表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/41

第二章 Your love has set us free⑥

第六話 決闘

「え、いやさすがにまずいんじゃない?ヒゲ…カイル・ソウ少尉にも怒られるし。ほら軍規にもダメって書いてたような」

「あぁ気にするな。手は打ってある。こっちだ」


それ以上は喋らないサイラスに連れられ、さっきまでいた野外実践場まで戻ってきた。


「さっきの見てたの?」

「見てたよ。なあオニって腕斬り落とされたらどうなるんだ?再生でもすんのか?」


サイラスは木が並んでる端まで歩きはじめた。

その一本に向かい、剣を振り抜く。音もなく。


「なんてな。俺も特異体質でな。武器に魔力を這わせられるんだ」

振り向きながらそう言うと、サイラスの背後の木はズンと音を立て倒れた。


「なんてな」の割に表情は少しも笑っていない。


「這わせるだけでも刃は欠けないし折れない。そしてその気になればこんな木剣だろうと関係ない」

サイラスは構える。


ふと、この前のディルの言葉を思い出していた。

「より強く」。ここの訓練生は誰もがそう考えていることもあれから知った。


だからサイラスの気持ちが、分からない訳じゃない。

勝てば、止まるか。


ーーーラグはふうっと息を吐きサイラスを見つめ、身体は脱力を極める。

両者の間は四メートル。

奇しくも「あの闘技場」と同じ間合いに立っていた。


時が止まる。

風も無く、遠くで鳥が鳴いていた。


武器を相手にすることは決して初めてではない。

「あの闘技場」ではオッズ次第で武器使用が認められていたからだ。

それでもラグは仕掛けずにいた。


ーー(心臓の音が大きい)


初動はサイラス。

突進。

最低限の振りかぶりで、

左鎖骨からの袈裟。

ラグは狙いを読み、右のジャブでサイラスの顎を狙う。

サイラスはさらに踏み込み、動いたラグの胴へと一閃。

左足を蹴り上げ身体を丸め込み、宙へと回避しながら再び距離を取る。


「疾い」


互いに同じ印象を抱く。


二人の口角が同時に上がると、ラグが仕掛ける。


剣の持ち手にジャブを一閃。

表情が濁る。

捨ての振り下ろしから突きへ。

鳩尾を狙った突きにラグは対応出来ず、刃先ほど浅く、しかし強く受けてしまう。

魔力は刃を覆ってはいない。

ラグの表情を確認すると峯が向いたまま顎への一撃を繋ぐ。

頭が跳ね上がる。

同時に、ラグの左足がサイラスの視界を揺らす。


口から血を垂らす二人。


ラグの全身が脈打つ。

心臓が跳ねるように早鐘を打つ。


明らかに高揚するラグをサイラスは静かに見定めていた。


ーー熱い。

もっと。

もっとだ。

もっと熱く。

燃えるまで。

もっと。


高揚する様はもはや異変へと変貌する。

おそらく、いや確実に、ラグは身体の魔力を加速させている。


今までの脱力した「構え」では無く、全身で力み、震えている。

目を見開き、微かに唸り始める。


サイラスは魔力を刃先にまで及ばせる。

魔獣など比べ物にすらならない重圧。

かつてない危機を察知し、同時に高揚していた。


時が止まった。


二人は身体機能を最大限に発揮せんと突進する。

ラグは刃を迎えんと左手を突き出し、右手に魔力を集中させる。

サイラスは突きから左方への薙ぎ払いを目論み、左の手のひらを柄に当てる。


刃先と指先の距離は拳一つ分に迫るその時。


二人の身体はそこで止まった。


まるでゴム板にめり込む銃弾のように。


思考が追いつく前に、二人の視界が光で覆われる。


視界を焼く熱線。


熱い、熱い熱い。

顔が焼ける。


「はーーい。お疲れー。軍規違反ですよー。二人とも」


同時に、重圧。

巨大な何かに押し潰される。


地面に叩きつけられ、呼吸が奪われる。

視線だけを動かすと、二人の女性兵士。


その奥には、ミレイ・ブラウ。


一人は掌をこちらに向け、もう一人の周囲には光の帯が巡っていた。


「熱線出す前に止めたんだから感謝してね?」

「オニ、出力上げすぎ。何バグってんの?みっともない」


淡々とした声。


少し離れた位置から


ミレイ・ブラウが見ていた。


笑っていない。


ただ、じっと見ていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ