第三章 The small soldiers march④
第四話 呪い
ーーー拠点テント。
ラグの視界は、薄く開かれる。
「……聞こえるか?」
救護兵の顔が滲む。
ーーー痛い。
痛い…。
何だ、これ。
朦朧とする意識を、痛みが繋ぎ留める。
「外傷は塞いだが、出血が多い。魔力回路の反応も異常だ。救護班を呼んでいる」
「……仲間は」
震える声が、自分のものだと理解するのに一瞬かかった。
「お前以外は軽傷だ。戦死者の収容を手伝っている」
ラグは腕を震わせながら上体を起こす。
「おい。死にたいのか」
「あ、いや……オレ、オニなんで」
ふらつきながら立ち上がる。
――動く。
動ける。
それだけで、いつも通りな気がした。
テントの外は暗くなっていた。
「ラグ!」
ディルが駆け寄る。
「……大丈夫か」
その顔は強張っていた。
ラグは笑う。
「平気。まだ初日だぜ。任務、しないと」
ディルの手がラグの肩に置かれる。
「すまない。俺のせいだ」
「任務、続けましょうよ」
ディルの目が揺れる。
「お前は帰還させる。明らかに異常だ」
その声は低く、わずかに震えていた。
「ラグ君!?」
ミレイが、十体ほどの遺体を浮かせて戻ってくる。
遺体を下ろすと、ラグへ駆け寄った。
「起きたの?よかった……治った?痛い?まだ痛い?」
目は真っ赤に腫れ、涙の跡に砂がこびりついている。
「ミレイ、すごい顔」
「もうっ…」
触れた手が、一瞬止まる。
違和感。
ラグの魔力の流れが、いつもと違う。
「ディル!」
ライトを持ったサイラスが走ってくる。
「おお、ラグ!大丈夫か!?敵が来ている!小隊規模だ」
ディルの顔色が変わる。
「拠点長と話す。ミレイ、ラグを頼む」
すぐにディルが戻ってくる。
「ラグ。テントにいろ。死んでも守る」
三人は戦場へ走る。
ミレイが一度だけ振り返った。
――死んでも、守る?
その言葉が、頭の中で反響する。
暗闇を見つめ、ラグは立ちすくんでいた。
銃声が始まる。
ーー「魔女だ!」
誰かの叫び。
それがミレイを指したものかもしれない。
だがラグは、走っていた。
ーーー身体が重い。
まるで水の中だ。
それでも。
俺が。
その意志だけで足を動かす。
敵兵を捉える。
走る。
拳を振り抜く。
全力の右ストレート。
敵兵がよろめく。
「てめぇ!」
銃口が向く。
あれ…?
――遅い。
身体が追いつかない。
力が入らない。
ーー乾いた音。
左腕に衝撃。
血が滲む。
……熱い。
痛い。
視線を上げる。
再び銃口が揺れる。
避けなきゃ。
動かなきゃ。
ーーー!!
轟音とともに、敵兵の背後で爆炎。
地が揺れ、
目前の敵兵が紙のように舞い上がる。
ラグの地面は、ふっと消え、
音も光もない
闇へ落ちていく。




