第五章 I've witnessed your suffering②
第二話 「二日目の出来事」
ディル班は爆炎の魔女掃討後、B地点西部の拠点に戻っている。
ディルは配置二日目のことを思い出していた。
ーーー
ーー配置二日目。
今回初の交戦開始。
バランより西にある小さな町ドール奪還作戦。
岩を携えたミレイを囲いディル班は町の北部入り口まで来ていた。
入口付近の商店らしき建物の二階に、人影を捉える。
「西からの隊の突入に合わせるぞ」
ディルがそう言って班を抑える。
無線が入る。
『侵攻開始』
「よし、いくぞ」
ラグの回線が全開になり、近くの建物の窓の人影目掛けて一直線に突っ込んでいく。
『完了ー!』
数秒と経たずにラグから無線が入る。
ディル班はその建物内へと速やかに移動する。
「サイラス、見えるか」
サイラスに尋ねた、その時、西口の隊から無線が入った。
『敵兵魔女確認!雷だ!』
雷。
四人ともに嫌な記憶がよぎる。
「いた。距離百二十」
サイラスが町の中央部をフィールドスコープで覗きながら言った。
直後、雷鳴と轟音が鳴り響き、地面が揺れる。
銃声と断末魔が交差する。
あの雷撃を全員が思い出していた。
「サイラス、ラグ、頼む」
ディルが詰まりそうな声で言う。
「待って」
ミレイが二人の返事を遮る。
「わたしがやる。信じて」
ラグとサイラスは以前の怒ったミレイを連想し、言葉に詰まった。
ミレイはするりと無防備に建物から通りへと出る。
ラグ、サイラス、ディルはミレイの前に駆け出した。
敵兵の魔女らしき女兵士の前方を二十人ほどの敵兵士が囲っていた。
「少しだけ、時間がいるの。ディル、サイラス、ラグ君」
「…守って」
その言葉でラグの回路は再び全開になり正面突破で「発射」した。
次いでサイラスも駆け出す。
ディルは残り、ライフルで援護射撃の構えを取る。
直後、
ディルは背中が冷たくなるのを感じ、堪らず振り向いた。
ミレイ・ブラウは浮いていた。
ディルの眼前に靴が映るほど浮いていた。
そのままディルはゆっくりと見上げる。
ミレイの胸辺りが光り、白銀の筒が伸びているところだった。
「なん…だ…それ」
同時に二人の上空に魔法陣が現れる。
「ミレイ!!!!」
ディルの叫び声と同じくして、風圧がディルの顔を叩く。
ーー…!!
けたたましい爆発音。
今度は敵方向から爆風が届く。
前方に振り返ると黒煙が上がっていた。
ラグとサイラスは立ちすくみ、ラグだけがゆっくり振り向くのが見えた。
スッとミレイが落ちディルが受け止める。
「よかった。できた」
力の抜けた声でミレイが言った。
別部隊も一部始終を見ていたこともあり、この日一日で作戦が書き換えられることとなった。
誰が言ったのか、「撃鉄の魔女」。
その呼称は瞬く間に軍内に広がった。
あの日から今日の爆炎の魔女まで、すでに三人の魔女をディル班、いやミレイ・ブラウは討伐している。
ディルは自班の功績とこれからさらに重くなるだろう軍務、その重圧を、グッと覚悟で押し殺した。
拠点に着き、ディルは報告に行くからお前らは休めと告げ、上官の元へと向かう。
この日を境に、彼らは、兵器として扱われることとなる。




