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第六章 Will I always be there for you②

第二話 先の話

「ごめんね。何か言ってほしいわけじゃないんだ」

ガラスに映る瞳は動かない。

グラスの中の液体は柔らかに氷を撫でている。


「強くなれたんだと、思う。わたしが、じゃなくて、ラグ君も、みんなも」

氷が音を立て小さな波紋を生む。


「これで、良かったんだよね。…きっと、もう少しだよね」

消えそうな声。


波は落ち着きを取り戻していた。


「ラグ君もうすぐハタチでしょ。わたしも22歳に」

ミレイが俯くと、ラグの視線がガラスの外に向く。


「その……なんて言うか…もう少し、、女の子したいなぁって…」


……。


「うん。え、……んん?」

ミレイの顔を覗き込もうと振り向く。


「ごめんごめん!変なこと言ったよね!明日の子、いい子だといいよね!」

クイっと流し込み、手首をパタパタさせ顔を扇ぐミレイ。


「そうだ、ラグ君。赤いバーサーカーって聞いたことある?」

「ああ、都市伝説の!」

「そうとも言えなくなってきてて。わたしね、世界のどこかで魔女城出現したの分かるんだ。遠くなのか近くなのかも」

「あ、うん。へー、さすがだな」

「気持ち悪い?」

ニヤッと笑いラグの肩をつつく。


「でね、その赤いバーサーカーの出現情報とたぶん一致してるの。ううん。同時に現れてる」

「違う場所で?」

「うん。理由とか理屈とかは、さっぱり…」

「七十年前からだろ?誰も気付かなかったのかよ。ミレイすごいな!」

「色んな国が戦争してるし、なかなか情報は共有されないんだよ」

「そっか…。うん」

ラグのグラスに銀色のタグが触れ、小さく音を立てる。


「ラグ君は、もし魔女城も戦争も終わったら何がしたい?」

タグに触れ、刻まれた文字を細い指でなぞりながら、迫るようにラグの瞳を見つめる。


「めっちゃ旅したい!色んな国見てみたいんだ!ここだってすごいじゃん!」

場違いな声量でラグは胸を張る。


「言うと思った」

クスクスと笑う。


「ミレイも一緒に行くだろ?」

ニコッと笑う。


背筋が伸びる。


顔が熱い。


………。


「…え。えっと。あ、はい」


「はいって」

ケラケラとラグは笑いグラスを空にする。


空になった二つのグラス。


小さくなった氷は、淡い光を虹色に変える。



ーーー

翌日。

ホテルから少し離れた孤児院。


「ジョージ・カロン、十一歳。負傷させてみる訳にも行かない。とりあえずは戦災孤児として軍学校へのスカウトってことで血液採取する」

「了解、リーダー」

車椅子のハンドルを握ったラグが答える。


ーーー


施設責任者はジョージ・カロンを四人の待つ個室に招き入れた。

「こんにちわ。ジョージ君」


ジョージ・カロンは目線の変わらないディルを睨む。

胸の前で手を握るミレイ。


「おい、小僧」

サイラスの一言に大人たちがギョッとする。

ジョージの前に膝をつき、腕を掴みスッと人差し指を滑らせる。


「っっっ!!」


顔をしかめ腕は出血を見せる。

小さな瞳は涙を浮かべ、サイラスを睨みつけた。


「おい!サイラ「睨んでも敵は倒せんぞ。力が欲しいならウチに来い」


ラグの言葉を遮ってサイラスは続ける。


傷は塞がっていた。


「こいつはお前と同じ身体だ。最強の兵士。ジョージ、どんな男になりたい?」

背後のラグを指差し、ジョージの手は離さなかった。


……

……。


「…強くなりたい」


「決まりだ。用意しろ」


サイラスはジョージの涙を拭い、頭に手を置いた。

その手つきは明らかに優しく、たった今行われた蛮行が間違いかと思われるほどに。


責任者はいそいそと、ジョージを連れて部屋を出る。


ふぅーっとディルが大きくため息を吐き、腰を深く入れる。

ラグとミレイに一頻り叱られたサイラスと四人は孤児院を後にする。


歩きながらジョージは、サイラスの袖に小さな手を伸ばし、引く。


行き先を迷う小さな手を、大きな手が優しく包み、五人は先に進む。




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