第二章 Your love has set us free⑧
第八話 覚え
第八話 覚え
「おはようございます!カイル少佐」
教官室の前でラグはカイルが出てくるのを待っていた。
「…少し歩くか」
少し驚いたカイルの提案に、ラグは頭を下げる。
訓練棟を出て、野外実践場の木立付近まで歩く。
カイルはまだ口を開かない。
「事の顛末は聞いている。無許可の武力行使に魔力行使。軽傷とは言え結果だけ見れば負傷者発生。まあお前は治ってるが」
「はい。申し訳ないです…」
「結論から言うとサイラスは三日間の独房。お前は訓練生だから今日から一週間座学漬けだ。」
「独房…」
その言葉にラグは俯いて歩いた。
「ひとつ聞く。オニの魔力は感じたか?通常の魔力との違いはあったか」
ラグは顔を上げ少し考えた。
「…言われてみれば、違いました。なんというか火…みたいな。輪郭はないけどすごく熱い気がします」
……。
……。
「…今、練れるか?」
カイルは立ち止まりラグへと振り向く。
「やってみます」
決め込んだラグの肩に、カイルはそっと手を乗せる。
ラグは昨日の感覚を辿っていた。
体内を巡る魔力を追うのとは全く異なる感覚。
腹部の奥で火を起こし全身に延焼させるように。
体内で熱を感じ始める。
腹部が熱くなる。
胸、大腿、肩、腕へと熱が伝わる。
もっとだ。
もっと。
燃えるまで。
もっと熱く。
「そこまで」
カイルの一言でラグの集中が霧散する。
「よし。いけるな。だがそこまでだ。それ以上今は練るな。今の感覚も手放すな。出来るな?」
「はい!」
ラグは精一杯返事をした。
これ以上続ければ昨日と同じ所までいけたと分かっていた。
止められなくなることも。
鼓動はまだ少し、落ち着かない。
「力はいつ、何の為に使うか、だ」
カイルはじっと見つめる。
風が木々をひと撫でする。
火照りかけたラグの身体を冷ますように。
「じゃー座学だ!みっちりやるぞ。俺ももうミレイ・ブラウに叱られたくないからな!」
はははとヒゲミーは笑った。
久しぶりに見るオフのヒゲミーだった。
「オフミー」
ラグは胸の中でそう呟いた。
第二章 完




