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第六章 Will I always be there for you④

第四話 三度目

「可愛い子だね」

優しい笑みで、一筋の涙を流しながら髪を撫でる。


ーーーハッと、揺れる移送車でミレイは目を覚ます。


「ネシカさん…?」

「ん?何か言ったか?」

ディルの問いにラグが視線を向ける。

「ごめん、夢見ちゃってた」

えへへと笑う。


「どんな?」

ラグの言葉に思考が止まる。

「えっと…あれ?思い出せないや…」


ーーー五人は移送車で軍本部へと向かっていた。


国境付近の街から十キロ離れた地点。

開けた荒野。遠くに連なっている砂丘はどこまでも続いていた。


ーーミレイの手が微かに震える。


「ディル…」

「どうした?」


「魔女城…が来る…」

「来る!?これからか!?」

ディルの声色が一変する。


「うん。間違いない。一時間、いや三十分後。ここから少し西。五キロくらいだと思う」

自分に確認するように言葉を選ぶ。


「分かった。軍に連絡する。サイラス!国境まで引き返すぞ!」

ディルは運転席に向かって叫びながら通信機のボタン押す。


「現地点より西に五キロ地点!およそ三十分後、魔女城が出現する!」


『…中尉、三十分後とは』

無線の相手は困惑していた。


「ミレイ・ブラウがそう言っていると伝えろ」

力強く、反論を許さない口調で告げ無線を切る。


「ディル、お願いがあるの」

低い声。


「このまま向かわせて」

「馬鹿言うな!ジョージもいるんだ!」

「…分かってる。大丈夫だから。城に一発当てて、破片を採取したいの」


ミレイは正面を向いたまま淡々と話す。

ディルは一考し、サイラスに再び方向転換を促す。


「よーし、魔獣討伐だ。ミレイ一発で当てろよ」

ラグは全身をポキポキと鳴らしていた。


ーーー

「ここ!」

十五分走ったところでミレイが言う。


五人を乗せた移送車が止まる。


ディルの判断に、最悪ジョージも「オニ」だから、という冷たい前提があることを、三人は共有していた。


サイラスはディルを運転席に運び、操作マニュアルを切り替える。

車外に出たミレイはラグに方向を示し、移送車の後部へ促す。


「ラグ君に渡す物があるの」

ミレイは両手を「見えない袋」に入れる。

引き戻した手には、白銀に輝くガントレットがあった。

おお、と驚くラグに

「着けて」

と低く促す。

白銀は指先から肘までを覆った。


「どう?変な感じしない?」

「全然!なんていうかヒンヤリしてるけどあったかいっていうか…」

ラグは腕を回す。


「でも、俺治るのに。これ魔力で作ってくれたの?」

「オニの力と反発しないか心配だったけど、良かった」

ふうっと軽く息を吐き、


「ラグ君。」

しっかりと見つめ、低い声。


「ブルーシアの魔獣戦、わたし見えてたの。拳から骨が出ても殴り続けてたよね。本当は痛いんだよね。もう君の速度に回復が追いついて無いでしょ」

ラグは少し黙る。


「あー…そうだけど、でも治るし」

頭をガシガシと掻くラグを睨みつけていた。


「わたしの前で、そんな戦い方許さない!」


叱られた気がして小さく「はい」と返事をする。

ミレイは振り返りサイラスに向かう。

ラグはぼーっと立っていた。


「話は聞いている。接近してきたら斬るだけさ。好きにやれ」

サイラスはスーッと剣を抜く。

刀身を魔力が覆っていく。

久しぶりにみるそれは、より美しく遥かに濃度を増していた。


「サイラス、…すごい」

ミレイの言葉に少し口角を上げ刀身を見つめ続ける。


魔力は人の身の丈ほどにまで伸び、剣の間合いではなくなっていた。

ふっと魔力が霧散する。

「な?任せておけ」


こくんと頷くと、頭痛がした。

顔を上げると、二百メートル先の上空。


歪んだ空間を割って、魔女城が現れた。

同時にボタボタと魔獣が荒野に落ちて行く。


ミレイは深呼吸の後、身体を浮かし始める。

魔獣はこれだけ距離があるにも関わらず、こちらに全力で向かってくる。


大群の唸りは咆哮となる。

サイラスが臨戦体制に入る。


向かってくる魔獣に、後方にいたラグは遅れて反応する。

オニの回路を開き、火を身体に巡らせ、自身を「発射」するために前傾する。


ーーその時。


首筋を冷たい何かが覆った。


振り向く先には砂煙。


人影。


やがて姿を現す。


黒い鎧が、ゆっくり歩いてくる。


重い金属音。


その姿は不吉そのものだった。




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