第五章 I've witnessed your suffering
第一話 「撃鉄の魔女」
戦場は荒れていた。
リブルムンドとブルーシア国境戦線B地点。
リブルムンド南区旧市街バラン。
ここが現在のB地点である。
ーー配置から七日目。
爆炎の魔女の出現報告を受けディル班は旧市街南区へ交戦をしながらの移動をしている。
廃ビルの一階に腰を下ろすディル班。
「目標地点まであと二百メートル。もういつ遭遇してもおかしくない。サイラス、ラグ。警戒を怠るな」
「「了解」」
「ミレイ。タイミングは任せる。合図だけくれ」
「了解」
「敵兵確認。小隊規模。距離八十」
西の窓をフィールドスコープで除きながらサイラスが小声で無線に入れる。
「女兵士確認」
続けて無線が入る。
「俺とミレイはこのビルの上に上がる。合図でサイラス、ラグ、交戦開始」
「「了解」」
ディルとミレイは身を低くしたまま階段へと向かう。
ラグが反対側の窓からサイラスの方に着く。
「目標確認。爆炎の確証は無いが。行け」
ディルの無線を受けサイラスが発砲する。
発砲を合図にラグは姿を消した。
ーービルの三階。
ディルは女兵士への狙撃を試みる。
スコープを覗くと敵兵が次々と弾かれて行くのが見えた。
ラグだ。
隊の中心にいた女兵士を捕らえた瞬間、前面に魔法陣を表した。
光を放ち、巨大な鉄槌が下されたような爆発音が轟く。
ビルの一階に火球が直撃し建物が大きく揺れる。
魔法陣展開から攻撃までタイムラグがまるで無い。
「ミレイ!」
狙撃の失敗により二人の場所がわれることを、ディルは恐れた。
「いくよ」
ディルのやや後方にいたミレイは立ち上がり、低く答える。
ディルはライフルを抱え、ぐっと低く身を屈める。
胸元が鈍く光り、
直径二十センチ、白銀の筒がジリジリと現れる。
視界が爆炎の魔女を捉えた。
ーーッ…!
ーーー!!!!
鋭い風切り音に続く唸るような轟音。
地鳴り。
爆炎の魔女がいた一帯は黒煙で覆われる。
銃声、そして声も止まる。
「ラグ、サイラス。状況は」
「爆炎討伐確認。残党を叩く」
サイラスが答える。
「ゲホッゲホ、爆炎着弾確認。もう跡形もねぇよ」
次いでラグが答える。
「了解。このまま援護する」
ディルはライフルのスコープを覗き、淡々と引き金を引いていく。
黒煙が流れるにつれ着弾場所が顕になる。
そこはアスファルトごと直径五メートルほど抉られていた。
少し息を整えたミレイはもう一歩窓に近づき、再び白銀の筒を出現させる。
ディルは顔の真横に筒が現れたことに目を丸くし、部屋の中央へと跳んだ。
ーーーー!!!!
再び轟音が啼く。
ラグとサイラスが交戦中の五十メートル後方。敵の応援部隊を丸ごと叩いた。
ディルはミレイの後ろ姿を見ていた。
「これが俺たちの 撃鉄の魔女 だ」
その魔女は、じっと戦場を見つめている。




