぐ。


ラグの頭が地面にめり込む。



ーーー「ミレイ!!」

ディルの叫びで二発目が城に直撃する。

城は獣の代わりに瓦礫を垂れ流していた。

サイラスは魔獣の後続がないことを確信し、テンポを上げる。

三体。

二体。

三体。

四体。


一振りで薙ぎ払う。

巨大な刀身は弧線を描き、魔獣の数は劇的に減って行く。



ーーー

獣のような唸りを上げ、ラグが鎧の腰に掴みかかる。

四メートル、背部を打たれ続けるも、押し込んだ後、鎧の上に跨り、互いの頭部へ無数の拳を送り込む。


鎧の拳を払い、拳を直下に振り落とす。


ーー!!!!


鈍い金属音が鳴り響く。

鎧は消え、ラグの拳は地面を抉っていた。


ーー脈打つ鼓動、荒い呼吸と激痛の中、ラグにじわりと冷静さが戻る。


振り返ると、魔女城は無かった。

サイラスが戦っている。

ミレイはゆっくり降りている。

ああ、あの女の子だ、とラグは知る。


サイラスの場所まで駆けつけ、結局二人だけで魔獣を殲滅した。


ーーー

到着後、肩透かしを食らった対魔軍は、ミレイ・ブラウの指示で瓦礫を回収する。


「ディル班健在だな」

どこからかそんな声が聞こえた。


ーーー


ガントレットをミレイに返す。

白銀に着いた血飛沫。

ミレイは俯き、ラグの袖をぎゅうっと握る。

太陽が紅く染まっていた。



ーーー


「あれが赤いバーサーカーだと思う。初め黒かと思ったけど、あれは血の乾いた色だった。強い。めちゃくちゃ強い」

ボロボロに裂けた軍服のラグを見て、三人は納得する他なかった。


「とにかく対魔軍の後に着こう。また報告書の山が待ってる」

「ジョージ怖かっただろう?すまんな」

サイラスに促されジョージは助手席に乗る。


ーーー。


ラグは束の間の光景が頭から離れずにいた。

俯くミレイにかける言葉も持たない。

ディルも考え事をしている顔になっている。

破れた上着を捲り、首に下がるタグを見る。

連なったキーホルダーがきらりと光る。

無事を確認し、目を閉じる。


揺れる移送車は沈黙を運ぶ。


逃れられない結末を、人は運命と呼ぶ。


第6章 完

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