第二章 Your love has set us free⑦
第七話 叱責
女性兵士が重圧を解く。
サイラスが咳き込み、ラグは立ちあがろうとして膝が震えてることに気づく。
「……何やってるの」
ミレイは動かない表情のまま歩み寄る。
「訓練?誰の許可?」
サイラスが何か言おうとするのをミレイは先制する。
「サイラスはいいよ。あんたはいつかこうすると思ってた」
視線がラグに移る。
「で、ラグ君は?」
冷たい目。
向き合う二人の目線は僅かにずれている。
「魔力操作、何を習ってたの?座学は?軍規知らなかった?」
「このまま続ける気だった?どこまで?どうなるまでやるつもりだった?…ねぇラグ君」
ラグは目を伏せることで応えた。
あの瞬間。
オレは止まれたか?
止められた?
サイラスを?
オレを?
止める?
何を…
もし止めが入らなければ…。
「仲間なんだよ…」
ミレイは小さく、洩らすように、少し震えた声で呟く。
言葉にならない、経験の無い違和感がラグの胸中に芽を出す。
「さーてどうしたもんかね。サイラス・フェイはどうせ医療班の同期言いくるめたんでしょ」
サイラスは顔を背ける。
「あ、君オニの子だよね。あたしソルフィア・ヘリオス。こっちはエルダ。エルダ・アトラ」
「ラグ・グニル…です」
「あたしたちいて良かったって思いな。今朝戦線から戻ったんだから。せっかくのお茶の時間だったけど」
エルダ・アトラは手鏡で前髪を直しながらそう言った。
足元の地面がまだわずかに軋んでいる。
「まー二人とも軽傷だけど、今度のために大人しくチクられとくか」
ソルフィア・ヘリオスは頭を掻きながらそう言ってミレイに視線を移す。
「そうだね。ラグ君の教官はカイル少佐だよ。二人ともありがとう。報告はわたしがする」
ミレイは変わらす冷たい口調で二人に告げる。
ソルフィアはミレイの頭をぽんぽんとし、視線でエルダを促しその場を離れていった。
「わかってるよね」
ミレイは二人にそう言い残し訓練棟へと歩き出す。
「まあ…なんだ。悪かった」
「いや、俺も…」
正しい言葉の見つからない二人は歯切れも悪く、解散した。
ーーー夜。
明日話そうかとヒゲニーに告げられ、部屋で月を眺めていた。
俺は守るんじゃなかったのか。
でも、守られた。
いや止められた。
止まれなかった?
勝ちたかった、か…。
誰を守るんだっけ。
誰を守ればいいんだ。
サイラス、ミレイ、ディルに、ここのみんな?
同じ班だから?
同じ軍だから?
殺しても勝とうとしたのに?
殺そうとしたのかサイラスを。
でも、殺されるかもしれなかった。
魔女はオレより強い。
サイラスよりも強い。
あれ?
じゃあなんで戦うんだっけ…
出口の無い思考に疲れ、ラグはあの大食堂での時間を思い出していた。
そのうち疲労感が全身を巡り、深い眠りにつく。




